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「地獄への逆襲」(40・米)70点

2021-09-08 13:15:10 | 外国映画 1945以前 


 ・ ノワールの巨匠 フリッツ・ヤング初の西部劇。


 ’40~50年代フィルム・ノワールで名高いフリッツ・ヤングが、ザナックのプロデュースによる初のカラー西部劇を監督した作品。
 ヘンリー・キング監督・タイロン・パワー主演「地獄への道」(39)の続編で、ジェシー・ジェイムズの兄フランクを演じたヘンリー・フォンダが主演して「暗黒街の弾痕」(37)以来のコンビ復活となった。
 ものものしい邦題がついているが原題は「THE RETURN OF FRANK JAMES」。前作「Jasse James」が「地獄への道」だったため、ビリー・ザ・キッドと並ぶ西部のアウトローも当時の日本ではあまり馴染みが無かったのが分かる。

 ジェシーが弟分のボブに射殺される前作のラストシーンで始まる本作。農夫となって静かに暮らす元罪人のフランクがボブを追って再び銃を取る。

 フランクを演じたH・フォンダは物静かで冷静沈着な人格者に見える。南北戦争のゲリラ隊を経験し、敗北後ミズーリの銀行強盗を手始めにケンターキー、アイオワ、ミネソタを渡り歩き、ジェームズやヤンガー兄弟などと銀行や列車を襲ったギャング団の一員だが、正義感と誠実さが滲み出ている人物像として描かれている。
 弟が35歳で悲劇的な最期を遂げ英雄視されたため地味な存在となっているが、半年後自首しミズーリ州裁判で無罪となって72歳まで静かな暮らしを過ごし自宅で死亡したという対照的な後半生。中年になって持ち味を発揮してきたフォンダらしい役柄となった。

 ドラマは弟の死後半年間を描いていて派手な銃撃戦や少ないものの、ヤング監督は馬の疾走シーンや崖からの転落シーンなどダイナミックで見応え十分な演出で切れ味を魅せている。
 得意の豪華なセット、壁面に映るシルエットやユーモラスな裁判シーンなど雇われ仕事ながらその片鱗は窺える。

 前作同様ボブ(ジョン・キャラダイン)、新聞社主ルーファス・コップ(ヘンリー・ハル)、黒人使用人ピンキー(アーネスト・ホイットマン)、鉄道会社マッコイ(ドラルド・ミーク)、探偵ラニアン(J・エドワード・ブログバーグ)が絡みながらドラマは進行する。
 なかでもコップが元南軍の少佐だった経歴を活かし裁判でフランクの弁護役として大活躍するシークエンスは、事件が南北戦争の後遺症であることを示し、ドラマに厚みを持たせている。
 新たに加わったのがデンバー・スター社主の美しい令嬢エレノア・ストーンで、19歳のジーン・ティアニーが新米記者役で花を添える。この時代、メディア情報で英雄にも罪悪人にもなる危うさが描写されているのも興味深い。
 さらにフランクを慕う一途な少年クレムにはジャッキー・クーパーが扮して、ドラマのキイ的役割を果たしている。

 ヤンガー=ジェームズ兄弟強盗団として西部を脅かしたアウトローたちはやがて終焉を迎え、その生涯をドラマ化した映画や演劇などは続々と登場するがフランクが主役の作品は極めて少ない。
 本作は史実に拘らず、<極悪人でも英雄でもないフランク・ジェームズを描いた貴重な作品>でもある。

 


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