晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

『パッセンジャーズ』 70点

2013-01-31 18:01:29 | (米国) 2000~09 

パッセンジャーズ

2008年/アメリカ

飛行機に無縁なヒトなら楽しめるかも...。

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shinakamさん

男性

総合★★★☆☆ 70

ストーリー ★★★☆☆70点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆75点

ビジュアル ★★★☆☆70点

音楽 ★★★☆☆70点

最新作「アルバート氏の人生」のロドリゴ・ガルシア監督、「レ・ミゼラブル」のアン・ハサウェイ主演というだけで、女性の心情を繊細に描いた人間ドラマという期待感がある。ただ、キャッチ・コピーは<スリルと謎が交錯する心理サスペンス>とあって何となく違和感もあっての鑑賞。
冒頭飛行機の墜落事故のシーンで始まる。現場がかなりリアル。奇跡的に生き残った5人のケアを担う若いセラピスト・クレアはグループ・カウンセリングをするが、5人の様子が奇妙で墜落の瞬間の記憶もマチマチ。
なかでもエリックは異様にテンションが高くクレアに個人カウンセラーを希望する。
サスペンスという割に展開はゆっくりと進みクレアが航空会社の隠ぺい工作ではと疑う割に真相は見えてこない。事故とは無関係なエピソードが何故か異様な雰囲気を醸し出し、物語はクレアとエリックのラブストーリーへと移って行く。
エリックを演じたのが「リトル・チルドレン」(04)で危険人物に扮したパトリック・ウィルソンだけに只者ではなさそう。屋上に上ったり、列車に向かって線路で叫んだり異常さがエスカレート。やっぱり...?
そういえばクレアに付きまとう航空会社の担当者・デヴィッド・モース、隣人の女性・ダイアン・ウィーストも突然現れ、クレアが話したこともないことを知っている。
驚愕の真相は勘の良い人なら途中で分かるので、そのための映画ではなさそうだ。むしろ観終わって<自分にとって大切なヒトやモノの存在を感じさせてくれる繊細な人間ドラマ>を狙ったものだろう。
本国では公開2週間で終了したというが、飛行機事故があまりにもリアルなので当分飛行機に乗らないヒトなら楽しめるかも...。東北大震災で公開中止となった「ヒア アフター」を連想してしまった。


『Emma エマ(1996)』 70点

2013-01-28 11:52:25 | (欧州・アジア他)1980~99 

Emma エマ(1996)

1996年/イギリス

19世紀のラブ・コメ?

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shinakamさん

男性

総合★★★☆☆ 70

ストーリー ★★★☆☆70点

キャスト ★★★★☆75点

演出 ★★★☆☆70点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★☆☆70点

「いつか晴れた日に」「高慢と偏見」のジェーン・オースティン原作をもとにダグラス・マクグラスが脚色・監督したグイネス・パルトロウの初主演映画。19世紀英国南部・ハイベリーという田舎町を舞台に、世間知らずのお嬢さまが繰り広げる恋愛騒動。
設定が若い女性好みでなかなか触手が動かなかったが、G・パルトロウの初主演ということで観ることにした。確かに可愛らしい衣装を纏った彼女の屈託ない笑顔と気真面目な表情がグレース・ケリー、オードリーの再来を思わせるほどチャーミングだ。
ただ、イアン・ウィルソン撮影の風景・家屋・衣装が時代の雰囲気を再現して異次元の世界へ連れて行ってくれるが、正直19世紀のラブ・コメにはついて行けなかった。音楽はオスカーを獲得したというが自分好みではないせいか印象に残らず、肌合いが合わない作品とはこういう映画を言うのだろう。
初々しいG・パルトロウを支えたのは、友人ハリエットを演じたトニ・コレット。ちょっと太めのスタイルも役柄にぴったりで、彼女のハッピー・エンドを願いながら観ていた。男優陣ではナイトリー役のジェレミー・ノーザムが善き助言者としてストーリーを支えるが、ユアン・マクレガー、アラン・カミングは見せどころがチョッピリあった程度。むしろ女優陣、なかでも自尊心の高いエルトン夫人のジュリエット・スティーヴンソンの女ごころ丸出しの役柄が際立っていた。
G・パルトロウはその後スター街道を歩んで行くが、時代のニーズのせいか、G・ケリーやオードリーとは違って役柄が生きる作品には恵まれていない。恋のキューピットを任じ、くったくなく恋の騒動を巻き起こすこの主人公は彼女らしい作品だと改めて感じた。


