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京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

「普通財産」という魔物

2006-12-12 12:15:21 | 国際・政治

今後、青少年会館条例が廃止されたあと、大阪市長の方針では2007年度、大阪市の今の青少年会館施設は「普通財産」に位置づけられ、市民の利用等に使われることになります。だから、「なんだ、来年も青少年会館、あるじゃないか」という風に誤解をしている人がいるようです。しかし、この「普通財産」というものは、「魔物」です。

具体的にいえば、青少年会館が大阪市の条例に位置づけられた社会教育施設であれば、これは地方自治法上、自治体がその事務・事業を執行するために直接使用する「行政財産」として位置づけられます。したがって「行政財産」であれば、地方自治法等関連法令により貸付、売却、譲渡等がそう簡単にできないようになります。

しかし青少年会館が「普通財産」になれば、「行政財産」に関する管理などに関する法的規制よりははるかにゆるやかになりますから、貸付、売却、譲渡等は、行政当局の財産運用の方針次第、ということになります。

ここがまさに「魔物」という部分です。つまり、今後当面、青少年会館の既存施設等を「市民が幅広く利用可能な施設にする」といったところで、「普通財産」ですから、行政当局の財産運用の方針次第では、いつ貸付・売却・譲渡等の対象になるかわかりません。

そうすると、これから青少年会館の既存施設等を市民の子育てサークル等が日々の活動場所として利用したり、あるいは、市民の自主的な青少年活動サークルなどがここで学習会やイベントを開く形で利用していても、ある日突然、「ここはいい立地条件だし、売りに出して売却益を稼いで、大阪市の赤字財政の穴埋めに使う」と言い出したら、この先、どうなるかわからない、ということです。

ただ、今後「いい立地条件だし」というようなことで青少年会館の既存施設等を売却に出したら、「地対財特法期限後の事業等の調査・監理委員会」から市長方針を出すに至るまでの大阪市役所内での検討は、かなり「問題だ」ということになります。なんせ、青少年会館は「偏在」しているとか、「利便性がわるい」とか、その立地条件の悪さを問題にしてきたわけですから。

いずれにせよ、青少年会館条例が「廃止」された段階で、従来のような青少年会館事業は「終わり」ということになります。市役所側から市議会に条例廃止案が出てくるまでまだもう少し時間がありますから、問題にすべきことはどんどん、いろんな形態でいっていきましょう。

ちなみに、大阪市議会内に議席を占めている各会派は、例えば社会教育・生涯学習分野や社会福祉分野での行政財産の普通財産化という動向について、「反対」はしないのでしょうか? 簡単にいえば、これまで大阪市が多額の税金を投入して整備してきた施設などを、これから「切り売り」していくだけですからね、この施策って。しかも、今年度予算編成に際して、市役所側に「市民利用施設の拡大を」ということを求めていた会派もあるようですから、市議会各会派はこの青少年会館の普通財産化について、それなりの批判等をしなければおかしいのではないでしょうかね。