ダークナイト
2008年/アメリカ
アメコミの王道・力ずくの正義をドラマチックに描いたC・ノーラン
shinakamさん
男性
総合 80点
ストーリー 80点
キャスト 85点
演出 80点
ビジュアル 85点
音楽 80点
「バットマン ビギンズ」(08)に続くクリストファー・ノーラン監督・クリスチャン・ベール主演のシリアスなバットマン・シリーズ第2弾。ゴッサム・シティの犯罪に立ち向かう陰のヒーロー・バットマンと、史上最悪の犯罪者・ジョーカーとの闘いを、IMAXカメラを駆使したスピーディかつドラマティックに描いている。遺作になったヒース・レジャーのジョーカーが話題を独占したが、それ以外でも見どころが多い。
まず、新任検事ハービー・デントの存在。<光りの騎士>とも呼ばれバットマンは彼ではないかと市民の話題となった純粋な正義のひと。おまけにバットマンの表の顔ブルース・ウエインが愛するレイチェルを巡っての恋のライバルでもあった。バットマンと協力してマフィアのマネーロンダリング摘発に総てを賭ける警部補・ゴードンも主要人物のひとり。警察内の汚職など小事には目もくれず、デントと協力してマフィアの壊滅に邁進する。
バットマンは表の顔では自信たっぷりの実業家で裏の顔ではジョーカー曰く「モラルを捨てない頑固な奴で高邁な精神を持っている」男だが、正義のためには暴力も厭わない<力ずくの正義>を発揮する。法の精神では及ばない正義のためにエネルギーを注ぐ。
バットマン、デント、ゴードンがそれぞれの正義を発揮する前に立ちはだかるのがジョーカー。社会から嫌われ恐れられることで存在感を満たす特異な存在である意味ではバットマンと表裏一体でもある。
アメコミならではの正義と悪の闘いでありながら、トゥーフェイスを登場させ裏で糸を引くジョーカーが本来の複雑な悪の構造であることを思い知らされる。物語は意外と哲学的になって行くところにこの作品の評価が分かれるところだろう。
キャスティングが豪華なのもこの作品の魅力。ジョーカーのH・レジャーに負けず熱演したデント役のアーロン・エッカート。2人がバットマンのC・ベールを喰うほどの大活躍だった。ゴードン役のG・オールドマン、マイケル・ケイン、モーガン・フリーマンの両ベテランも流石の演技。好みの違いだが、レイチェル役がケイティ・ホームズからマギー・ギレンホールに替わったこと以外は前作のイメージを引き継いでくれた。
登場人物も多いのでバットマンを知らない観客には話の展開が速く、ついて行けないところがあって万人受けしなかった。公開を観ずに28歳で亡くなったH・レジャーと撮影中に亡くなった特殊効果のコンウェイ・ウィックリフに捧げた本作は、アクション映画ファンには名作として語り続けられることだろう。
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