ビリー・リンの永遠の一日 ベン・ファウンテン(著)2017年1月発行
案内には
アメリカ人は子供なのだ。
大胆で、誇り高く、自信たっぷりの。
19歳の一時帰還兵が見た、祖国アメリカの途方もない狂騒。
21世紀の戦争小説。
とあり、
書評には
イラク戦争版『キャッチ=22』と称されるこの小説は、面白い。
面白過ぎるかもしれない。
主人公は19歳。彼の所属するブラボー部隊の生き残りは、全米のヒーローで、
戦意高揚のためイラクから一時帰国し、アメフトのハーフタイムショーに駆り出される。
歌うのはビヨンセ。空には花火、二日後には戦場に戻るのに、ステージではゴージャスな
平和がふり立てたお尻を戦争の悲惨な下腹部に押し付けてくる。作者は戦争を経験
していない。そのことを賭け金に、現代の「平和と隣り合わせ」の戦争の真実を問おうと
する。そこにこの小説の真価がある。(加藤典洋)
とある。
確かにその通りではあるのだが、、、
何かわからないが違和感を覚え、読み進むのに時間がかかってしまった。
訳者あとがきが、この小説をうまく解説しており、私が読み進む助けとなったので
一部、転記しておく。
—
そもそも主人公のビリー・リンはテキサス州の田舎町出身の労働者階級のごく平凡な家庭で
育ったのだが、高校卒業直前に、姉のキャサリンを裏切った男の車を叩き壊してしまう。
そこで訴追を免れるため軍隊に入り、ブラボー部隊の一員としてイラクに送られることに。
学校でまともに学んでこなかったビリーだが、入隊後、知的な男シュルームと出会い、
本により知の世界に目を開かされる。が同時に戦争の厳しい現実も目の当りにする。
多くの兵士たちはビリー同様、社会に居場所がないため軍隊に入り、なぜイラクに行き、
何をするのかもわかっていない。そんな兵士達を戦争は行き当たりばったりに殺して行く。
シュルームもアル・アンカサール運河の戦闘で戦死。
彼の死の光景がビリーの心に取憑く。
この時の戦闘に、たまたまフォックスニュースの撮影クルーが居合せ、映像がアメリカで放映
されたことにより、ビリーたちブラボー分隊の生き残り8人はアメリカで英雄視されるようになる。
政府は彼らを一時帰国させ、各地でパレードなどを行い、戦意高揚のため利用する。
おまけに、ハリウッドから映画プロデユ−サーまで来て、映画化をもちかけたり、
それで儲けたい者達の思惑が透けてみえる。
そんな風に突然英雄視されることに、ビリーは違和感を抱かずにはいられない。
略
権力者とメディアの壮大などんちゃん騒ぎを分析する作者の鋭利な目が本書を傑作にしている。
悲惨な戦闘に巻き込まれ、戦友の死も目の当たりにしながら、英雄扱いされて連れ戻された
ビリーたち。彼らを出迎えるアメリカ側の無神経さ、金儲け主義。それがいかに戦場の兵士
たちの現実とかけ離れているか。こうしたことをたっぷりの皮肉とユーモアとともに描き、
戦争自体のバカらしさをあばき出している。
略
—
戦場と狂騒に巻き込まれた19歳の兵士の一日の心情を細かく描いた小説として、
興味深くはあったが、
近年まれにみる「偉大なアメリカ小説」とか「感動的長編」といわれると・・・
私にはよくわからない、というのが正直な感想。
この小説を読み、「アメリカ人は子供なのだ」と評するのは簡単。
でも、だったら、今の世界で、大人ってどこにいるの?とも思うしね。
感動が味わえるかどうかは個人差があると思いますが、
複雑な心境にはさせられるはずです。
わがまま母