・ 過酷な境遇を克服できるのは、究極の愛。
美しい妻・サラ(コニー・ニールセン)と2人の娘に囲まれ、幸せなミカエル(ウルリッヒ・トムセン)は、アフガニスタンに赴任することに。出所する弟・ヤニック(ニコライ・リー・コス)を迎えに行き、両親を交え久しぶりに一家が揃う。善き夫で父であったミカエルは、戦地で過酷な境遇に遭い捕虜になってしまうが、留守家族には戦死の訃報が伝わる。
死んだと思ったミカエルが帰って、弟・ヤニックが心の支えになった家族の微妙な変化と戸惑い。そして、別人のように変わってしまったミカエルは、妻にもいえない秘密を抱えてしまっていた。
「ドッグヴィル」「マンダレイ」のデンマーク人プロデューサー、ペーター・オルべック・イエンセンが製作、女流監督スサンネ・ビアが「幸せな孤独」に続いて<究極の愛>をテーマにした物語。
S・ビアはワンカットも無駄にしない繊細な描写で、心の揺れを丁寧に描いて実に見事な演出。また、アナス・トーマス・イエンセンの脚本は、人間描写の切り口がとてもしっかりしていて、揺るぎないドラマに仕上がっている。
ネタ不足のハリウッドが放って置く筈もなく、ジム・シェリダン監督、ナタリー・ポートマン主演でリメイク(「マイブラザー」・09)された。この頃のS・ビア監督は次回作「アフター・ウェディング」(06)でオスカー外国語作品賞にノミネートされ、「未来を生きる君たちへ」(10)で受賞するなど勢いが止まらない。
「グラディエーター」でその名を知られ、祖国で初主演した女優C・ニールセンは、期待に応える凛とした演技でヒトキワ光っていた。
最後に心の救いを得ることでこの映画は終わる。優秀な職業軍人であるミカエルが戦地で受けた過酷さは悲惨で、万が一我が身に置き換えたらと思うと迷路に入って確かな答えが見出せない。