『アルバート氏の人生』 80点

2013-01-25 11:20:04 | (米国) 2000~09 

アルバート氏の人生

2011年/アイルランド

グレン・クローズの集大成を観る想い

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

’82のオフ・ブロードウェイで主人公を演じて以来、映画化を夢観ていたグレン・クローズの製作・共同脚本・主演によるヒューマン・ドラマ。’11東京国際映画祭で最優秀女優賞を受賞している。監督は女性心理を描くことで定評があり「彼女を見ればわかること」でコンビを組んだロドリゴ・ガルシア。
19世紀のアイルランド・ダブリン。ホテルでウェイターとして働くアルバート・ノッブスは、タバコ屋を開業し老後は海辺で過ごすことを夢見て、チップを床下に貯めていた。寡黙で慎ましい生活のノッブスには誰にも言えない秘密があった。
貧しさゆえ14歳から女であることを隠してウェイターとして働くという設定は、舞台なら成立するが大画面の映画では難しいもの。G・クローズは骨格は細いが、不自然さを極力無くすため表情の起伏を極力抑え、メイクアップの巧みさを味方に見事に男を演じる女をみせた。
大恐慌とチフスが大流行したこの頃のアイルランド。失業することは路頭に迷うことと同じでホテルではサマザマな人間模様がが描かれているのも見どころのひとつ。マイケル・マクドノーのカメラが克明に拾って行く。
ホテルの女主人は辣腕で、従業員には厳しいが客には最高の愛想を振りまく。お抱えのドクターには気があるようだ。そのドクターはメイドとこっそり愛し合う。ボイラー技士として雇われた若いジョーは若いメイド・ヘレンへ急速に接近。ノッブスはハンサムなペンキ職人ヒューバートに出会い、自我の目覚めとともに自分の望むことに行動を起こす。それは女に戻ることではなく、女をパートナーとすることだった。それが観客には不幸への始まりとなるのが分かっているだけにハラハラさせられる。このあたりは、男として生きてきた彼女の滑稽さでもあり哀しさでもあり、とてもいじらしい。
ヤレル子爵を始め優雅な上流階級の客達もフシダラな日常を垣間見せたりするが、ノッブスは総て呑み込んでひたすらチップを貯め込んでいる。唯一の例外は、若いメイドのヘレンへ不器用にプロポーズすることだった。
G・クローズに負けず劣らず好演技をみせたのがジャネット・マクティア。大柄な体格を生かした適役を得て、G・クローズとともにオスカーにノミネートされたが獲得ならなかった。
ノッブスを囲む人々のキャラがとても丁寧で的確に描かれていたのでどのような結末が待っているのか興味がつきなかった。結果は予想どおりでもあり、ある意味ホッとさせるエンディングを迎えた気がする。ここでもG・クローズが作詞したというエンディング・ソングを聴きながら渾身作に拍手を送りたい。


『暗くなるまで待って』(67・米) 80点

2013-01-20 16:55:03 | 外国映画 1960~79




暗くなるまで待って


1967年/アメリカ






若くて美しいオードリー最後のサスペンス





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shinakamさん


男性






総合★★★★☆
80



ストーリー

★★★★☆
80点




キャスト

★★★★☆
85点




演出

★★★★☆
80点




ビジュアル

★★★★☆
80点




音楽

★★★★☆
80点





「ダイヤルMを廻せ!」のフレデリック・ノットが書き下ろした同名戯曲を観たメル・ファーラーが、妻・オードリー・ヘプバーンのために映画化を企画したサスペンス。本作を最後に引退宣言をして長い休養に入ったオードリーの、若くて美しい姿が見納めとなる作品でもある。

 カメラマンの夫が、空港で見知らぬ女から預かった人形にはヘロインが隠されていた。夫の出張中、盲目の妻スージーのもとへやってきた男は夫の友達だという。観客は彼が人形を受け取る仲間で、既にこの家で女が死体で発見され、その犯人から相棒ともども仲間になるよう誘われた男であることを知っている。盲目の彼女はどうなるのだろう...。

 スージー役のO・ヘプバーンは、事故で失明した若い妻なので華やかな衣装では登場しない。普段着で化粧もどぎつくないが、却ってスタイルの良さが強調されショート・ヘヤーの大きな目が効果的。オスカーにノミネートされ受賞は逃したが、オードリー・ファンには記憶に残る作品となった。

