角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

理想の老夫婦。

2008年10月16日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズLグループ25cm土踏まず付き〔4500円〕
青基調の可愛い動物キャラクタープリントをベースに、合わせは黄色です。青と黄色の組み合わせはバッチリですし、なんと言ってもキャラクターが可愛いですね。草履に仕上がってもその雰囲気は充分出ていると思います。平生地はこちらです。



愛知県からお越しのご夫婦、共に70歳代とお見受けしました。奥様が草履を気に入ってくださり、私の説明にも真剣に耳を傾けています。ご主人はと言うと、少し離れた位置でケータイメールに夢中で取り組んでいました。
いまどきはお年寄り専用に近いケータイも発売されているようで、実演席でもお年寄りのケータイが鳴り出すなんてことが珍しくありません。

草履が欲しいとなった奥様、ご主人を呼び寄せしきりに“おねだり”となりました。『この22cmの草履があたしにピッタリなんだってっ!』、ご主人はたった一言『あっ、そう』。でも私には分りました、とてもお人柄の優しい感じのご主人がダメとは言わないことをです。

次にご主人の口から出た言葉は、『気に入ったのなら、その草履をいただいて行けばイイヨ』。ここで私が見習いたいと思ったのは、「買って行けばイイ」ではなく、「いただいて行けばイイ」という言葉なんですね。普段どこかのお店に買い物に行って、なかなかこの言葉は使わないと思いました。
「買う」ではなく「いただく」、日本語の持つ奥ゆかしさがなんとも心地よいと思います。

ご夫婦のやりとりはこれで終わりません。奥様は『じゃあ、お父さん買ってっ』、ご主人は『そんなのどっちが払ったってイイじゃないかっ』。返す奥様は、『あたしが払うんじゃダメなのっ』。
奥様の言葉の真意はもちろんご主人も分りきっているんですね、聞けば“初角館”、そこで出逢った草履をご主人にプレゼントして欲しいということでしょう。

ずいぶん昔、台所洗剤のテレビコマーシャルで、老夫婦が手をつないで街をスキップして歩くのがありました。あのときの雰囲気が今日のご夫婦と重なります。歳を重ねた理想の夫婦を見せていただいた思いですね。

さて、わが夫婦の将来はいかがなりますか。想えば結婚記念日は10月5日、今年のその日は二日酔いと悪寒で早々に床へ着いた日です。
翌朝記念日を思い出したのは、17年前の結婚式で式場からもらった大きな「ろうそく」を見てでした。毎年の記念日に火を灯し、一年分ずつを減らして行くんです。カミさんは忘れることなく、ひとり火を灯していたんですね。

お客様から「草履」は褒められても、「夫」としてはひとつも褒められませんなぁ。

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嬉しい“返信”。

2008年10月14日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズLグループ26cm土踏まず付き〔4500円〕
赤基調のこけし・桜プリントをベースに、合わせは紺です。赤と紺の相性がバッチリ出せた、「元気」を象徴する配色と思います。平生地はこちらです。



「今日の草履」は、70歳ほどのお父さんがお買い上げくださいました。昔かたぎとでも言いますか、無口なお父さんは最初「赤」に戸惑っておられました。私の『赤は元気の象徴ですよっ』の言葉に、ご家族もすぐに賛成です。
『今晩から早速履いてくださいね、体にイイことはすぐはじめましょー』と言うと、お父さんのお顔はみるみる笑顔になりました。こうしたこちらからの発信に対して返される“返信”、たとえ声や言葉でなくとも気持ちは伝わるもんです。

ここのところ、お客様からのメールやお葉書が相次いでいます。埼玉県坂戸市にお住まいのおばさまからは、ご注文と共に一枚の写真が添付されておりました。それは7月上旬、私がノースリーブシャツ一枚で草履を編んでいる姿が撮影されていたんですね。秋たけなわの今、見るだけで寒くなるような画像でした(苦笑)。

9月29日のブログにご登場の山形県東根市のランナーさんからは、オーダー草履到着メールをいただきました。文面には『またの機会に立ち寄らせて頂きます』のお言葉があり、こちらも角館と草履に対する嬉しい“返信”ですね。

9月23日のブログにご登場の茨城県取手市にお住まいの女性からは、草履を履いての嬉しいご感想と共に、お母上の分もオーダーくださいました。こうしてブログでご紹介させていただいた方からのメールは、まさに嬉しい“返信”です。

