遊び人親子の日記

親子で綴る気まぐれ日記です。

転生夢現

2008年04月23日 14時08分42秒 | 読書
 
   転生夢現  上・下   莫言(モウイエン)

 作者紹介の覧によると、
 1955年、山東省の農民の子として生まれ、幼くして文革にあい、小学校を
 中退。兄の教科書や旧小説で文学に目覚める。・・・
 とあります。

 中国の暗黒で悲惨な(注:私が勝手に思っている)時期に幼年、青春時代
 送っているんですね。
 私が今まで読んだ同時期の中国出身作家は、すごい悲惨な体験をしている
 のですが、元々の生活環境というか、家庭環境がインテリ出身でした。

 例えば、「貴門胤裔」のイエ・グワンチンは、清朝貴族の末裔だったし、
 「千年の祈り」のイーコン・リーも親や祖父が学者や研究者でした。
 「ワイルド・スワン」の作者の家族も元エリートだった記憶が、、、。
 そういう出身ゆえに、皆、地方に下放されたり、つるし上げにあったり
 悲惨な目に合ったんですが、、、。

 この小説を読むと、当時の中国社会が、その悲惨さ、残酷さでは
 何処にいても、どんな階級にあっても変わらなかったんだ、ということが
 嫌でも認識させられます。
 以前、「マオ」を読んでいて、こみ上げた怒りの記憶が、また甦ってきて
 しまった。

 小説の中身は、
 西門屯に住む、地主の西門ナオ(難しい漢字)という働き者で、
 穏やかな慈善家だった人物が主人公なのですが、、、。
 彼は、ある日突然、悪徳地主として銃殺されてしまいます。
 それ以後、彼は恨みを抱きつつ、ロバ、牛、豚、犬、猿と転生を続け
 残してきた家族や関係あった人々との、憐れで不思議な邂逅を果たし
 ながら、動物の体のまま、酷い現実と関り続け、
 20世紀後半の中国の紆余曲折を生き抜き、やがて人間界に戻る、という話。

 確かに、逞しく、生命力ある農民の姿が表現されてはいるのですが、
 読んでいて、気分が悪くなる箇所が多々あり、個人的には
 「もう、いいかな~」という感想。

 映画化され、ベルリン映画祭でグランプリをとった「赤い高粱」もこの作家
 の86年の作品で、翻訳も沢山されていて、現代中国の最先端を行き、
 最もノーベル賞に近い存在だそうです。

 それにしても、学校教育も受けられず、独学でこれだけの小説を描くって
 好みは別として、凄い作家だなー、と単純に感心します。

    わがまま母
 
コメント
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