角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

明日再開です。

2009年04月13日 | 家族の話
このたびの祖父母同日逝去による一連の仏事も、一昨日の初七日まで滞りなく相済みました。今日一日を残務整理に充て、明日14日から公開実演並びに展示販売を再開させます。

それにしても、目まぐるしい一週間でありました。急逝の日、祖父母は共に介護施設のショートステイを利用していました。祖母の急変を知らされたのが4日から5日に日付が変わってまもなく、カミさんのケータイです。私が病院へ駆けつけたときは、すでに医師から臨終宣告を受けた後でした。

深夜にもかかわらず隣家や近い親類が集まり、夜明けを待って葬儀社の手配。仏事日程など詳細が決まりひとつ落ち着いた5日夕刻、同じ介護施設にいた祖父の急変です。祖母から遅れること15時間余り、満91歳と92歳の老夫婦はふたり仲良く祭壇の前に横たわることとなりました。

家族や周囲から「じっちゃ」「ばっちゃ」と親しく呼ばれ、角館白岩地区でも有数の「長寿夫婦」でありました。子ども4人、孫9人、ひ孫11人、人として世に遺した功績は多大だったと思います。

葬儀の翌々日、「仏おろし」をしました。「じっちゃ」は「ばっちゃ」の最期を夢枕で知り、『オレひとり残されでも、なんともなるもんでねぇ』と後を追ったとのこと。当初「ばっちゃ」はそれを望んでいなかったものの、今こうしてふたり旅立てたことに、『ホッとしてるぅ』と言ってました。
ふたりの言葉に家族をはじめ親類縁者のすべてが、『良がったなぁ、じっちゃ、ばっちゃ』と答えたものです。

それでも最後の言葉には、『親族ふたりを亡くしたこの年を、みんな充分注意して暮らすように…』と諭されました。喪に服す一年間、些細なことにも注意をはらわなくてはいけませんね。大きな祝宴は遠慮し、目立つことなく静かに暮らす一年となります。

ただ草履実演だけは、静かに目立たずというわけにいきません。これだけは「じっちゃ」も「ばっちゃ」も許してくれるでしょう。
ふたりの棺の中には最愛の孫のひとり、カミさんが編んだ「角館草履」が添えられました。

あらためまして、また明日から宜しくお願いいたします。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

忌中報告。

2009年04月06日 | 家族の話
カミさんの祖母が5日未明亡くなりました。享年91歳。
そして同じ5日夕刻、連れ合いの祖父が後を追うように亡くなりました。享年92歳。
夫婦揃って同じ日同じ時刻に、火葬並びに葬儀を執り行います。事故や事件ならいざ知らず、こんなことってあるもんでしょうか。

今わが家は、ふたりの葬儀に生活を集中しています。しばらくのあいだ、公開実演並びに展示販売を中止させていただくことになりました。ご理解を賜りたく存じます。

連れ添って70年余り、旅立つ今もふたり寄り添っています。何十年後かの自分を想うとき、かくありたいと願わずにいられません。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

守るべき平和。

2009年04月04日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡円〕
赤地に黒のまだらプリントをベースに、合わせはエンジです。
爬虫類を想わせるベース、私なんぞは大の苦手とする生き物なんですが、こうして草履になると、まして自分で編んだものだと不思議に愛着が湧くもんです。面白い配色の平生地はこちらです。




朝からヒヤヒヤものだった「テポドン」、どうやら今日は発射しなかったみたいですね。いっとき日本政府が誤認報道を流して騒ぎになってましたが、それだけみんながピリピリしている証しでしょう。
短距離走のスタートで、『位置について、よーい…』のあとに誰かが風船を割ったら走り出しますよ。

栃木県にお住まいの常連さんから、『今日あたり北朝鮮からミサイルの発射がありそうです。十分気をつけてください』とのメールをいただきました。お気遣い誠に嬉しいのですが、どうやって気をつければイイのかが分らないんですよねぇ。山間の国道を走っていると、ときに『落石注意』の看板があります。これもどうやって気をつけるかがイマイチ分りません。

「今日の草履」は、秋田市からお越しのおばさまがお持ち帰りです。ご家族連れのこちらは、おばさまと娘さんご夫婦、それに小学生と幼稚園くらいの女の子、合わせて5人のプチ旅行でした。数日前に娘さんご家族が秋田市へ超していらしたそうで、初の週末を角館ドライブでお愉しみです。

小学生のおねえちゃんがどうしても草履を欲しいとのことで、23cmを品定めしていました。そこで私がストックしていた「今日の草履」を持ち出し、『ちょっと変わった配色で面白いでしょ』と手渡すと、それを見たおばさまが『あらっ、あたしにイイんじゃない!?』と飛びついてしまいました。その様子がとても滑稽で一同大笑いです。
結局5人それぞれがお好みをお選びになり、早速今日から履いてくださるそうです。

好天の週末、はじめての角館ドライブ、そこで出逢った草履の配色選びで起こる笑い声。こんなささやかでフツーの幸せを脅かす権利など、どこのどいつにだってあろうはずがありません。

私と誕生日が同じというだけでは許せませんなぁ、かの国のトップ(怒)。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

偉人は面白い人!?