 最初に現れたマイクは悪人とはいえ根は極悪ではなさそうで、一見イイ男のリチャード・クレナン。出番も多いが単なる狂言廻しで、相棒の元刑事のカルリーノ(ジャック・ウェストン)も小悪党に過ぎない。
 本当の極悪人はハリー・ロートという男で、既に運び人の女リサ(サマンサ・ジョーンズ)を殺めていた。ロートを演じたのはアラン・アーキン。濃いサングラスを掛け、ナイフをちらつかせるチンピラ風だが目的のためには殺人も厭わないタイプ。彼は芸歴が長く最近では「リトル・ミス・サンシャイン」で顔を見せているが、個性的な役ばかり。
 なかでもこの役でもっとも印象に残っているのは、何をしでかすか分からない言動のせいだろう。ここでも変な芝居を仕組んで、スージーを不安がらせる。

 事件の鍵を握るのは隣人の少女・グロリア(ジュリー・ハロット)。眼鏡を掛けた意地悪な娘だが、コンプレックスのせいでの言動だ。留守居のスージーには彼女に助けを求めることも多い。か弱い2人が上手く噛み合うと、こんなことになるというプロットがなかなか良くできている。

 本当は夫サム役をM・ファーラーがやりたかった役柄だったろうが、本作ではラジオのアナウンスでカメオ出演している。サムを演じたエフレム・ジンバリスト・Jrは前半と終盤にしか出てこないが役得だった。

 真っ暗な映画館で見ると映像や音の緊迫感が増幅され、盲目のヒロインの危なさが身に迫ってくる。自宅で観るなら是非部屋を暗くして観ることをお勧めしたい。






『ディファイアンス』 80点

2013-01-18 15:27:02 | (米国) 2000~09 

ディファイアンス

2008年/アメリカ


必死に生き延びた人々の物語

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆75点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆75点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆80点

「ラスト・サムライ」「ブラッド・ダイヤモンド」のエドワード・ズウィック監督が、史実をもとにナチス・ドイツに抵抗したユダヤ人兄弟を描いた異色の戦争映画。題名の「ディファイアンス」とは<果敢な抵抗>と言う意味。歴史の陰で矛盾を抱えながら必死に生き延びた人々にスポットを当てた意欲作だが、若干空回りも...。
今は世界遺産になっているベラルーシのビャウォヴィエジャの森は第2次大戦中はポーランドだった。ここにナチスの占領から逃げてきたビエルスキ4兄弟がいた。両親が殺されたのはナチスのユダヤ人迫害のために賭けた賞金欲しさの同じポーランド人警察官によるものだった。長男トゥヴィアと次男ズシュは復讐のため警官の家族を射殺。悲劇はここから始まり、果てしないナチスからの逃亡劇が始まる。
ゲットーが解体されるという情報で逃亡の説得に向かうトゥヴィアは、他の森から生き延びるために逃げてきた人々とともにコミュニティをつくり隠れて暮らすことを思い、ズシュは徹底抗戦して身を守ることを主張するようになる。寒さと飢え、兄弟の諍い、同胞たちの秩序の乱れなどを背負ったトゥヴィアのリーダーとしての苦悩がヒシヒシと伝わってくる。演じたのが6代目ボンド役のダニエル・クレイグだが全く違う人物像。もともと、こちらのほうがお似合いだ。ズシュを演じたのは「トータル・フィアーズ」のリーヴ・シュレイバー。ソ連赤軍に加わる武闘派はイメージぴったり。3男アザエルは「リトル・ダンサー」のジェイミー・ベルが演じて始めは頼りないが後にトゥヴィアの片腕としてリーダーの資質を見せ始める。
この3兄弟を中心に組織されたビエルスキ・パルチザンは幾多の困難を乗り越え同胞1200人とともに森で共同生活をして行く。ドラマは随所に衝撃的な出来事が連なるがエピソードの羅列が多く、どうしても単調な展開になってしまう。ドラマチックな展開はフィクションに頼らざるを得なかった苦しさが窺える。同じポーランド人の悲劇を扱った映画でアンジェイ・ワイダ監督の「カティンの森」はソ連赤軍による大虐殺で善悪がハッキリしている。対して本作はポーランド人にとって<ユダヤ人を守った英雄>なのか<ソ連赤軍と組み、非ユダヤのポーランド人から物資を奪った山賊集団>なのか評価が分かれるところと聞く。ドラマはある程度忠実に描きながらも<ユダヤ人の悲劇と忍耐強さ>を前面に押し出している。
ポーランド人が英語で話すことが気になったが、イスラエル軍によるガザ地区大空爆のあったこの時期に、ハリウッド(英語版)で製作されたと思うのは穿ちすぎだろうか?。


