スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

霧島酒造杯女流王将戦&重要な観点

2023-09-13 18:55:19 | 将棋
 9日に放映された第45期女流王将戦挑戦者決定戦。収録されたのは8月17日。その時点での対戦成績は香川愛生女流四段が8勝,渡部愛女流三段が7勝。
 香川女流四段の振り歩先となる振駒で渡辺女流三段の先手となり,香川女流四段のノーマル三間飛車。先手が居飛車穴熊に組むところで後手から仕掛ける将棋になりました。仕掛けた後手が一旦は優位に立ったものの,先手の反撃を許す展開に。
                                        
 第1図から先手は☗7二銀と打って攻めを続けました。これには☖5一金と逃げるのが好手。☗2四馬には☖3三金と当てます。☗2五馬が王手になりますがこれにも馬取りに☖3四銀。先手は反対側から☗6二歩成☖同金☗6三歩と攻め続けますが☖7二金☗同香成に☖4三王と早逃げしました。
                                        
 第2図となって,まだ難しいものの正しく受ければ後手が勝つという局面になっていて,そのまま間違えなかったので,穴熊の姿焼きが焼き上がることになりました。第1図は☗6二銀と打つ方がよく,☖同金なら☗同歩成☖同王☗4一馬,☖6三馬なら☗6一銀成☖同王に☗7二銀か☗7四銀で攻めていくのがよく,それならむしろ先手が有望でした。
 香川女流四段が勝って挑戦者に。第38期以来となる7年ぶりの三番勝負出場。第一局は10月7日に指される予定です。

 この部分は『スピノザーナ11号』の巻頭言の中でわずか3行を占めているだけです。そして河井が指摘している第二部定理三二の訳と大きな関係を有するわけではありません。ただ,スピノザの哲学の解釈にとって重要な観点を含んでいますので,探求の対象にします。
 これは何度かいっていることですので,ご承知の方も多いかと思いますが,現実的に存在するある人間の精神mens humanaのうちにXの誤った観念idea falsaがあるというとき,この誤った観念が真の観念idea veraに変化するということを僕は認めません。ただし,だからこの人間がXの真の観念を有することができないというわけではなくて,Xの誤った観念を有していても,Xの真の観念をもつこともできると僕は考えます。すなわち,同じ人間の精神のうちで,Xの誤った観念がXの真の観念になるということは認めませんが,Xの誤った観念を有しつつXの真の観念を有するということは認めるのです。これは,第四部定理一の意味を綜合すれば,スピノザはそのようにいっていると僕が考えているからです。
 しかし,ある人間の精神のうちにあるXの誤った観念がXの真の観念になるということを肯定する識者というのもいます。代表的なのは観念をパズルのピースに喩えている田島正樹です。田島によれば,観念というのはパズルのピースのようなものであって,それ単独では何であるか分からないような誤った観念であるけれども,ほかのピースと合わさってひとつの完成したパズルを形成するならば,明瞭な真の観念となるのです。これは同じピースが誤った観念であったり真の観念であったりするわけですから,ある人間の精神のうちにあるXの観念が,誤った観念にもなるし真の観念にもなるといっているのと同じです。つまり田島は明らかに,ある人間の精神のうちにあるXの誤った観念がXの真の観念になるということを肯定しているのであって,ドゥルーズGille Deleuzeもこの田島説に近い見解opinioを有しています。また,『スピノザ『エチカ』の研究』は基本的にこの路線から論述されているといっていいのですが,著者の福居純は,後の『スピノザ「共通概念」試論』ではこれを修正し,僕が示している見解の方に近くなっています。

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