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晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

『侍』 80点

2010-04-07 12:13:36 | 日本映画 1960~79(昭和35~54)

1965年/日本

岡本喜八と橋本忍のコラボレーション

プロフィール画像

shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆75点

江戸末期「桜田門外の変」をもとに父と子の絆・情愛を描いた郡司次郎の時代劇小説を橋本忍が大胆に脚色、岡本喜八が初の本格的時代劇に挑んだ。歴史的な事件を当事者の水戸浪士・羽山市五郎(江原達怡)が語りで進行させる展開はユニーク。2人のコラボレーションはのちの「日本のいちばん長い日」につながる意味でも興味深い作品。
<人を斬るのが侍ならば、恋の未練はなぜ斬れぬ>と歌謡曲でも歌われ、戦前の大河内伝次郎・坂東妻三郎、戦後は阪妻の遺児・田村高廣や東千代之介など何度も映画化されている題材である。中学時代、東千代之介作品を映画館で観た記憶があり、純粋な愛を身分の違いで壊されたニヒルな二枚目の主人公が井伊大老のご落胤と知り雪の中を駆けつける新納鶴千代の運命を可哀そうだと思ったのを覚えている。
今回は三船敏郎で年齢的にも無理があり、どうしても「椿三十郎」を連想せざるを得ない。橋本脚本は充分承知で豪放磊落なイメージに書き換えられていて、岡本監督もシリアスな演出で切れの良いカット割り、迫力ある映像で期待に応えている。名師久世竜による殺陣シーンも見逃せない。
豪華キャストも見どころのひとつ。井伊直弼に松本幸四郎、長野主膳に市川高麗蔵、松平佐兵督に市川中車の歌舞伎役者を配しさらに東野栄治郎、杉村春子の新劇俳優や志村喬を加え重厚な脇役陣。どうしてもテンポが重くなるのは止むを得ない。
相変わらずの怪演・伊藤雄之助、新玉三千代の横顔の美しさ、八千草薫の清楚な美しさ、小林桂樹の律義さも見どころのひとつ。
黒澤作品と比較されたせいか当時の評価は低く話題にならなかったが、時代劇の名作のひとつだと思う。


『血と砂』 80点

2010-02-23 12:16:58 | 日本映画 1960~79(昭和35~54)

血と砂

1965年/日本

娯楽活劇と反戦を融合させた戦争映画

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆75点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆80点

「独立愚連隊」など縦横無尽な戦争活劇で知られる岡本喜八監督が、三船プロのバックアップを得て反戦映画を融合させた。主演の三船敏郎はこの年「赤ひげ」「姿三四郎」のほか2本に出演している。そのバイタリティには感嘆するほかない。
ときは昭和20年の北支戦線。いきなり敵の音楽「聖者の行進」が流れ、デキシーランドジャズと日本軍というミスマッチに面食らう。が、そのテンポの良さに見入ってしまう。
これは音楽学校の少年軍楽隊13人の少年たちで戦線派遣を反対した小杉軍曹(三船敏郎)が佐久間大尉(仲代達矢)傘下の独歩大隊へゆく途中であった。
古参兵には炊事係の犬山一等兵(佐藤允)葬儀屋の持田一等兵(伊藤雄之助)厭戦のため三年営倉入りの通信兵・志賀一等兵(天本英世)など個性豊か。紅一点の慰安婦お春(団令子)も欠かせない。それぞれが人間性を見せながら、戦場では正義も悪もなく殺し合いしかない虚しさをコミカルに描きながら見せてゆく。
黒人たちの葬送曲「聖者の行進」が悲しみを増して聴こえた。


『おとうと(’60)』 80点

2009-11-03 15:46:09 | 日本映画 1960~79(昭和35~54)

おとうと(’60)