『逃亡者』 75点

2013-01-17 12:21:56 | (米国) 1980~99 

逃亡者

1993年/アメリカ

トミー・L・ジョーンズの出世作

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 75

ストーリー ★★★★☆75点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆75点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆75点

60年代大ヒットしたTVドラマシリーズをベースに無実の罪で逃亡した医師と彼を追う連邦保安官補のアクション・サスペンス。ハリソン・フォードとトミー・L・ジョーンズの2人が演じた映画ならではのスケール感が持ち味で、監督はアンドリュー・デイヴィス。
主人公リチャード・キンブルはTVのデヴィッド・ジャンセンより機敏で逞しく、まるでインディ・ジョーンズを観るようだ。そのためどんな困難にも機転を利かせ追手から逃れ、真犯人を探し当てようとする。
保安官補ジェラードは冷酷無比なTVより人間味豊かで、キャラクターも際立っていて動きもシャープ。準主役扱いでオスカーを受賞(助演男優賞)し、彼の出世作ともなっている。のちに彼を主役に「追跡者」ができたほど。
前半は護送車と列車の衝突から地下道での逃亡、激流へのダイビングと息もつかせぬアクションはダイナミックかつスピーディで、後の逃亡劇のお手本となるシーンが繰り広げられる。当時はH・フォードもトミー・L・ジョーンズも若く、動きもシャープで見応え充分。
後半は真犯人・片腕の男を突き止め黒幕を探ろうとするサスペンスとなるが、足早に真相に迫って行く。列車内やホテルでの格闘は如何にもハリウッド好みの展開だ。公開時は気付かなかったが、清掃員に扮したキンブル医師を目撃した女医役でジュリアン・ムーアが出ていた。TVドラマのキンブルは毎回危機に曝されながら医師として人間として放っておけず事件に巻き込まれいつもハラハラ・ドキドキさせられ4年間続いたが、その一編を観る想いの挿話での登場だった。
TV版は120話続いてようやく真犯人が見つかったが、本作はテンポ良く進んでエンディングを迎える。テイストの違うアクション満載の「逃亡者」という感じがした。


『レ・ミゼラブル』 80点

2013-01-14 16:16:01 |  (欧州・アジア他) 2010~15




レ・ミゼラブル


2012年/イギリス






涙しない自分に?エポニーヌとテナルディエ夫妻に拍手!





