パピヨン
1973年/フランス
自由への執念を体現したS・マックイーン
shinakamさん
男性
総合 85点
ストーリー 85点
キャスト 85点
演出 80点
ビジュアル 85点
音楽 90点
フランスで殺人罪に問われ南米仏領ギアナの監獄へ送られた男の脱獄物語。アンリ・シャリエールの自伝をもとにダルトン・トランボ、ロレンツォ・センブル・ジュニアの共同脚本による自由への執念、極限での友情を描いた150分。監督は「パットン大戦車軍団」のフランクリン・J・シャフナー。
主演のパピヨンにはスティーブ・マックイーンが扮しているが、12年前の大ヒット作「大脱走」のエンターテインメントとは違って、極限状態に追い込まれた男が執念を燃やし続け自由への執念を燃やし続けた臨場感溢れる脱獄モノ。
何しろ国籍を剥奪させられ一生母国へは帰れない絶望感は囚人全員の想い。パピヨンは脱獄という手段で自由を得ようとする。1回脱獄で人食い牢と呼ばれる独房へ禁錮2年、2回脱獄で5年、3回で処刑という罪が待っている。囚人仲間にはさまざまな人間がいるが債権偽造で捕まったルイ・ドガ(ダスティン・ホフマン)とは奇妙な友情で結ばれる。最後まで脱獄に生き甲斐を見出そうとするパピヨンとそれなりの環境に順応して生き抜こうとするドガ。2人の生きざまが最後まで観客に<自由とは?>を問いかけてくるようだ。D・ホフマンは相手役を引き立てながら自分を際立たせるのが巧みな俳優で、この作品でも実証している。
健康で堂々たる体躯のパピヨンが独房生活で頬がこけ蒼ざめた別人のようになり、白髪で歯が抜けた老人になるまで自由への執念を体現したS・マックイーン。「大脱走」とは両極の代表作といってよい。ジェリー・ゴールドスミスの音楽がこの男の変遷を感情豊かに盛り上げてくれた。映画音楽のお手本である。