ペーパーバード 幸せは翼にのって
2010年/スペイン
イキイキして説得力ある登場人物
shinakamさん
男性
総合 85点
ストーリー 85点
キャスト 85点
演出 85点
ビジュアル 85点
音楽 85点
30年代のスペイン内戦時代、妻子を失った喜劇役者と両親にはぐれた少年の絆を描いたヒューマン・ドラマ。監督はサーカス・アーティストでありTV局の社長でもあるエミリア・アラゴン。
国民的サーカス芸人を父に持ち、芸人社会の裏表を肌で感じた彼ならではのオリジナルはフィクションなのに登場人物がイキイキと描かれ説得力がある。
主人公ホルヘは心に傷を負いながら生きる希望を失うが1年振りに劇場に戻ってくる。喜んだのは長年の相方のエンリケ。不屈の精神とリーダーシップのあるホルヘと、繊細で心優しく愛情深い同性愛者のエンリケ。この2人はまるで夫婦のようで孤児のミゲルが現れて3人が疑似家族として絆を深めてゆくさまが微笑ましい。
監督自身が作曲したというノスタルジー溢れる音楽をバックに芸人たちが繰り広げる舞台裏の様子がこの映画の真骨頂。なかでもトウの立った歌手ロシオが魅力たっぷり。メガネなしでは舞台から落ちてしまう一輪車乗り、可愛いが踊りはいま一つのダンサー、犬の曲芸を披露する老夫婦などみんな魅力的だ。<1フランでは暮らせない・・・。>フランコ政権批判を劇中歌で披露するホルヘをマークする政権側。
中盤まで悲喜劇が交錯し、終盤サスペンスへ、ラスト感動のドラマでクライマックスとなる運びは観客を引き込まずにはいられない。
お馴染みの俳優はエンリケのルイス・オマールと歌手・ロシオ役のカルメン・マチぐらいだが、スペイン映画ファンなら主人公ホルヘのイマノル・アリアスはもちろん芸達者な子役ロジェ・プリンセプもご存知だろう。監督の実父ミリキ・アラゴンが何時どんな役で登場するか?とても興味深い。