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shinakamさん


男性






総合★★★★☆
80



ストーリー

★★★★☆
80点




キャスト

★★★★☆
80点




演出

★★★★☆
80点




ビジュアル

★★★★☆
85点




音楽

★★★★☆
85点





1985ロンドンで初演以来27年間上演されているミュージカルをもとにキャメロン・マッキントッシュ製作による完全映画化。パンひとつ盗んだだけで19年獄中生活を余儀なくされたジャンバルジャンの話は、ミュージカルファンでなくても世界中に知られている。原作であるヴィクトル・ユゴーの長編小説は、19世紀前半のフランスを舞台に格差と貧困に苦しむ観衆が解放を求めようとする物語。ジャンバルジャンを通して<法と善>の葛藤を描いて、キリスト教の精神である自己犠牲による愛の崇高さを説いている。
監督に起用されたのが、「英国王のスピーチ」でオスカー受賞のトム・フーバー。全編歌で流れる台詞は口パクではなく撮影現場での同時録音という従来のミュージカル映画の常識を打ち破った画期的な撮影手法を採った。それが長所でもあり短所でもあった。
長所は俳優の演技がとても感情豊かで歌唱が演技の邪魔をしないこと。ジャンバルジャンを演じたヒュー・ジャックマン、ジャベールを演じたラッセル・クロウ、ファンティーヌを演じたアン・ハサウェイは期待に応えた素晴らしい演技で証明してくれている。短所は歌のレベルが舞台には程遠く、アップでの表情がリアルすぎて美しくないこと。エポニーヌを演じたサマンサ・バークスの本物感が際立っていた。
もちろん贅沢な注文であることは百も承知で映画ならではの映像のダイナミックさは舞台では出せないし、溢れる感情を大画面で味わえる素晴らしさもある。あちこちですすり泣きも聞こえるほど感動的場面も何箇所かあったにも関わらず涙しない自分がいた。もともとミュージカル好きではないが、今まで観たミュージカル映画のなかで本作は出来が悪いとは思えない。158分の長さの割に後半が若い2人のラブ・ストーリー中心のせいだろうか?
もっとも盛り上げてくれたのがテナルディエ夫妻を演じたサシャ・バロン・コーエンとヘレナ・ボナム=カーター。とくにヘレナは前作「英国王のスピーチ」の淑やかさとは正反対の人間味溢れる?欲深い女ぶりがお見事。コゼットの少女時代を演じたイザベル・アレン、ガブローシュ少年を演じたダニエル・ハルストーンにも拍手を送りたい。
フランス人が演じたフランス語の芝居という過去の印象を拭えないまま、全編英語で謳われたさまざまな愛の物語が中心のミュージカルについて行けなかったのかもしれない。






『丹下左膳('58)』 75点

2013-01-13 12:27:44 | 日本映画 1946~59(昭和21~34)

丹下左膳('58)

1958年/日本

東映時代劇全盛期の大友左膳

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 75

ストーリー ★★★★☆75点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆75点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆75点

林不忘の原作、隻眼隻手のアンチヒーロー丹下左膳。戦前・日活の大スター、大河内傳次郎の当たり芸を大友柳太郎でリメイク。本作は<東映スコープ一周年記念で決定版>と銘打った娯楽時代劇で監督は松田定次。
将軍吉宗の時代、当主対馬守は司馬道場へ婿入りする弟・源三郎に贈った苔猿の壺に百万両の隠し場所があるのを知る。スリの与吉に盗まれた壺は丹下左膳の手に渡っていた。
幼いころチャンバラ・ごっこで遊んだ<姓は丹下、名は左膳>でお馴染みの左膳はハンデキャッパーながら剣の達人で明るいヒーロー。三味線の師匠・お藤と夫婦同様でちょび安という子供を可愛がっている。派手な着流しがかっこいい。大友は新国劇出身らしくオーバーなアクションで大型画面で気持ちよさそうに暴れまくる。競演陣がかなり豪華だ。柳生源三郎に大川橋蔵、許嫁・萩乃に美空ひばり、吉宗に東千代之介、大岡越前守に月形龍之介、お藤に長谷川裕美子それに本家左膳の大河内傳次郎が蒲生泰軒で新旧競演もある。
東映時代劇ファンなら誰でも知っている三島雅夫、薄田研二、山形勲、多々良純、左朴全などの脇役陣も勢揃い。なかでも敵役として美空ひばりにイイ寄る山形が本領発揮。
美空は得意のノドを披露する当時お馴染みのパターンを見せてくれるし名子役ちょび安の松島トモ子も鞍馬天狗の杉作と並ぶ名演技。美空が21歳で松島が13歳の頃とは信じられない。
歴代左膳では大河内が最も多く伊藤大輔・渡辺邦男・山中貞雄・三隅研次など名監督が手掛けている。大河内以外でも阪東妻三郎・中村錦之助・丹波哲郎などが演じ、最近では豊川悦司がスタイリッシュに演じている。
筆者の中学時代、画面いっぱいに繰り広げられる大型スクリーンの総天然色に感動しながら見入った頃が懐かしい。