2009年04月03日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡円〕
ピンク基調のうさぎちゃんプリントをベースに、合わせはピンクの流紋プリントです。
色調といいプリント柄といい、文句ナシに可愛い草履ですね。和柄の優雅さ、洋柄の楽しさ、そしてこうした可愛らしさも混じって、角館草履の展示パネルはその特徴を見せるのだと思います。平生地はこちらです。




古今東西「偉人」と呼ばれる人が大勢いますが、そうした人たちの伝記や隠れたエピソードを知るとき、その面白さと言いますか滑稽さに笑っちゃうことがあります。
最近ノーベル賞を受賞した博士の中のおひとりにも、そぶりやおしゃべりに面白い方がいましたね。

昨日のこと、お歳のころは70歳代半ばと思しき老紳士がお越しでした。実演席隣りの入り口から入って見え、『こんにちは~』とお声をかけると老紳士も同じく返してくださいました。そのときのアクセントを聞いて、純粋な日本人ではないことが分りました。日系二世か、もしくは中国系の方で日本に精通している、そんな印象を持ちました。

挨拶の後、展示パネルを眺めたまましばらく黙っていらしたので、あまりおしゃべりは得手ではないのかと思い、私も黙って草履を編んでいました。するといきなり、『いやぁ~、驚きましたよ。こんな綺麗な履物は生まれて初めて見た、この草履はもっと全国に知らせなきゃもったいない。そう、京都の清水寺はゼッタイいいし、東京の若者が集まる場所でも人気になる。そうだ、パリへ出しませんか、日本の品物は評価が高い、ゼッタイ受けますよ。ロシアだってイイですよ、ロシアは日本の製品がとても人気が高いんです』。

おしゃべりが得手ではないどころか、老紳士の言葉はとどまるところを知りません。一瞬の隙をつき、『私ひとりが作っているので、とてもそんなところへ出す生産量なんてありませんよぉ』と言うと、『ダメですよそんなことでは。あなたにはお子さんがいないんですか、娘さんでもイイ。家族でダメなら親類縁者みんなで作ったらイイ、出来れば一族っていうのがイイんですよっ』。

あまりに熱心にお話くださるので、『海外にも明るそうですけど、なにかそうした商いをされているんですか?』とお訊ねすると、『まぁ、シンクタンクですね。あちこち飛び回っている松尾芭蕉みたいなものですよ』。
「シンクタンク」、テレビでときどき耳にする名称ですが、私にはよく分かりません。「ポリタンク」ならわが家にもあるんですけどね。

しばらく熱弁を奮われた後、『これから秋田市の商工会議所へ行かなければならないので、また時間がとれたらお邪魔しますよっ』。
私は挨拶の後、『面白い人もいるもんだなぁ』としばらく老紳士の背中を見ていました。するとくるっとこちらを振り向き、また私に向かって進んできました。
『今気づきました、やっぱりあなたはどこへも行ってはいけない。この草履を見るために人がここへ集まるんですねっ』。

私は思わず、老紳士へガッツポーズを見せてしまいました。私の願いを老紳士が見抜いてくれたことに、これまでとはまた違う喜びを感じたんです。
老紳士はもしかしたら名のある御方かも知れません。「偉人」というのは、どこか面白いもんです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

かっこいい職業。

2009年04月01日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズ25cm土踏まず付き〔四阡五百円〕
紺基調の相撲プリントをベースに、合わせは金です。
先日届いた新柄の中に、また新たな「金」が入っていました。早速相撲プリントに合わせたところ、“かっこいい”草履になりましたね。平生地はこちらです。



「今日の草履」は、埼玉県からお越しのおじさまがお持ち帰りです。『せっかくだから、なにか記念になるものをと思ってね』と、奥様とお孫さんの分もお買い上げくださいました。
お孫さんに、『おじいちゃん、かっこいい!』かなんか言われたら嬉しいですね。

3月15日の「今日の草履」、長女には不評でしたが、本日秋田市からお越しのおじさまが迷いなくお選びになりました。女子高生には分らなくとも、人生経験を重ねたおとなには分るんですよ、この配色の面白さが。
もっとも長女に売れた話を教えると、『そんたごど言った憶えもねーし、どんた草履だったがも憶えてねーがらっ』。まぁ、そんなもんでしょ。

昨日のニュースで、小学生に問うた「就きたい職業」のランキングが報じられてました。特筆すべきは第二位に躍進した「職人」、いわゆるものづくりを指した技術者のことですね。昨今の不況で、手に職を付けたいあるいは付けさせたい親の意向もあるんでしょう。

一昨日のこと、台湾からお越しのお若いカップルに『写真撮ってもイイですか?』と訊かれました。もちろんOKをお伝えすると、女性のほうがニコニコしながら何枚かお撮りです。直後女性が言ったのは、『かっこいいですねっ!』。日本人にもあまり言われたことのない言葉でしたから、柄にもなくちょっと照れてしまいました。
その日の晩、夕食を食べながら娘たちにこのことを教えると、『台湾で“かっこいい”って、なにか別の意味なんでねーの!?』。

イイんです、日本の女子高生には分らなくとも、小学生と台湾の人はちゃんと分ってるんですから。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする