晴れ、ときどき映画三昧

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「台北ストーリー」(85・台)80点

2017-09-14 12:29:53 | (欧州・アジア他)1980~99 


・ 台湾ニューシネマのE・ヤン長編2作目が4Kデジタルで本邦初公開された。




台湾ニューシネマの雄エドワード・ヤン監督。生誕70年没後10年を記念して、代表作「クーリンチェ少年殺人事件」(91)とともに長編2作目の本作が4Kデジタルで蘇った。原題は「青梅竹馬」(幼なじみ)。斬新な作風が当時の台湾の観客には受け入れられず4日間で打ち切りとなった曰くつきの作品でもある。

家業の布問屋を継いだ元リトルリーグのエースだったアリョンと不動産ディベロッパーのキャリアウーマンのアジンは迪化街で育った幼なじみのカップル。
二人は同居のため新しいアパートへ下見にきていた。積極的なアジンに対し、どことなく乗り気がしないアリョン。
80年代経済成長で変貌を遂げる台北を舞台に、栄光に囚われた男と過去から逃れ未来に想いを馳せる女のすれ違いを描いたラブストーリー。

主人公アリョンを演じたのは盟友ホウ・シャオシェン。家を抵当に入れ本作のプロデューサーでもある。

ホウ・シャオシェンの推薦でヒロイン・アジンに扮したのが人気歌手ツァイ・チェン。

決して美男美女のラブロマンスではないが、方向性の違う訳アリの2人がすれ違うサマはとても切なく心に沁みる。

ラブストーリーの定番は2人のすれ違いを、異国情緒豊かな街並みや、彼らを取り巻くを人々の生き遣いが見え隠れする様子が背景に映し出されること。

お手本である米国や日本のカルチャーが混在する台北。ヤン監督はコンクリートのビル街やネオンで変貌する街並みを光と影で切り取って行く一方、西の古い街並みの迪化街に住むアジンの両親・妹やアリョンの後輩でタクシー運転手・アキン一家の暮らしぶりを通して経済成長に取り残された人々を捉えている。

蒋介石総統の肖像と中華民国万歳というネオンの前を若者たちのバイクが爆音を立て疾走するシークエンスが時代の象徴でもある。

人生の再出発には相応しい土地かもしれないカリフォルニアも、ベクトルの違う2人には到達点にはなりそうもない。

ヨーヨーマの奏でるタイトル・バック(J.S.バッハ無伴奏組曲2番ニ短調)で始まるドラマは、富士フィルムの屋上ネオンをバックに流れるBGM(ベートーヴェン チェロソナタ3番イ長調)が二人の未来を暗示しているようだ。


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