『ダークナイト』 80点

2013-01-10 13:36:37 | (米国) 2000~09 

ダークナイト

2008年/アメリカ

アメコミの王道・力ずくの正義をドラマチックに描いたC・ノーラン

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

「バットマン ビギンズ」(08)に続くクリストファー・ノーラン監督・クリスチャン・ベール主演のシリアスなバットマン・シリーズ第2弾。ゴッサム・シティの犯罪に立ち向かう陰のヒーロー・バットマンと、史上最悪の犯罪者・ジョーカーとの闘いを、IMAXカメラを駆使したスピーディかつドラマティックに描いている。遺作になったヒース・レジャーのジョーカーが話題を独占したが、それ以外でも見どころが多い。
まず、新任検事ハービー・デントの存在。<光りの騎士>とも呼ばれバットマンは彼ではないかと市民の話題となった純粋な正義のひと。おまけにバットマンの表の顔ブルース・ウエインが愛するレイチェルを巡っての恋のライバルでもあった。バットマンと協力してマフィアのマネーロンダリング摘発に総てを賭ける警部補・ゴードンも主要人物のひとり。警察内の汚職など小事には目もくれず、デントと協力してマフィアの壊滅に邁進する。
バットマンは表の顔では自信たっぷりの実業家で裏の顔ではジョーカー曰く「モラルを捨てない頑固な奴で高邁な精神を持っている」男だが、正義のためには暴力も厭わない<力ずくの正義>を発揮する。法の精神では及ばない正義のためにエネルギーを注ぐ。
バットマン、デント、ゴードンがそれぞれの正義を発揮する前に立ちはだかるのがジョーカー。社会から嫌われ恐れられることで存在感を満たす特異な存在である意味ではバットマンと表裏一体でもある。
アメコミならではの正義と悪の闘いでありながら、トゥーフェイスを登場させ裏で糸を引くジョーカーが本来の複雑な悪の構造であることを思い知らされる。物語は意外と哲学的になって行くところにこの作品の評価が分かれるところだろう。
キャスティングが豪華なのもこの作品の魅力。ジョーカーのH・レジャーに負けず熱演したデント役のアーロン・エッカート。2人がバットマンのC・ベールを喰うほどの大活躍だった。ゴードン役のG・オールドマン、マイケル・ケイン、モーガン・フリーマンの両ベテランも流石の演技。好みの違いだが、レイチェル役がケイティ・ホームズからマギー・ギレンホールに替わったこと以外は前作のイメージを引き継いでくれた。
登場人物も多いのでバットマンを知らない観客には話の展開が速く、ついて行けないところがあって万人受けしなかった。公開を観ずに28歳で亡くなったH・レジャーと撮影中に亡くなった特殊効果のコンウェイ・ウィックリフに捧げた本作は、アクション映画ファンには名作として語り続けられることだろう。


『ザ・ロック』 75点

2013-01-09 12:47:58 | (米国) 1980~99 




ザ・ロック


1996年/アメリカ






J・存在感たっぷりのJ・コネリーとN・ケイジ、E・ハリスの競演





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shinakamさん


男性






総合★★★★☆
75



ストーリー

★★★★☆
75点




キャスト

★★★★☆
85点




演出

★★★★☆
80点




ビジュアル

★★★★☆
80点




音楽

★★★★☆
80点





 「フラシッシュ・ダンス」「ビバリーヒルズコップ」シリーズ、「トップ・ガン」などを手がけたドン・シンプソン、ジェリー・ブラッカイマーのコンビによるエンタテインメント大作。ニコラス・ケイジ、ショーン・コネリー、エド・ハリスの3大スターが観光名所となっている刑務所(ザ・ロック)のあったアルカトロズ島で繰り広げられるテロ事件の攻防を描いている。
 何といっても元英国情報局秘密情報部員で33年前アルカトロズ島刑務所を脱獄した男を演じたJ・コネリーが圧倒的存在感を示している。007の後日談をも思わせる役柄はチョッピリずるい感じも。もう一人というか本来の主役はN・ケイジ。前年「リービング・ラスベガス」でのアル中で死んでゆく哀れな役でイメージができてしまったが、ここでは化学兵器スペシャリストでFBI特別捜査官。対するテロリストは海軍准将で英雄のE・ハリス。事件を起こした理由が、多くの戦友が秘密作戦で亡くなったのに国家は不当な扱いに憤慨してのこと。
 裸でギターを弾いて恋人と過ごす非番のFBI捜査官と軍服姿で妻の墓標に誓いを立てる海兵隊員の好対照ぶりがこのドラマの幕開け。国家や政府の怠慢を皮肉たっぷりに描いたこの映画はシスコのカーチェイスを皮切りにノンストップ・アクションが目を奪うが、J・コネリーの登場で、ひと味厚みを増したアクション映画としてファンには一線を画すものとなった。
 マイケル・ベイの演出、ハンス・ジマーの音楽は映画の職人を感じさせるエネルギーを感じるが、良くも悪くも気を使わず楽しめる娯楽大作に仕上がった。