・ ナチから逃れたフリッツ・ラング監督による西部劇・第2作。
「激怒」(36)「暗黒街の弾痕」(37)などフィルム・ノワールで名高いオーストリア生まれのフリッツ・ラング監督が、米国亡命中手掛けた西部劇3作のうちの第2作。
ゼイン・グレイの原作「Western Union」を映画化したテクニカル・カラー。
南北戦争時代、大陸横断通信網の施設工事を巡って通信会社とそれを阻もうとする南部ゲリラ隊や先住民との戦いを描いた西部開拓史。
主な出演は測量技師長エドワード・クレイトン(ディーン・ジャガー)、流れ者で後に道案内役として片腕となるヴァンス・ショウ(ロバート・ランカスター)、ハーバート出の電信技師リチャード・ブレイク(ロバート・ヤング)の三人。
ラング監督はヘンリー・キング監督「地獄への道」(39)の続編自身初の西部劇作品「地獄への逆襲」(40)が大ヒットしたため、ダナル・F・ザナックから本作へのご指名があったもの。
男の友情・淡い恋・銃撃戦など娯楽西部劇には欠かせないテーマを、大画面での迫力とユーモアをミックスしながら切れ味良く進めていく。
ヴァンスとエドワードが出会った冒頭、二人のアップとバッファローの群れを折り込んだカットで観客を引きつけるテクニックは斬新な映像で、二人の奇妙な友情がストーリーの柱となることを暗示している。
生まれも育ちも違うヴァンスとリチャードはエドワード最愛の妹スー(ヴァージニア・ギルモア)を巡る恋敵として描かれ、最後までその行方は分からない。
タイトルはR・ヤングの名が最初に出てくるが、物語としてはR・スコットが主役である。中年を過ぎて押しも押されもしない西部劇大スターとして名を馳せるが、当時はまだB級西部劇での主役を務めている頃。34年の俳優生活で100本以上出演しその半分以上が西部劇だったというスコット。ジョン・ウェイン、ゲイリー・クーパーと並びハリウッドの娯楽西部劇を支える存在となっていく。
本作では過去を隠した謎多き人物像だが、その心情まで表現できる演技力には欠けていたものの正統派2枚目スターとしてドラマを牽引していた。
スーを演じたV・ギルモアは本作では紅一点で男社会で生きる凜とした美しさがあり、リチャードとヴァンスの恋の相手より西部開拓事業に貢献したい理想の高い女性役。
コックのクッキーに扮したのはベテランのスリム・サマーヴィル。もっぱらコメディ・リリーフとして大活躍。ラング監督の語り口の巧さに応えている。
ネブラスカのオハマからユタのソルト・レイクまで電柱を建て通信網を延長する工事はリンカーン大統領から祝電がくるほどの大事業。当然先住民に邪魔されないような配慮と南部ゲリラ隊の排除が最重要なこと。
先住民には電線は魔除けだと言って逃れるが、ゲリラ部隊には手を焼き、作業所や森林火災など大変な目に遭う。
迫力ある火災シーンは見所のひとつ。
ヴァンスの正体が判明し終盤での銃撃戦はガンマンではないリアルなもので、ラング監督の拘りが見えるシークエンス。
第一次戦争体験で右眼を失明したラング監督にとってスタイリッシュな決闘シーンは絵空事だという想いがあったことだろう。
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