1960年/日本

岸恵子と市川崑の代表作

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

幸田文の自伝的小説を水木洋子が脚色した市川崑監督初期の代表作。監督たっての希望で岸恵子主演が実現しただけあって、存在感抜群で彼女の代表作でもある。
両親への不満から、愚れてゆく弟・碧郎(川口浩)。家のことは殆ど無関心を装い息子には盲目的に甘い作家の父(森雅之)とリューマチの持病からかグチばかりこぼし信仰に救いを求める継母(田中絹代)。こんな一家を支え家事一切を切り盛りする姉・げん(岸恵子)が健気である。
映画史に残る「銀残し」という手法が時代を感じさせ、宮川一夫のカメラが文芸大作の趣きを一層際立たせている。
姉21才、弟17才にしては2人とも大人びているが、しっかりもので前向きな姉と気立てはいいのに何故か捻くれて行く弟の孤独感が画面に溢れ出ている。市川監督の手腕によるものだろう。
脇を固める森雅之・田中絹代は文句なしの演技。人を愛することの複雑な心境や哀しさを見事に演じて見せてくれた。他にも岸田今日子、中谷昇、浜村純など端役に近い役ながら達者な人達がきらりと光る役者振り。若き日の伊丹十三・江波杏子もマニアにとっては見逃せない。
これだけ条件が揃っていて、この年の代表作なのに何故かのめり込めなかった。不思議な感覚の映画である。


『秋日和』 80点

2009-10-22 15:49:57 | 日本映画 1960~79(昭和35~54)

秋日和

1960年/日本

得意なジャンルでコミカルなスパイスを振りまいた晩年の小津

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

晩年の小津安二郎が「彼岸花」に続いて里見の原作を映画化。「晩春」(’49)以来、<結婚を期に親子の複雑な心情をキメ細やかに描く>という得意のジャンルを時代{’60(昭和35年)}を切り取ってじっくり見せてくれた。カラー化しても落ち着いた独特のトーンとローアングル・固定カメラは健在である。
未亡人となっても慎ましく微笑みを絶やさない母と母親思いの優しい娘の親子。母は服飾学院で教師をしながら丸の内の商事会社で働く娘とたまに外食するのが楽しみ。平穏な母子の生活に何かと世話を焼くのが亡夫の学友3人(佐分利信・仲村伸郎・北竜二)で立派な社会人ながら学生気分丸出し。とぼけたやりとりでコミカルなスパイスを振りまいている。加えてこれが本格デビュー作となる司葉子の親友役の岡田茉莉子が、3人に絡んでやり込めてゆく存在感あふれる演技を見せ、さすが名優岡田時彦の娘だと唸らせる。のちの大女優・岩下志麻が受付嬢で出ていて2年後小津の遺作・「秋刀魚の味」のヒロインに抜擢されたのも大船松竹の晩年を象徴している。
60年といえば安保闘争の最中で、日本が大きくかわろうとする激動期。松竹も大島渚・篠田正浩のヌーベルバーグが胎動し始めた頃でもある。
のちの高度成長期を支えた若者が適齢期を迎えたこの時代、親子とは?家族とは?を追い続けた小津安二郎にとって、ドライとウェットという流行語を交えながら「変らぬ日本人の心情」をしっかり見据えた作品であることは間違いない。


『伊豆の踊子(’63)』 80点

2008-11-13 12:01:42 | 日本映画 1960~79(昭和35~54)

伊豆の踊子(’63)

1963年/日本

6作品中最高の出来

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆90点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

川端康成原作を4度目の映画化。西山克己監督、吉永小百合・高橋英樹のフレッシュ・コンビによる主演。
一高生・川崎(高橋英樹)は孤独感を癒すため伊豆の一人旅に出る。修善寺で出逢った旅芸人の一行栄吉(大阪志郎)と親しくなり、下田まで同行することに。年下の踊子・薫(吉永小百合)は14歳で一目で気になる存在だが、鬼ごっこをするサマはまだ子供だった。
大正時代の学生は今とは違って超エリートで、旅先での扱いは一般人とは違うもてなし振り。それに対し旅芸人は身分の低い扱いでとても恋愛対象にはならない。
川崎のほのかな恋心と、少女から女へ移ろうという薫の心情がとても良く描かれている。サユリストならずとも、無邪気で明るい笑顔と可愛らしい踊り、そしてイジラシイ表情はヒロインとして百点満点。田中絹代・美空ひばりを初め山口百恵など歴代のアイドルが演じたなかでも最高の出来だと思う。
そして脇役が豪華。浪花千栄子と大坂志郎はこの映画を原作のもつ文芸作品の空気をしっかり伝えてくれた。高橋英樹の川崎は爽やか過ぎるキライはあるものの、清潔感溢れる印象で及第点。他にも酌婦のお咲に南田洋子・お清に十朱幸代など出演シーンは少ないが、女の哀れを伝える重要な役どころを演じているのも見逃せない。
ただプロローグとエピローグの宇野重吉と浜田光夫のシーンはなくても良かったのでは?


