スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

スピノザの生涯と精神&特質

2013-06-30 18:51:20 | 哲学
 『人と思想 スピノザ』と『スピノザ入門Spinoza et le spinozisme』は,スピノザの人生と思想がセットとなっている入門書でした。ただ,スピノザの人生の方を知るために欠かせない本といえば,まずは『スピノザの生涯と精神Die Lebensgeschichte Spinoza in Quellenschriften, Uikunden und nichtamtliche Nachrichten』になるのではないかと思います。
                          
 学樹書院から出版されているこの本は,一冊の本の訳書ではありません。ただしその大部分はドイツのスピノザ研究家のフロイデンタールJacob Freudenthalが編纂したもので,これは1899年にまとめたもの。これに,スピノザの死後すぐに発行された遺稿集Opera PosthumaのイエレスJarig Jellesの序文が付され,また,フロイデンタールの本に含まれていないものとして,ファン・ローンJoanis van Loonの『レンブラントの生涯と時代』より,スピノザが登場する部分の抜粋が収録されています。
 本のタイトルになっている『スピノザの生涯と精神』は,収録されているリュカスJean Maximilien Lucasによるもの。イエレスとリュカスは基本的に親スピノザの立場から書いているといえます。また,収録されているもので最も長いものは,コレルスJohannes Colerusの『スピノザの生涯Levens-beschrijving van Benedictus de Spinoza』で,こちらは反スピノザの立場から書かれたスピノザの伝記といえます。リュカスおよびコレルスによる伝記がこの本の大半。コレルスは反スピノザの立場といいましたが,これはあくまでも思想という意味においてです。一般的にこの時代,無神論者というのはほぼ野蛮人というような意味と同義でした。スピノザは無神論者とされていたわけですが,その生活が野蛮人とは対極のものであったということは,コレルスも伝記の中で指摘しています。
 内容に関して,どの程度まで信憑性があるといえるのかは,学術的な意味においても課題であるといえるでしょうから,僕はそれについて何かいうことは控えます。ただ,スピノザと同じあるいは近い時代を生きた人びとによる,一級の資料であることは間違いないと思います。

 おそらく延長の属性Extensionis attributumの間接無限様態についての認識cognitioの場合には,この一般論が発生しているのだろうと僕は思います。つまり個々の物体corpus,延長の属性の個物res singularisの観念ideaを無限に拡張することによって認識される延長の属性の間接無限様態の観念は,間接無限様態の本性essentiaを十全に表現しているとはいえないのだけれども,延長の属性の間接無限様態に関する虚偽falsitasすなわち混乱した観念idea inadaequataではなくて,むしろ真理veritasすなわち十全な観念idea adaequataなのです。
 なぜこのような事態が生じ得るのかということについては,やはり一般論として答えることが可能だと思います。すなわち,もしもある事物に何らかの本性が与えられるならば,この本性を原因としていくつかの事柄が帰結します。このようにして帰結する事柄は,スピノザの哲学では事物の特質proprietasといわれます。そしてこの場合,事物の本性と,事物の特質とは対義語的関係を構成します。なぜなら知性intellectusのうちにある事物たとえばXに関する何らかの観念があったとして,この観念を十全な観念であると理解する限り,それはXの本性そのものの観念,すなわちXの十全な観念であるか,そうでないならばXの特質の観念であるかのどちらかでしかあり得ないからです。
 つまり,個物の観念を無限に拡張していくことによって得られるような間接無限様態の観念は,その間接無限様態の一特質の十全な観念であると僕は理解します。そして事物の特質というのは,その事物の本性から必然的にnecessario帰結するようなある事柄なのです。しかるにこのことは平行論によって,思惟の属性Cogitationis attributumにおいても成立します。いい換えれば事物の特質の観念というものは,その事物の本性の観念から必然的に帰結するような観念であるのでなければなりません。つまり,間接無限様態の十全な観念というのは,間接無限様態をある知性を構成する観念の観念対象ideatumと考える限り,第一部定理二二の様式でその知性のうちに生起します。そしてこの様式でその知性のうちに間接無限様態の認識が生起すると,延長の属性の場合には,第二部自然学②補助定理七備考でスピノザがいっている内容が,必然的に生起するということだと僕は考えるのです。
 つまり,第二部自然学②補助定理七備考では,延長の属性の特質が言及されているということになります。

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