スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

虚偽の軽視&帰島

2017-06-26 19:04:59 | 哲学
 知性と反知性ないしは非知性が対立するとき,知性の側が犯してしまう失敗の代表的なものが理性への過信です。ただし,理性ratioを信頼することは,対立そのものを眼中に置かない限り,他面からいえば知性の側に立つ人間が自分自身の立場を確認する限りにおいては有用です。第二部定理四〇が示すように,理性による認識cognitioは十全な認識であるからです。失敗はこれを自分自身の立場の確認に留まらず,万人の認識に該当させてしまうという点にあるといえるでしょう。いい換えれば,理性への過信とはそのような意味であるということです。
 ここから分かるように,理性を過信するということは,虚偽falsitasを軽視してしまうということと表裏一体です。つまり虚偽が有している力potentiaというのを無視してしまうことの反対の側面であるといえるでしょう。もう少し具体的にいえば,理性を過信するあまり,虚偽は理性によって解消することができるものであると思い込んでしまうのです。
 これははっきりとした誤りであるといえます。なぜなら第四部定理一が示しているように,誤った観念すなわち虚偽には積極的なものが含まれているのであり,その積極的なものは,真verumなるものが真であるというだけでは,その真なるものが現在するとしても除去されないからです。要するにある人間の精神mens humanaのうちにXの真の観念idea veraがあるということは,その人間の精神のうちにXの誤った観念が発生するということを妨害することはできませんし,同様に,Xの誤った観念が先んじて現在していた場合には,その誤った観念を解消させることはできないからです。すなわち一般的にいえば,理性による認識は,人間の精神による虚偽の認識,たとえば表象imaginatioを妨害することも排除することもできないのです。
 したがって,理性によって他者を説得するという行為には,一定の限界があるといわなければなりません。もし知性の側に立つ人間が,そういう限界があるということを認めないのであれば,その人間は,たとえ理性的に物事を認識し,理性に従って生きる人間であったとしても,大失敗を犯しているといわなければならないのです。

 11月28日,月曜日。施設のバザーの後片付けがありました。母のボランティアの最後の作業日であったことになります。前日の夜に来訪した叔父は,そのまま宿泊しました。この日は日中は出掛けてましたが,午後9時50分頃に戻ってきて,この日も僕の家に泊まりました。僕はこの日は長者町に出掛けています。
 11月29日,火曜日。叔父が福江島に帰島しました。叔父の移住のときは自動車を用いましたが,今回の上京では自動車は使っていません。長崎まで飛行機を使い,あとはフェリーで帰るとのことでした。僕はこの日は本牧へ出掛けています。
 11月30日,水曜日。母がI歯科へ行きました。この日は被せものをした歯とその横の歯との隙間を埋めるために詰め物をすることになり,その詰め物の型取りをしたそうです。
 僕はこの日は川崎に出掛けていたのですが,その途中で1冊の本を読了しています。河井徳治の『スピノザ哲学論攷』です。
                                    
 河井徳治には『哲学書概説シリーズ スピノザ『エチカ』』という標題の入門書があります。僕がかつてそちらの本を読んだことがあったということは以前に記した通りです。そしてこの本は,スピノザの哲学の入門書としては際立った特徴がありました。一般にスピノザの哲学の入門書は,『エチカ』でスピノザが記述している路線に則して書かれます。このために,平行論について触れられることはありますが,概ね精神mensとは何かということ,あるいは精神の働きactio Mentisとは何かということがその解説の中心となります。ところが河井による入門書は,スピノザの哲学における物体論,『エチカ』でいうなら第二部の自然学に該当する部分に関連した解説に多くの分量が割かれているのです。これは明らかに河井自身の志向によるものだと推測されました。なので河井がなぜスピノザの哲学のその部分に大きな注目を置くのかということについては,僕は多大なる関心があったのです。ですからかねてから,河井による入門書の域を超越したスピノザの哲学についてのまとまった論考があるなら,ぜひともそれを読んでみたいと思っていました。こうした経緯で『スピノザ哲学論攷』を購入したのです。

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