裸の華 桜木紫乃(著)2016年6月発行
以前、同著者の『霧(ウラル)』と『起終点駅(ターミナル)』を読んでいる。
『起終点駅』は個人的にはピンとこなかったが、『霧』は根室を舞台にし
読み応えがある小説だったと記憶している。(健忘症の母には珍しく)
北海道生まれの著者だけに、北海道を舞台にしている小説が面白い。
本書も札幌の繁華街ススキノが舞台となっていて、
登場人物も、主人公の「ノリカ」を始めとし、ほぼ地元出身の男女の物語。
元ストリッパーの「ノリカ」は、膝のケガで思うように踊れなくなった
ことを機に、小屋巡りのダンサー生活を諦め札幌に戻ってくる。
札幌の街で店を開こうと決め、店舗を探し不動産屋を尋ね、
運良く雑居ビルの2階に店舗を見つける。
その時知り合った不動産屋の営業「竜崎」の助力により、
若いダンサー二人も見つけることができ、
更に、実はかつて銀座で有名なバーテンダーだったらしい「JIN」こと
「竜崎」も加わり、ダンスシアター「ノリカ」が開店する。
小さな舞台ながら、かつて自分がやりたかったダンスのショーへの想いを
若い二人に託そうと必死に努力する「ノリカ」。
そして、期待に答えようとする若い二人のダンサー。
完璧なダンスショーを目指し、キツいトレーニングにも耐え、
ノリカの想いに応えようと頑張る若い二人の姿も素晴らしい。
そこに、謎多きバーテンダーの「JIN」が絡み面白い展開になっていく。
とにかく、ダンス中心の日々を過ごす女三人の関係性が良かったし、
「ノリカ」のダンスへの向かい方が、心身とももう完全にアスリートで、
その迫力に圧倒され、引き込まれずにはいられない。
結果的には、ようやく軌道に乗り始めた店を、
若い二人の将来のためを思い閉めるという選択をし、
彼女自身も自分の道を進むことになるのだが、
ノリカが葛藤しながらも閉店を決断する過程が
とても潔くて、拍手してしまいたくなる。
あまり馴染みのない世界が、興味深く迫力満点に描かれた面白い小説、
その内容に比し、表紙画が気持ち悪く感じたのは、私だけかなあ?
それとも、この画こそが著者が描きたかった世界観を表しているのか?
わがまま母