晴れ、ときどき映画三昧

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『脱出(1972・アメリカ)』 80点

2011-06-23 12:57:42 | 外国映画 1960~79

脱出(1972・アメリカ)

1972年/アメリカ

想定外の事態で狼狽する姿に緊迫感

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

原作者ジェームズ・ディッキーが脚色、アメリカン・ニューシネマの異才ジョン・ブアマンが監督したサスペンス。ジョージア州北部のカフラワシー川がダム建設で人工湖になる前に、川下りをカヌーでしようとした4人が事件に遭遇。4人の男がどう対処しようとしたかがとても興味深く観客を巻き込んだ緊迫感が最後まで続く。
日頃のストレスを解放するため、自然に触れたいと想う都会人が美しい雄大な風景とはウラハラの厳しい環境に遭遇した戸惑いは、いま日本人なら誰でも思い当たる状況。この公開時期はベトナム戦争の最中でアメリカ人の厭世感が蔓延していたころ。地味ながらこの作品は共感を呼んで、ヒット作となり、AFIが選んだスリラー映画ベスト100のうち15位にランクされている。
4人の男はエド(ジョン・ボイト)、ルイス(バート・レイノルズ)とボビー(ネット・ビーティ)、ドリュー(ロニー・コックス)の個性派揃い。なぜこの4人が無謀な計画を行ったかは定かではないが、それぞれの生活に行き詰って孤立感を一掃したかったのだろう。初日は現地に住むスコッチ・アイリッシュの人との交流もあり自然を謳歌。劇中のブルーグラスの名曲「デュエリング・バンジョー」は異様な雰囲気から心を慰めてくれる。
2日目から様子が一変、まるで戦場にいるような理由もなく殺すか殺されるかという緊迫感。
のちに似たような作品で「激流」があったが、それを上回る想定外さ加減が川の流れの恐ろしさを倍加させる。
序盤リーダー役だったルイスがケガをした途端影が薄くなり、どっちつかずのアヤフヤ男のエドが火事場の馬鹿力を出すところは人間の不思議さが見えて面白い。原作者のJ・ディッキーが保安官役で<川が真実を語る>という含蓄のある台詞をキメテ自然には勝てない人間の弱さをさりげなく語っているのが印象的。