角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

文化とメシのたね。

2014年10月29日 | 地域の話




今日の草履は、宮崎県日向市からお越しくださったご家族のオーダー草履です。お土産分を含め5足のご注文のうち、「紺系おまかせ」がこちらになります。お洒落な紺ベースは新柄ですし、組み合わせの紺も無地ではなくさりげないプリントが施されています。気に入ってくださることを願いながら、全品揃って本日の便で出発しました。明後日の到着で~す(^^)/

秋田県内各地で展開されている国民文化祭も、もう残すところ数日限りとなりました。現在の角館は「まちなかミュージアム」と称する企画展で、街中いたるところに絵画や写真などが展示されています。中学校美術部や高校写真部、あるいはセミプロの絵画もあって、地元住民も行ける人はどんどん巡ってみるといいですね。

そして武家屋敷通り樺細工伝承館で開かれているのは「秋の伝統工芸展」。こちらは明らかにプロの技で、製作者協会所属の職人さんや問屋会所属の企業が新作を展示しています。
昨日の朝刊にこの展覧会に絡む記者コラムが掲載されていました。タイトルを「最少」とした記事の内容は、出品数の少なさと開発力の乏しさを嘆くものです。講評で審査員の代表が『言葉を失うほどショックだ』と切り出したそうですから、確かにその通りだったのでしょう。

さらに記事には主催者の話として、「現在の業界売上は35年前のピーク時と比較して三分の一。需要と後継者の不足により全国的に伝統工芸が低迷する中で、職人が自らの技術だけで生活を支えるのは厳しい。伝統技術継承という意味合いからも、若手をはじめ職人たちが製作に励むことができる環境を作るのは、業界と行政の役目だ」とありました。

業界売上のピークとされる35年前は、私が樺細工の世界に入る二年前のことです。当時の産地年商はおそらく20億円前後と思いますが、その半分を最大手一社が占めていました。その最大手はピーク時から数年で倒産します。主な要因は、多産地商品との競合で無理な価格設定に固執したためでした。
こうした過去を見ると、そもそも35年前の売上が異常だったと思っています。極論ですが、樺細工という産業は何十億円も売ってはいけないと思っているです。

職人がしっかりメシを食える産業というものは、必ずしも売上規模だけでは計れません。今こうして草履を編む日々を送りながら、作り手がしっかり生活できる環境の大切さをしみじみ感じますよ。国民文化祭では様々な作品が展示されています。その中で「メシのたね」に適うものがいくつあるでしょう。商売にすれば文化が廃れるのか、文化では所詮メシが食えないのか。伝統工芸樺細工が、角館を代表する文化であることだけは間違いありません。
コメント (2)
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