晴れ、ときどき映画三昧

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「きみはいい子」(15・日)80点

2016-01-05 15:27:13 | 日本映画 2010~15(平成23~27)

 ・ また一人、有望な若手監督が出てきた。それは、呉美保。

                    

 14年モントリオール映画祭の監督賞を受賞した呉美保(38歳)。受賞作品「そこのみにて光輝く」は見逃したが映画ファンには注目のヒト。念願叶って本作を鑑賞して、その能力の高さに舌を巻いた。

 原作はこれまた若手作家の中脇初枝(41歳)の短編5話で、そのうち3話を高田亮が脚本化している。

 坂のある町(小樽)を舞台に、新米小学校教師・岡野(高良健吾)、単身赴任の留守を守り娘あやねとマンション住まいの雅美(尾野眞千子)、誰とも会話のない独居老人あきこ(喜多道枝)の3人を中心に日々の営みを切り取った群像劇。

 筆者には登場人物に近い身内がいないので、ニュースで見る現代社会の社会問題をリアルに切り取って見せるこのドラマは、作り方如何では単なる他人事にしか映らなかったことだろう。

 感動の涙溢れるテイストを一歩手前で抑えた、かなり的確でバランスのいい作品で、同時に観た「海街diary」(是枝裕和監督)と比べても遜色ない。緻密な構成による脚本の出来の良さとそれを支えた出演者たち、その全てを巧みに演出した監督の手腕によるものだろう。

 なかでも自閉症の小学生役の加部亜門やあやね役の三宅希空を始め、子供たちの自然な演技は大人顔負け。子供と動物には敵わないと大人の俳優は嫌がるが、高良健吾・尾野眞千子というTVドラマでもお馴染みの俳優が役柄を真摯に取り組んでいるのに好感が持てる。

 そして我々世代には幼かった娘と観ていた「フランダースの犬」の声優・喜多道枝が素晴らしい。80歳の実年齢を活かし、認知症の兆しにおびえながらも人としての優しさを忘れない老人役は、心の救いとなっている。

 脇を固めるママとも池脇千鶴と先輩教師の高橋和也の夫婦も監督の厚い信頼に応えたし、不安を抱えながら子育てする富田靖子も安定感ある演技を魅せた。

 小学校は世相の縮図だというが、虐待・いじめ・モンスターペアレント・学校崩壊が当たり前のように描かれているのに今さらながら驚かされる。

 公園のママ友にも、うわべだけの交流が却って心の傷を深くしている現状がある。

 呉監督は、逆に突き放さないように留意しながら希望のある物語に仕上げているが、少し甘めのエンディングに若干の物足りなさを感じたのは贅沢な注文か?

 


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