・ 時代背景を映した、美しい風景とカラフルな衣装。
’57年ニューイングランド地方コネチカット州の郊外に住むウィテカー一家。キャシー(ジュリアン・ムーア)の夫フランク(デニス・クエイド)は電器会社の重役で、二人の子供に恵まれた一見幸福な家庭に何の疑問も持たずに暮らしてきた。
ある日知ってしまった夫の秘密・ホモセクシュアルを目撃して、ショックを受けるが誰にも打ち明けられないでいる。たまたま美術館で見かけたレイモンド(デニス・ヘイスバート)の教養の高さに意外性を感じて一緒に絵画を鑑賞する。
製作総指揮にS・ソーダバーグやジョージ・クルーニーが名を連ねる、トッド・ヘインズ監督・脚本によるメロ・ドラマ。ヴェネチア映画祭・主演女優賞(J・ムーア)など多数受賞作品でもある。
当時のアメリカは黒人の公民権運動・ウーマンリヴ運動が盛んだったが、この地域は依然差別は根強く、ましてホモはタブーに近い。時代背景をプロットに、ひとりの女性が徐々に目覚めどのように生きて行くかを丁寧に描いている。
美しい紅葉の風景をバックにJ・ムーアが当時のトップファッションをカラフルに着こなしている。その時の心情が衣装に現れていて特に赤いドレスと薄紫のスカーフがこのドラマには欠かせない。
主演のJ・ムーアは絶頂期で「めぐりあう時間たち」でもオスカー女優ニコール・キッドマンを喰っていたし、当時妊娠中にも拘わらずそれを感じさせない好演だった。
デニス・クエイドも「オールド・ルーキー」とは正反対の難役を上手くこなしていたが、あまりにも個性的な役柄のため、イメージが残ってしまったのが気の毒な気がする。
エンディングが中途半端な気もするが、女性の自立とは?を観客に託すための余韻を持たせたのだろう。