・ L・オリヴィエのハリウッド進出第1作目で、原作をコンパクト化した悲恋物語
世界十大小説とも三大悲恋とも言われる19世紀の作家エミリー・ブロンテの長編小説を僅か104分に短縮した愛憎劇。ウィリアム・ワイラー監督、チャールズ・マッカーサー・ベンヘクト脚本でおどろおどろしい復讐が色濃い物語を大恋愛ストーリーへ作り上げた。陰影のあるダイナミックな映像でグレッグ・トーランドがオスカー・撮影賞(白黒部門)を受賞した。
イギリス・ヨークシャー。道に迷った旅人が「嵐が丘」と呼ばれる館に一夜の宿を得たが、「ヒースクリフ」と叫ぶ女の声が聞こえた。家政婦エレンが過去のハナシを語り始める・・・。
ヒースクリフとキャシーは兄妹同様「嵐が丘」で育った仲の良い幼なじみ。父が亡くなり後を継いだヒンドリーは孤児だったヒースクリフを疎ましく想い馬丁として酷使する。
キャシーへの想いから我慢してキャシーと密会していたヒースクリフだったが、身分違いの恋はやがて破綻し館を飛び出し行方不明に。
W・ワイラーはオスカー監督賞12回ノミネートという記録を持つ名匠だが、「ローマの休日」(52)などオードリー作品や「ベン・ハー」(59)の監督として著名な人。格調高い演出は観られるものの情熱的で怪奇な悲恋物語描ききれていないのは出演者のギクシャクした関係があったのかもしれない。
ヒロイン・キャシーを演じたのはマール・オベロン。インド人の母を持つエキセントリックな顔立ちでプロデューサー(S・ゴールドウィン)のお気に入り。
ヒースクリフ役のローレンス・オリヴィエはシェイクスピア俳優として一世を風靡するのは10年後で本作は進出第1作目。
お互い気に入らず、オベロンは「キスシーンを想像するだけでゾッとする」と言い、オリヴィエは後の夫人でロンドンにいた愛人ヴィヴィアン・リーに愚痴をこぼし、心配したリーは舞台をすっぽかしオリヴィエのもとに飛んで行った。それがキッカケで「風と共に去りぬ」(39)のスカーレットにキャスティングされたのは有名な逸話だ。
おまけにキャシーの夫で若いイギリス紳士エドガー役のデヴィット・ニーヴンはオベロンの元恋人で3年前破局した間柄。如何に演技とはいえ、エドガーが直向きにキャシーを愛するのは辛い役回りだったことだろう。
三人の関係が映像からは感じられないのはワイラー演出とプロの俳優魂がなせる技か?
同年公開された「風と共に・・・」と何かと比較され酷評された本作だが、今では10度も映画化された原作のお手本となっている。
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