晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

『愛を読むひと』 85点

2011-09-17 17:10:20 | (米国) 2000~09 

愛を読むひと

2008年/アメリカ=ドイツ

行間を読みながら感じる想い

プロフィール画像

shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 85

ストーリー ★★★★☆85点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆80点

ベルンハルト・シュリンクのベストセラー「朗読者」をスティーヴン・ダルドリーが監督した話題作。
弁護士のマイケルは妻と別れ娘を母に預けたまま独り暮らし。長年心から離れない想いが心を憂鬱にさせることがある。それは15歳のマイケルが気分が悪くなったとき看病してくれた21歳年上のハンナとのこと。
序盤は孤独を抱えた年上の女性と少年の物語でスタートする。激しく求めあう二人には少年を有頂天にさせるが、愛というには余りにも不自然な関係である。何故かハンナは少年の読書好きなのを知り朗読をせがむ。それは種類を問わず「オデュッセイヤ」「犬を連れた奥さん」「チャタレー夫人の恋」まで。ある日路面電車の車掌で真面目さを買われ事務職に変わることでこの関係は突然壊れる。
マイケルはハイデンベルグの法科大となり、ハンナとの意外な再会をする。ハンナはSSの戦犯で収容所の看守だった。
序盤にハンナの抱える「秘密」への伏線を巧妙に折り込んで物語は<人間の尊厳とは?>というシリアスなテーマへと進んで行く。
マイケルにはレイフ・ファインズが扮し青少年時代をデヴィッド・クロスが演じている。悩みを抱えたまま翻弄された人生を送り大人になったマイケル。憂いのある風貌はファインズ得意の役柄だ。D・クロスが多感な少年時代と青年になり分別を持つことで悩みが深くなるサマを、表情の変化で巧みに表現してなかなかの好演。
30代でフルヌードで少年を誘惑し心の隙間を埋めようとする女から、60代で深く切ない老いの姿まで、複雑な女の運命に苛まれた心の襞を全身全霊で演じ、6度目のノミネートでオスカーを獲得した。この役をニコール・キッドマンに譲らずに良かったと述懐したことだろう。
行間を読みながら感じる文芸作品の映画化だけに難しかったと思うがS・ダルドリーは見事に映像化してくれた。主人公がマイケルではなくミヒャエルでドイツ語だったらと思うのは贅沢な願いなので我慢しよう。