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京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

大阪府PT試案への批判(1) 学校における子どもの人権侵害防止事業をめぐって

2008-05-03 22:22:01 | 受験・学校

いま、何かとマスメディアなどで取り上げられている大阪府の財政再建に関するプロジェクトチーム試案(いわゆる「PT試案」)については、その本文と添付資料一式が、大阪府庁のホームページから入手することが可能です。

私はそこから、今日、本文と大阪府教委関係の添付資料を見ました。それをみて、「これはおかしいだろう?」という項目のいくつかに気づきました。

まず、今まで大阪府教委が行なってきた事業のなかに、「学校における子どもの人権侵害防止事業」があり、2007年度で414万6千円、2008年度の当初予算案で398万1千円の予算をつけていたのを、PT案の添付資料では、「事業効果を検証し、見直しを求めるもの」に位置付けた上で「今年度で廃止」としています。なおかつ、この事業については、添付資料と本文の両方を見比べますと、「エ 上記以外(府が独自に実施しており、事業量削減の裁量があるもの)=4割削減を目安とした個別精査」という位置づけになっています。

さて、この事業の中身なのですが、学校における子どもの人権侵害防止というのは、たとえば広報・啓発などを通じて、学校内でのいじめや各種のハラスメント、暴力などを防ぐとりくみが考えられます。また、その被害を受けた子どもたちに対する電話・面接相談や具体的なケース対応など、何らかの救済活動などを行なうことも考えられます。きちんと確かめたわけではないのですが、私の推測では、おそらく、この事業の予算をつかうことによって、府教委が民間相談機関と連携しながらこの間すすめてきた「被害者救済システム」などのとりくみを実現させてきたのではないでしょうか。

もしも私の推測どおり、この事業にもとづく形で学校における子どもの人権侵害に関する相談・救済システムが設置されているとすれば、この事業がなければ、子どもが命の危険にさらされるケースもある、ということにもなりかねません。そのように考えると、本来であればこの事業は、「イ 個人給付、府民の生命に関わる緊急性・重要性の高い事業」に位置づけ、「制度内容等を個別に精査」して財政削減案を検討する(=場合によれば「全く削減しない」ということも含めて)べきものではなかったのか、ということになります。

また、たとえ「エ 上記以外」に位置付けていたとしたも、「学校における子どもの人権侵害防止事業」について、府のPT試案を作った人々は、どのような個別精査を行なったのでしょうか。また、「4割削減を目安とした個別精査」が方針であるのに、なぜ「全廃」なのでしょうか。

さらに、「大阪府子ども条例」(2007年4月施行)には、次のような条文があります。

(子どもを擁護する取組の充実)

第九条 府は、子どもの尊厳を損なう身体的又は精神的な暴力等から子どもを擁護するための取組について、すべての子どもに等しくなされるべきであるとの認識の下、国、市町村、学校等、事業者及び府民と協力して、その充実に努めるものとする。

この条文を読めばわかるとおり、大阪府には、学校内外における身体的・精神的な暴力等からの子どもの擁護のための取り組みを学校や府民・民間団体等と協力して、充実させるべく努力する義務があります。とすれば、今まで大阪府教委が民間相談機関などと連携して被害者救済システムをつくるなどの方法で、「学校における子どもの人権侵害防止事業」を行なってきたのであれば、この予算を削減することまでは条件次第ではまだ認められても、全廃することは、子ども条例の違反ということになるのではないでしょうか。

以上のような理由から、この「学校における子どもの人権侵害防止事業」に関するPT案の中身は、「そもそも、予算削減の提案の対象とすべきかどうか」という次元から問い直されてしかるべきものであると考えます。

また、私としては、この事業については、「そもそも、予算全廃はすべきではないし、削減についても、そういう提案を行なうにふさわしい理由を、まずはPT案の作成者側が府教委に対して説明すべきものである」ケースだと考えます。

なお、PT案を読めば、おそらく、今後もこうした事例がいくつもでてくるのではないかと思われます。したがって、そのたびごとに、このブログで情報発信を続けていきたいと思います。

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