そして今日、10月3日のブログでご紹介した、さんさんサンの「師」であるかつての園長先生から、嬉しい葉書が届けられました。葉書の下半分には、園長先生とさんさんサン、そして私と三人で写した写真が載せられています。
文面の端から端まで「感謝」の心が並び、ブログ掲載に対しても『ありがとうございました』と綴られています。日々忘れてならない「感謝の心」、一枚の葉書からまた教えられた思いです。

埼玉県大宮市近郊にお住まいの女性が、今日草履をお求めに来てくださいました。実はこちらの女性、先月も西宮家をお訪ねくださり草履を眺めてお出ででした。そのときのお話では、「奥の細道」に由来する土地をウォーキングする活動に参加されていて、『また来月も来るんですよっ』とおっしゃっていたんですね。

先月は展示品の数が僅かしかなく、ご希望のサイズと配色に出逢えなかったんです。私の『10月であれば今よりは在庫があると思いますぅ』の言葉を憶えていてくださり、今日あらためてお越しくださったというわけなんです。
めでたく草履もお買い上げになり、『またの機会に寄りますねっ!』。

一ヶ月前の私の発信に対して、今日嬉しい“返信”を頂戴しました。

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「初試み」詳細。

2008年10月13日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ24cm土踏まず付き〔4000円〕
黄色基調のだるまさんプリントをベースに、合わせは緑と黄色のマス目プリントです。こちらのベースも新柄初登場、赤いだるまさんのお腹には「愛」「幸」「福」など、縁起の良い漢字が書かれています。出来上がった草履から、そんな漢字を探してみるのも面白いですね。平生地はこちらです。




さて、先日より「今冬新たな企み」などと表現しておりました「初の試み」について、その詳細をご紹介したいと思います。名づけて、「体験型草履教室~ワンコイン実習~」

西宮家実演席で私の隣に座り、角館草履の初歩を学んでいただきます。時間は30分一単位とし、料金は材料代込み500円です。もちろん30分で一足編み上げるなんてことは私でさえ不可能ですから、言ってみれば『どれくらいの難しさか』を体験してみるといった具合でしょうか。
ご希望により延長もあるかと思いますが、一足編み上げるとしたら初心者で丸一日必要ですから、まずはほどほどがよろしいかと思います。

これまで何人にも問われていた、『編み方は教えてくれますか?』。大部分の方は実技指導を指していますから、『今のところそれはないですぅ。見学で技術を盗むのはタダですから、何度でも来てくださいよ』。これがこれまでのお応えでした。
比較的近隣の方は年に数度訪れ、中にはかなり上達した人もいますが、過去隣りに座って実技指導した生徒さんは一人とか二人しかいなかったんです。

そして10月9日のブログでも触れた、「草履台を買ったものの未だ手付かず」という方、あるいは「やってはみたものの難しくて断念」という方、出来るものであればこうした方を少しでも減らしたい願いを持っています。
私の実演をご覧になって、『私にも出来そう!』と思うのは自由です。ただその後多くの方から聞かされるのは、『見るとやるでは大違い…』なんですね。

そんな方々にも「体験型草履教室」は有効と思います。まず30分だけでも体験してみて、その上で『やりたいっ!』と思えば一式ご購入くださればイイし、『これはちょっと…』と思えば考え直すこともイイんじゃないですかね。

「体験型草履教室」開始期日は、今のところ11月を考えています。具体的日にちは決定次第お伝えするとして、まずは3月末日までの冬季間限定となります。この期間で私が実演している日は、原則毎日OKとするつもりです。

そしてさらになんですが、「体験型」で面白さを感じた方々を対象に、「本気型」も念頭にあります。これは冬季間のうち毎月数回、「一日コース」として本気で取り組んでいただく教室です。
「本気型」については数名の希望者が集まった段階で決めますので、会場や料金等の詳細は現時点で未定です。

実はここ二、三日で草履作りに関心のあるお客様に、この「体験型」を話したんです。秋田市のおばさまは、『じゃあ、次来るときに寄ってみますねっ』。横手市の女性は、『雪が少ないうちに来ま~すっ』。
まぁ、ほんとに来てくださるかは分りませんが、いずれ何人かの参加はあるんじゃないでしょうか。

今冬初の試みで、また新たなブログネタが生まれそうですね。

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成された恩返し。

2008年10月11日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ23cm土踏まず付き〔4000円〕
黄色基調の葉っぱプリントをベースに、合わせは黄色基調のひまわりプリントです。季節的には現在と異なりますが、明るい爽やかさはいつのときでも気持ちイイですね。

今日大仙市大曲地区に、県南最大規模を誇るショッピングセンターがオープンしました。三日前からはじまっていたソフトオープンに出かけた知人は、『人が多過ぎてゆっくり見られねがったぁ』。
とき同じくして、古くから大曲中心部の活性に貢献した大型小売店舗が、その姿を消すことに決まりました。民事再生手続きも、あとを引き受ける企業が見つからなかったようです。