『キューポラのある街』 80点

2008-11-12 11:19:58 | 日本映画 1960~79(昭和35~54)




キューポラのある街


1962年/日本






サユリストにとって不朽の名作








総合★★★★☆
80



ストーリー

★★★★☆
80点




キャスト

★★★★☆
90点




演出

★★★★☆
80点




ビジュアル

★★★★☆
80点




音楽

★★★★☆
80点





 早船ちよ原作で浦山桐郎の監督デビュー作品。この年のブルーリボン作品賞と17歳の吉永小百合が史上最年少で主演女優賞を受賞。全国のサユリストを感動させた。
 舞台は埼玉・川口市で、キューポラとは鉄の溶鉱炉で鋳物工場が林立している。ジュン(吉永小百合)は中学3年生で父・辰五郎(東野栄治郎)は鋳物職人、弟タカユキ(市川好郎)はガキ大将。
 ジュンはクラスの優等生で、おまけに可愛いマドンナ的存在。階級や人種、男女格差をものともせず元気はつらつで、どのクラスにも必ず実在していた。担任の野田先生(加藤武)ならずとも高校進学を応援したくなる。
 朝鮮景気が終わってリストラにあい一家は苦凶に陥る。職場の最若手・克己(浜田光夫)は組合が助けてくれるというが「アカの世話になるわけにはいかねえ」と断り酒に明け暮れる。
 戦後の復興から経済成長期とはいえ、今とは比べものにならない程貧しかった時代。在日朝鮮人が多く住んでいた東京・板橋で育った筆者とオーバー・ラップしてしまう。
 共同脚本の今村昌平が後に述懐するように<在日朝鮮人の北鮮帰国運動を「地上の楽園」と美化してしまったこと>に不自然さは拭えないが、ジュンとタカユキの貧しいながら逞しく成長してゆく青春ドラマとして記憶に残る作品。






『赤ひげ』 85点

2008-11-04 12:12:41 | 日本映画 1960~79(昭和35~54)

赤ひげ

1965年/日本

黒澤ヒューマニズムの集大成作品

総合★★★★☆ 85

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆85点

音楽 ★★★★☆80点

山本周五郎「赤ひげ診療譚」の原作を黒澤明が映画化。三船敏郎とのコンビ、モノクロ作品としても最後となった。原作にある庶民の貧困からくる切なさ、必死に生きるその姿を映しながら黒澤ヒューマニズムを存分に発揮した3時間5分の長編。
最新の阿蘭陀医学を学び、御番医になる筈だった若き医師・保本登(加山雄三)は小石川養生所に呼ばれ通称赤ひげ・新出去定(三船敏郎)に患者を診るように言われる。そこは貧困から医療費が払えない庶民をタダで診療する幕府直轄の診療所だった。一刻も早く退出したい保本は診療もせず酒浸りとなるが、別棟にいる娘(香川京子)の病状を巡り赤ひげの医師としての眼力を見直す。
蒔絵師の六助(藤原鎌足)の臨終を看取り、職人佐八(山崎努)の看病をするうち徐々に「病気の原因が貧困と無知からくる」という赤ひげの言葉に吸引されて行く。最初の患者が岡場所から引き取った少女おとよ(二木てるみ)だった。
「医は仁術」を実践する理想の老医師と若いエリート医師の交流を通して、現代の医療制度への警鐘とも受け取れる内容。<人間の死と向き合い尊厳を改めて問う>黒澤作品共通のテーマを、戦後日本映画のピーク時に黒澤組が渾身の力を籠めて完成させた。その後5年のブランクがあったのも頷ける程、隅々まで行き届いた作りである。
出演陣も若大将シリーズで大スターとなった加山雄三と内藤洋子のコンビが新鮮だが、それ以外はお馴染みの芸達者達。何れも黒澤明に選ばれた人達だ。
大女優・杉村春子、田中絹代を始め団令子、香川京子、桑野みゆき、根岸明美など枚挙に暇が無い。男優も志村喬、笠智衆、東野英治郎、三井弘次、左卜全、渡辺篤が夫々見せ場を作ってくれる。秀逸だったのは二木てるみと頭師佳孝の2人の子役。
ただ「赤ひげ」が強きを挫き、弱きを助け、力もあり、欲が無い理想の人間過ぎて、現実味に欠けてしまう。ヴェネチュア国際映画祭の男優賞作品なのだが...。


