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京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

「子どもにやさしいまちづくり」に取り組む自治体

2011-09-20 05:31:46 | 受験・学校

今日は少し大阪維新の会の教育基本条例案の話から離れて、昨日、おとといと参加した「地方自治と子ども施策」全国自治体シンポジウム2011in泉南の話を書きます。といっても、そんなに長々とは書けないのですが。

このシンポジウム、今年で10回目だそうですが、日本各地で子どもの権利条例の制定や、さまざまな新しい子ども施策に取り組む自治体が集まって開催されます。ちなみに第1回は、私はかつて仕事をしていた兵庫県川西市。子どもの人権オンブズパーソン条例のある自治体ですよね。

特に今年のシンポジウム、1日目の全体会では「東日本大震災後の社会と子ども支援」がテーマになりました。災害ボランティアコーディネーターの方、日本ユニセフ協会の岩手県の事務所の方、被災地で高校生のボランティア活動をサポートした兵庫県立舞子高校の教員、そして開催地・泉南市長の4人が、東北の被災地域での子ども支援の取り組みについて意見交換をしました。また、全大会に先だって、地元の子どもたちが戦時中の疎開をテーマにした劇を上演しました。この劇、なかなかすごかったです。

2日目の分科会ですが、「子ども条例の制定」「子どもの相談・救済」「子どもの居場所づくり」「子どもの参加とその支援」「次世代育成支援行動計画における乳幼児期支援」「子ども虐待への対応」「子どもの貧困・格差と自治体施策」の7つのテーマに分かれました。このうち「子どもの貧困」は、開催地のほうで検討して選んだテーマだそうです。

ちなみに、この「子どもの貧困」の分科会では、大阪府立西成高校の「反貧困学習」の取り組みや、大阪府教委の高校中退未然防止の取り組みなども紹介されています。また、「子ども虐待への対応」では豊中市・泉南市の取り組みや大阪府のスクールソーシャルワーカーからの報告、「次世代育成支援行動計画」の分科会では泉南市の公立幼稚園の子育て支援、高槻市の就労支援型預かり保育、堺市の待機児童対策などが報告されました。

このほか、「子ども条例」の分科会では箕面市の子ども条例の実施と、現在、泉南市が制定に向けて準備中という報告が行われています。また、「子どもの相談・救済」の分科会では、兵庫県宝塚市の相談・救済事業の報告、「居場所づくり」では堺市の冒険遊び場を運営するNPOの報告がありました。

私は第4分科会のコーディネーターが担当だったのですが、ここでは、たとえば学校の新しい校舎を建設するにあたって子どもの意見を聴くワークショップを開いた愛知県犬山市とか、子ども条例制定に向けて3年間、さまざまな形で子どもの意見を聴く場を設けた三重県子ども局からの報告がありました。また、今、条例制定も含めて子ども施策を検討しよう、その一環として子どもたちの意見を聴く場を設けようと準備中の長野県健康福祉部ですとか、すでに3年近く子ども会議を開き、市長への提言などをまとめた長野県茅野市からの報告もありました。そして午前中は、兵庫県立舞子高校環境防災科の高校生3人と教員による、東日本大震災での被災地ボランティア体験の報告でした。

いかがですか? 関西圏に限定してみても、各自治体ともに、現場レベルではいろんな子ども施策に取り組んでいますよね。「ほんとうの首長や議員の仕事は、コストカットや人員削減の話ばかりでなく、こうやってまじめに住民、特に子どもやその保護者に向けてさまざまな取り組みをしている自治体行政職員を、財源や条例制定などの面からバックアップしていくことではないのか?」とすら、私などは言いたくなってしまいます。

このシンポジウム、今年の全体テーマは<「子どもにやさしいまち」の実現>。このテーマは今、ユニセフなどが中心となって国際的に子どもの人権保障の観点から進められている取り組みですし、このシンポジウムに参加する自治体関係者や研究者、NPO関係者などの共通した課題でもあります。「世の中にはこんな自治体もあるんだ」ということや、「子どもにやさしいまち」の実現に向けて本気で取り組んでいる自治体職員・首長・議員・研究者・NPO・市民もいるんだということ。それを知るだけでずいぶん、自分の暮らす自治体の在り方が少し違って見えてくるのではないか、と思います。

ちなみに、今回は開催地ということで、大阪の人権教育関係の方も、学校現場の教員や保育士、自治体職員(特に教育委員会)関係、教育NPOの方などが参加されました。ですが人権教育関係の研究者は・・・・。「教育」と直接名前はついているわけではないのですが、どれも「子どもの人権」の保障という観点や「子どもが育つ・学ぶ環境の整備」という観点から見たら、重要なテーマばかりだと思うのですが・・・・。今後は積極的に、大阪の人権教育の関係者(特に研究者)に声をかけていく必要がありそうです。

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