晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

『スイミング・プール』 80点

2011-06-14 15:27:23 | (欧州・アジア他) 2000~09

スイミング・プール

2003年/フランス

現実と空想の交錯を楽しむ

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

フランソワ・オゾン監督・脚本のミステリー風ファンタジー。イギリスのミステリー作家が出版社社長・ジョンの別荘で次回作の構想中に起きた殺人事件。
人気シリーズ「ドーウェル警部」はマンネリで、タダならぬ仲のジョンからも見捨てられそうな焦燥感のまま南仏の別荘へ。そこに現れたのがジョンの娘ジュリー。ジュリーを演じたのはリュディヴィーヌ・サニエで大胆なヌード・シーンでの演技に目を奪われる。奔放で愛情に飢えて日替わりに男を連れてくるセックス・シンボル的存在だ。サラにとってジュリーは腹立たしく邪魔な存在だが、潜在願望を臆面もなく実行する羨望の的でもある。その証拠にノンカロリー・ヨーグルトとトマトを主食としてダイエット・コークとウィスキー・紅茶しか飲まないイギリス中年女性のサラが、ジュリーの買ってきたフォアグラを肴にワインをこっそりがぶ飲みするシーンがある。そしてサラが好感をもったカフェのウエイター・フランクとプールでじゃれあうジュリーに嫉妬して石を投げたりする。ジュリーの日記を盗み見したのをキッカケに書き始めたサラの小説は、ジュリーに読まれてフランクを巻き込んだ事件へと発展してしまう。
ジュリーが実在の人物なのか、架空の人物かまたは実在の人物に空想が交じっていたのかは最後まではっきりしない。自分なりの解釈はあるが、曖昧さのなかに事実が見え想像力が掻き立てられれば、正解はどうでもいいのでは?
オゾン監督は「想像力の源は?という質問の答えを、自分の代りとして英国の女性推理作家に投影させた。」といっている。
最も印象的だったのは御年58歳のシャーロット・ランプリングの円熟した演技・特に表情の変化と潔い脱ぎっぷり。身動きが取れないままエンディングを迎えてしまった。いづれにしても<女の魅力と隠れた厭らしさ怖さを表現した>オゾン監督と見事に演じたC・ランプリングに圧倒させられた。


『チェイサー(1978)』 75点

2011-06-10 13:45:39 | 外国映画 1960~79

チェイサー(1978)

1978年/フランス

不死身なA・ドロンの活躍と楽屋落ちを懐かしむ

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 75

ストーリー ★★★☆☆70点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★☆☆70点

ビジュアル ★★★★☆75点

音楽 ★★★★☆85点

ジョルジュ・ロートネル監督・脚本による青年実業家に扮したアラン・ドロンの不死身の活躍を描いたドラマ。親友モーリス・ロネが政治スキャンダルから秘書を殺したのをかばうためアリバイづくりを買って出て事件に巻き込まれる。
A・ドロンとM・ロネの競演といえば「太陽がいっぱい」を思い出すがどうやら楽屋落ちらしくM・ロネの役名は同じ「フィリップ」でドラマはフィリップが殺されていよいよ佳境に入る。
もうひとつの楽屋落ちはA・ドロンの恋人役が当時熱愛中だったミレーユ・ダルクだったこと。実生活でスキャンダルに巻き込まれたドロンを最後までかばい続けた彼女はドロンにとってカケガエのないヒトだっただろう。ドラマでは最初は冷たい扱いをしたドロンだが、さぞ不本意だったことだろう。
本筋は次から次へと主要な人物が殺され、どうなるかと思ったが何度も危機を乗り越えたドロンの大活躍。得意のカーチェイスも見せ場だが、改めて観ると不自然なところも...。スタンゲッツのサックスが奏でる都会の雰囲気やモンパルナス駅でのロケ現場など随所に見所があるが、この内容で124分は少し冗長だった。