『用心棒』 90点

2006-09-11 09:46:04 | 日本映画 1960~79(昭和35~54)

用心棒

1961年/日本

時代劇の常識を覆した画期的な作品

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 90

ストーリー ★★★★☆90点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆90点

ビジュアル ★★★★☆90点

音楽 ★★★★☆85点

黒澤明監督の時代劇娯楽大作。円熟期に差し掛かった三船敏郎の代表作でもある。「七人の侍」と並んで、後に海外でリメイクされ、類似作品も多く作られた。何より大切な観客を楽しませる要素であるストーリー・アクション・映像美を全部満足させてくれるからだろう。特に日本映画の常識を覆した衣装・美術・殺陣・音楽をリアルに創造していて、モノクロ映画ならではの映像美を作り上げている。
黒澤組の面々が総出演しているが、ストーリー優先で有名俳優でも殆どアップで写していないし、メイクで素顔が分からないヒトも多い。それでもワン・カット毎にイキイキとした演技が見られるのは黒澤明監督ならではの手腕なのだろう。


『男はつらいよ』 75点

2006-04-16 12:44:07 | 日本映画 1960~79(昭和35~54)

男はつらいよ

1969年/日本

人情喜劇の原点を見た

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 75

ストーリー ★★★★☆75点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆75点

音楽 ★★★★☆75点

山田洋次原案・監督の寅さんシリーズ第1作。といっても2作目があるという前提で作っていないので、ストーリーは完結している。レギュラーが皆若くて元気がある。当時の柴又の風景も懐かしく時代を感じさせられる。寅さんも荒っぽくて如何にも向こう見ずなお兄ちゃんとして描かれているが、感激やで情に熱い後の寅さん像も垣間見られる。
寅さんの幼な馴染み・マドンナ役の光本幸子が、御前様の娘で20年振りに会い一目惚れするシーン、兄妹が再会するとき、博と結婚すると言われ思わず頷くとき、博の父親(志村喬)の挨拶に感激して飛びつくシーンなど寅さんの表情が見逃せない。博の父親に志村喬を配するなど単なるドタバタ喜劇になっていない工夫に、人情喜劇の原点を見る思い。


『男はつらいよ・寅次郎夕焼け小焼け』 80点

2006-04-14 09:47:15 | 日本映画 1960~79(昭和35~54)

男はつらいよ・寅次郎夕焼け小焼け

1976年/日本

芸者ぼたんの艶っぽさ

プロフィール画像

shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆75点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆80点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆75点

シリーズ17作目でマドンナに芸者ぼたんの太地喜和子と日本画家の大家・池ノ内清観の宇野重吉の物語で、舞台は兵庫県・竜野。太地喜和子は芸者役を演じたら右に出るモノはいないのでは?艶っぽくて、惚れた男にはトコトン尽す男の理想像に同じ様な性格の寅さんが絡む可笑しさ。
多少ドタバタするが桜井センリと宇野重吉の息子寺尾聡が彩りを添える。名シーンの清観と初恋のひと岡田嘉子の2人だけの場面を一層際立たせていた。