新聞等でも大きく報道されていますから名前を出しますが、大曲の「ヤマサ」と言えば角館人にも馴染みの深い店でした。中でも私たちのように大曲市内の高校へ通った人間は、幾度となく立ち寄った店です。「カネトク」「タカヤナギ」「ヤマサ」の三軒は、大曲市の商業施設で“御三家”と言えるでしょうね。

今年5月30日のブログで、私の草履を飾りたいと申し入れてくださったお店の話を紹介しましたが、実はそれが「ヤマサ」だったんです。熟慮の結果、ヤマサには私の草履十足ほどが展示されることになりました。わが家までお訪ねくださったバイヤーさんの笑顔が思い出されます。

今年のお祭り、ひとりの中年男性が実演ベンチに腰を下ろすと、『おやっ、この草履ヤマサで売ってねがっ?』。簡単に事情をご説明すると、『オレ、ヤマサで買ったったぁ。最初少し高いど思ったども、履いだばやっぱりイイものなぁ。あどで息子の分も買いに行ったば、もうねっけどっ』。

当初バイヤーさんから展示の申し入れがあったとき、実演が伴わないただの展示ではそんなに売れないであろうことを伝えていました。角館草履はその材料や編み進む工程を眺めることで理解が深まり、やがてお買い上げに繋がると思っているからなんです。
ですからこの話を男性から聞かされたときも、きっと展示場所を移動したかなんかで、完売したとは思えなかったんですね。

今日やはり大仙市大曲から五名ほどのおばさまがお越しでした。うちのおひとりが私の草履を見つけるなり、『あっ、この草履、あたし履いでるぅ』。
聞いてみるとおばさまは、『ヤマサで買ったったんシものぉ。あたしが履いでる草履どご見で、お盆に帰省した息子夫婦も買って帰ったんシよぉ』。

こちらのおばさまからこの話を聞いて、先の男性が勘違いではなかったことを確信しました。おそらく、いやきっとヤマサ店頭から角館草履は完売してくれたんでしょう。
未だ風邪が抜けきらない病み上がりの身に、今日の出来事は嬉しかったです。草履が売れたことの嬉しさとは少し違う、ヤマサに対して、バイヤーさんに対して最後の最後に少しは恩返しが出来たと思うんですね。

「無常の世」にあって、商売の世界もまた淘汰は致し方ありません。でも私の草履が完売したのは「ヤマサ」だったから、オープンしたばかりの大型ショッピングセンターでそれは叶わないでしょう。
地元資本の店が消えることは、なんとも悔しく残念でなりません。

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風邪ですぅ。

2008年10月09日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ23cm土踏まず付き〔4000円〕
秋の新柄第一弾はこちら、赤茶基調の麻の葉プリントをベースに、合わせは茶色のぼかしです。同系色で違和感がなく、今の時期にも合う配色と思います。
平生地はこちらです。



「今日の草履」は男鹿市からお越しくださった母娘ペアさんの、娘さんのほうがお持ち帰りです。
実はこちらのお母さん、ずいぶん前に草履台から編み方ビデオまで一式をお買い上げの方で、久しぶりに角館へお越しとのこと。
『まだ押入れにしまったままなのよぉ、今年の冬は必ずはじめるからねっ』。

私もこれをちょっと心配しておりました。つまり、草履台やら材料は揃えたものの、なかなか手を付けずにいる方々のことですね。つい二、三日前もちょうど同じ話を聞いたばかりで、きっとまだまだいらっしゃるように思うんです。

そんな方々が草履台の購入を悔やんでいるワケではないのですが、私とすれば熱の冷めないうちに取り組んで欲しいと思うわけです。
「今冬新たな企み」もそんなところにひとつの意味を持っているのですが、間もなく詳細をお知らせしたいと思います。

さて、はっきり風邪です。「新たな企み」を練りながら、まずはおやすみなさい。

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今冬、新たな企み。

2008年10月07日 | 実演日記


今日の草履は、樺草履Lグループ25cm土踏まず付き〔6500円〕
チタン媒染をベースに、合わせは鉄媒染です。特に緒の部分には絞りを入れてみました。このぼかした雰囲気がなかなかイイと思います。

しばらく樺草履Lグループの在庫がなくて気になっていたのですが、これでまた展示のバリエーションが増えました。
そしてそして、東京の仕入れ部長から「秋の新柄」が届いています。早速新柄製作に入りますので、今後の「今日の草履」にご注目ください。