『ビッグ・ガン』 80点

2011-06-08 11:33:37 | 外国映画 1960~79

ビッグ・ガン

1973年/イタリア

マカロニ・ウェスタンにゴッドファーザーを加味

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆75点

ビジュアル ★★★★☆75点

音楽 ★★★★☆80点

「続・荒野の一ドル銀貨」のドゥッチオ・テッサリがフランコ・ヴェルッキの原案をもとに監督した伊・仏合作のフィルム・ノワール。主演に渋味が出てきたアラン・ドロンを迎え、彼のイメージを孤独な殺し屋にオーバーラップさせた最初の作品。
序盤にオルネラ・ヴァノーニの主題歌「逢いびき」が流れラブ・ストーリー風の展開。殺し屋トニー(A・ドロン)は7歳の誕生日を迎えた息子のためにマフィアから足を洗う決意をしたが、秘密を知りすぎた男を組織が放っておくはずがなく、命を狙われる。
男同士の友情と裏切りは組織の定番で、ミラノの街を舞台にカーアクションあり暴力ありのハードボイルドだが、どこか雰囲気がマカロニ・ウェスタン風味。とくに弟分を一味が車ごと殺害したり、男が女を殴るシーンは執拗で本筋を超えた残酷さが売り物としたしか思えない。
主人公が家族や故郷を大切にし、シシリー島に帰郷するなど前年の大ヒット作「ゴッドファーザー」を多分に意識したつくり。脇を固めるリチャード・コンテはゴッド・ファーザーのドン「エミリオ・バルジーニ」役なのも偶然ではなさそう。
A・ドロンはこの作品をキッカケに「仁義」「サムライ」など得意のジャンルになるだけあって一匹狼ぶりが良く似合う。本作では妻子を愛し、命を救ってくれた情婦サンドラ(カルラ・グラヴィーナ)を守り、恩義ある仲間を裏切らないなどヒーローにはうってつけの役。それだけにラストシーンが予測できてしまう。A・ドロンのファンには何度観ても堪らないシーンだろう。


『パピヨン』 85点

2011-06-05 12:32:34 | 外国映画 1960~79

パピヨン

1973年/フランス

自由への執念を体現したS・マックイーン

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 85

ストーリー ★★★★☆85点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆90点

フランスで殺人罪に問われ南米仏領ギアナの監獄へ送られた男の脱獄物語。アンリ・シャリエールの自伝をもとにダルトン・トランボ、ロレンツォ・センブル・ジュニアの共同脚本による自由への執念、極限での友情を描いた150分。監督は「パットン大戦車軍団」のフランクリン・J・シャフナー。
主演のパピヨンにはスティーブ・マックイーンが扮しているが、12年前の大ヒット作「大脱走」のエンターテインメントとは違って、極限状態に追い込まれた男が執念を燃やし続け自由への執念を燃やし続けた臨場感溢れる脱獄モノ。
何しろ国籍を剥奪させられ一生母国へは帰れない絶望感は囚人全員の想い。パピヨンは脱獄という手段で自由を得ようとする。1回脱獄で人食い牢と呼ばれる独房へ禁錮2年、2回脱獄で5年、3回で処刑という罪が待っている。囚人仲間にはさまざまな人間がいるが債権偽造で捕まったルイ・ドガ(ダスティン・ホフマン)とは奇妙な友情で結ばれる。最後まで脱獄に生き甲斐を見出そうとするパピヨンとそれなりの環境に順応して生き抜こうとするドガ。2人の生きざまが最後まで観客に<自由とは?>を問いかけてくるようだ。D・ホフマンは相手役を引き立てながら自分を際立たせるのが巧みな俳優で、この作品でも実証している。
健康で堂々たる体躯のパピヨンが独房生活で頬がこけ蒼ざめた別人のようになり、白髪で歯が抜けた老人になるまで自由への執念を体現したS・マックイーン。「大脱走」とは両極の代表作といってよい。ジェリー・ゴールドスミスの音楽がこの男の変遷を感情豊かに盛り上げてくれた。映画音楽のお手本である。


『クロエ』 75点

2011-06-04 10:54:29 | (欧州・アジア他) 2000~09

クロエ

2009年/カナダ=フランス=アメリカ

共感できるか、微妙。

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 75

ストーリー ★★★★☆75点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆75点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆75点

フランスの女流監督アンヌ・フォンテーヌの「恍惚」(03)をアトム・エゴヤン監督が舞台をパリからトロントへ移しリメイク。倦怠期に差しかかった熟年夫婦の妻が娼婦を雇って夫を誘惑させ、その詳細を報告させる。娼婦の名はクロエ。
荒唐無稽なハナシと思うかとても共感するかは観るヒトの立場によると思うが、不自然に思わないかはストーリー展開と俳優の善し悪しで大分違ってくる。今回は演技派ジュリアン・ムーアと若手で日の出の勢いのアマンダ・サイフリッドの競演だが、残念ながら決して成功とは言い難い。「マンマ・ミーア」「ジュリエットからの手紙」と清純な役を立て続けに好演したA・サイフリッドにはこの役は正直荷が重かったようだ。若くて美しいが魔性の高級娼婦には見えず息子のマイケル(マックス・シエリオット)は誘惑できてもこの熟年夫婦の空想を掻き立てるほどには至らない。フランス版のエマニュエル・アベールに対抗できそうなのは、スカーレット・ヨハンソンあたりか?
J・ムーアは相変わらず大胆な脱ぎっぷり。腕や胸元を堂々と見せられるとこちらが恥ずかしくなってしまうが、夫の裏切りを疑うあまり想わぬ行動にでてしまった熟年女の気持が伝わってくる。夫のリーアム・ニーソンはフェミニストぶりが自然で持てる中年大学教授という美味しい役だが、出番の多さの割に妻の視点でしか描かれず類型的。
大都会トロントの冬景色を舞台に繰り広げられる思い込みと疑惑の連鎖は想わぬ展開へ進むが、エゴヤン監督の<空想が人をどう変えて行くかの検証>は意外なエンディングへ。クロエの髪飾りが小道具として象徴的につかわれている。