熊と踊れ 上・下
アンデシュ・ルースルンド&ステファン・トウンベリ(著)2016年9月発行
ルースルンドはジャーナリスト活動を経てスウエーデンのベストセラー作家と
なり、トウンベリも作家兼シナリオライター。
この二人が協力することにより、暴力と家族の関係、問題を根底とし
実話をもとに描かれた犯罪小説。
本来なら、母の好みのジャンルではないが、
ほぼ実話らしいという点、そして以前読んだ
スウエーデン作家の『ミレニアム』シリーズが面白かった、
ということで、苦手な犯罪小説ながらもチャレンジしてみた。
実際、すごく読み応えがある。
スウエーデン史上、最悪の犯罪事件の経緯が克明なタッチで語られていき、
まるで読者本人が目撃しているような感覚にさせらるほどリアルで迫力ある。
銀行襲撃で金を奪うことを目的に、
それを完全犯罪とするための緻密な計算、周到な準備、
グループをまとめるリーダーシップ、予行演習、、、
それらの警察を欺く驚くほどの完璧さには感心させられる。
が、本書の読みどころは、それらの完全犯罪の解明だけではなく、
犯人たちが、何故、そのような犯罪を犯すことになったのか・・・
それも大きなテーマなのだろう。
家庭という密室のなかの暴力、暴力から逃れることの出来ない環境で
育つしかなかった兄弟、、、
暴力に支配され成長した子供たちは、人と社会との関係をどんな風に築き、
どんな大人になっていくのか・・・
結果的には犯罪者となってしまう息子たちとその父との確執、
兄弟それぞれの心の軌跡が詳細に表現されている。
一方で、犯罪グループの長兄のが弟を気遣う姿に気づいて以来
密かに興味を抱き彼らを捕らえようとする警部もまた、
家族の暴力による傷から立ち直れずにいた。
暴力が人の心身に与える傷の深さ、犯罪への関係を探ろうとしている
意欲的な小説だ。
彼らの犯した犯罪行為は許されるものではないし、大きな罪である。
が、しかし、彼らが生まれながらの悪人ではない。
本書で描かれている限りは、父の暴力におびえる過酷な子供時代も含め、
むしろ優しく兄弟を思いやる責任感のある人間なのだ。
その事実がなんともやりきれない。
ラストに向かい、どんどん切なく悲しくなっていった。
元ジャーナリストの著者は、犯罪小説の形をとりつつ、暴力と父と息子
家族の問題を探りたかったんだろうな〜。
わがまま母
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緻密かつ大胆な犯行で警察を翻弄し、次々と銀行を襲撃して行くレオたち。
その暴力の扱い方は少年時代に父から学んだものだった。
かつて彼らに何がおこったのか。
そして今、父は何を思うのか・・・
過去と現在から語られる“家族”の物語は、轟く銃声と悲しみの叫びを伴って
一気に結末へと突き進む。
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