人生に疲れたらスペイン巡礼
飲み、食べ、歩く800キロの旅 小野美由紀(著)2015年3月発行
20年以上も前になりますが、スペイン西部の端の方にある大聖堂
「サンティアゴ・デ・コンポステーラ」のことを知りました。
それ以来、フランスからピレネー山脈の国境を越えてスペイン北西部を
巡礼する旅に何故かとても惹かれ、ずっと気になり続けていました。
ただ、当時は、まだ彼の地の情報が少なく、自分の体力はもちろん、
時間的にも絶対無理だな、と諦め、密かに憧れていただけ。
でもここ数年、本書を始め、N◯KBSでも巡礼旅に密着したドキュメンタリー
を放送したり、雑誌でも取り上げられることが多く、巡礼のルート案内や
巡礼宿(アルベルゲ)のこと、食事のことなど、比較的詳しく知ることが
できるようになっています。
これが、もう少し若い時ならな〜、、、とチョッと恨めしくもあります。
実際、高齢でも巡礼する欧米人はいますが、夫婦だったり娘や息子と一緒
だったりと、だいたい相棒(付き添い)がいるみたい。
現実的に、薬が必要な体で言葉も通じず、険しい巡礼道中、万が一に
たった一人で対処できるのか? なかなか難しいですよねえ。
と、憧れ続けて諦めた母の長年の想いは尽きません(笑)
で、本書は学生時代から世界を旅し、就職後、挫折を味わった著者が
思い切ってサンチャゴ巡礼の旅に出発し、巡礼の道のこと、泊まった宿、
通った町や村、食べ物飲み物、巡礼者との交流、など彼女が経験した
巡礼中の諸々が書かれています。
巡礼を検討中の人はとても参考になるし(情報としてはちょっと古いかも)、
そうでない人でも興味深く読めると思います。
誰にでも、悩みはあるし、旅として興味もありますからね。
お遍路と同様、世界中から巡礼者が押し寄せている現在は昔の巡礼
の姿とは違ってきていると思いますが、一人一人が悩みを抱えつつ、祈り、
荷物を背負い、足の痛みに耐え、皆が、ただひたすら先を目指し歩く、
サンチャゴ・デ・コンポステーラへ・・・。中世の昔から今も変わりなく。
雨や風、暑さ寒さ、辛いことがあっても、大自然の中を自分の足で
歩きながら、体で感じることができて、共感し合える人とも出会え、
道中に美味しい食事や美味しいワインも味わえるなんて、魅力的です。
できることなら体験してみたかったなあ。
本書のあとがき
— 落ち込んでいたなら元気に、楽しい人生はもっとハッピーに。それが
この道がもたらしてくれる不思議な作用だ。それはけっして、この道が
パワースポットだからとか、スピリチュアルな効能を持った場所だから
というわけではない気がする。この道にパワーを与えているのは、そこ
を通る「人」だ。そこに暮らす人、道を支えるホスピテイラや協会の人々、
そして、千年の時をかけて、この道を歩いてきた、おびただしい数の
「仲間」たち。
—
わがまま母
追:最近では「巡礼路の最後の100キロだけ歩く」または、バス利用し
巡礼路のロマネスク教会を訪れながらサンチャゴにお参りする、
なんてツアーもあるようですよ(諦めたはずなのに調べてる 笑)
本書案内文
_ もしあなたが、長い人生の中で、数日間もしくは数十日間を個人的な楽しみ
のために確保できるなら、または、人生につまづき、絶望しているのなら。
もしくはお金をなるべくかけずに行ける、刺激的な旅先を探しているのなら。
迷わず本書を手にとって欲しい。「はじめに」より
カトリック三大巡礼路の一つ、カミーノ・デ・サンチャゴ。
イタリア、フランス、もちろんスペイン、東欧諸国まで、さまざまな国の
人々がこの道にやってき、その数は増え続けている。
100キロから証明書をもらえ、全ルートは800キロ。ガリシア地方にある
大聖堂を目指す。やるべきことはたったひとつ「歩くこと」。
アウトドアとしても、旅としても面白い。信仰を問わず、誰にも開かれている
この道の醍醐味を伝える。
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