転生夢現 上・下 莫言(モウイエン)
作者紹介の覧によると、
1955年、山東省の農民の子として生まれ、幼くして文革にあい、小学校を
中退。兄の教科書や旧小説で文学に目覚める。・・・
とあります。
中国の暗黒で悲惨な(注:私が勝手に思っている)時期に幼年、青春時代
送っているんですね。
私が今まで読んだ同時期の中国出身作家は、すごい悲惨な体験をしている
のですが、元々の生活環境というか、家庭環境がインテリ出身でした。
例えば、「貴門胤裔」のイエ・グワンチンは、清朝貴族の末裔だったし、
「千年の祈り」のイーコン・リーも親や祖父が学者や研究者でした。
「ワイルド・スワン」の作者の家族も元エリートだった記憶が、、、。
そういう出身ゆえに、皆、地方に下放されたり、つるし上げにあったり
悲惨な目に合ったんですが、、、。
この小説を読むと、当時の中国社会が、その悲惨さ、残酷さでは
何処にいても、どんな階級にあっても変わらなかったんだ、ということが
嫌でも認識させられます。
以前、「マオ」を読んでいて、こみ上げた怒りの記憶が、また甦ってきて
しまった。
小説の中身は、
西門屯に住む、地主の西門ナオ(難しい漢字)という働き者で、
穏やかな慈善家だった人物が主人公なのですが、、、。
彼は、ある日突然、悪徳地主として銃殺されてしまいます。
それ以後、彼は恨みを抱きつつ、ロバ、牛、豚、犬、猿と転生を続け
残してきた家族や関係あった人々との、憐れで不思議な邂逅を果たし
ながら、動物の体のまま、酷い現実と関り続け、
20世紀後半の中国の紆余曲折を生き抜き、やがて人間界に戻る、という話。
確かに、逞しく、生命力ある農民の姿が表現されてはいるのですが、
読んでいて、気分が悪くなる箇所が多々あり、個人的には
「もう、いいかな~」という感想。
映画化され、ベルリン映画祭でグランプリをとった「赤い高粱」もこの作家
の86年の作品で、翻訳も沢山されていて、現代中国の最先端を行き、
最もノーベル賞に近い存在だそうです。
それにしても、学校教育も受けられず、独学でこれだけの小説を描くって
好みは別として、凄い作家だなー、と単純に感心します。
わがまま母