トップページにも記載しましたが、今月13日から閉店時刻が変わります。これまでの午後六時から一時間早い午後五時となりますので、角館に宿泊予定の方は特にご注意ください。

さて、朝晩の寒さはこれまでお伝えの通り、これから紅葉シーズン本番を迎える角館は、その後にイヤでも「冬」が待っています。角館では冬の誘客を目的にいろいろなキャンペーンを実施していますが、そのためには迎える側の私たちもそれに沿った取り組みが必要ですよね。

これまでの冬場は、春の桜祭りに向けた在庫作りが私の「仕事」でした。それでも草履を求めに西宮家を訪ねてくださる方がいて、そのたびに米蔵スタッフさんから電話をもらい対応していました。あるときはさんさんサンを訪ねたお客様もいて、やはりその都度電話をもらっての対応でした。

それと秋田県内で草履台をお買い上げになった方々は、主に冬場を練習期にしていることを聞かされていました。そんな方から、見学のため西宮家へ行きたいという電話もいただいていたんです。

今、ちょっとした“企み”を考えています。もちろん悪いことを考えているワケではありません。詳細はもう少し詰めてからお知らせしたいと思います。

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年寄りとはなんぞや!?

2008年10月06日 | 実演日記


今日の草履は彩シリーズMグループ23cm土踏まず付き〔4000円〕
黒字の椰子の木プリントをベースに、合わせは赤と黒の網代ブリントです。シックなお洒落感が存分に出せたと思います。「今日の草履」は出来上がって間もなく、秋田市からお越しの女性がお買い上げくださいました。

昨晩はずいぶん早く床に着きました。一昨日の晩、娘たちが所属する手踊り社中の「あどふぎ」があって参加しました。ヤマの若衆6人ほどが出席してくれて、久しぶりに少々飲みすぎたようです。
二日酔い状態はときの経過と共に治りますが、その後訪れたのが背中の悪寒。そこで昨晩の早めの就寝だったのですが、おかげで今朝はフツーに起床できました。45歳、社会的にはまだまだ中堅どころですが、こと体力については無理が出来ませんねぇ。

この「あどふぎ」には、80歳を超える師匠もご出席です。腰が曲がって久しい師匠なれど、手踊りをはじめ当地の郷土芸能にかける情熱は冷めるところを知りません。「若さ」というのは年齢じゃないんだなと思わせるのが、いつもこちらの師匠です。

西宮家米蔵二階では、昨日まである展示会が開かれていました。それは齢70歳の「女性軍団」…と言えば叱られそうですが、角館南高校学校を50年以上も前に卒業された同期生のみなさんが、それぞれの「手作り品」を紹介する展示会だったんです。

十年前の還暦の年、誰からともなくそんな企画が持ち上がったんだそうです。そのときはまだ多忙な年齢だったことで、『じゃあ十年後っ!』の約束を見事に果たしたんですね。
会期中の三日間米蔵二階から聞こえてくる声は、それはもうはしゃぎまくるお嬢さんといった印象でした。その中のおふたりが一足先にお帰りになる際、私の前を通るときに言っていた言葉が印象的でしたねぇ、『いやぁ、みんな還暦のときより元気になってる…』。

私の実演席にも関心のある方が何人も入れ替わりに見え、ほんとに元気な会話を展開されていました。会期が終わり搬出の際、『騒がしくしてゴメンねぇ、今度来るときは冷やかしじゃなくて草履を買いに来るからっ!』。

そんなお気遣いはご無用に、元気なお年寄りは見ていても気分がイイですよっ。おっと、「お年寄り」じゃなかったですね、失礼いたしましたっ。

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忘れえぬ「師」。

2008年10月03日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ23cm土踏まず付き〔4000円〕
赤と黒の網代プリントをベースに、紫のプリントとエンジの花柄を合わせた三色使いです。いろんな種類の布地が少しずつ残っていますから、これからもこうした多色使いを編んでみたいと思います。
「今日の草履」は、秋田市からお越しの女性がお持ち帰りです。

以前に少し触れた「中学卒業30周年同期会」の件は、正月開催にしては少し準備期間が短いことで、ひとまずお流れとなりそうです。この先同期会の予定として「満50歳・中学卒業35周年」があるわけですが、中学時代の恩師もあと五年くらいはみなさんお元気でしょう。

お祭り中日の八日、西宮家前で本番激突がはじまろうとしているとき、実演席には町外に暮らす同期生三人がいました。うちのひとりが近くに立っていた中学時代の恩師を見つけ、大声で先生の名前を敬称を略して呼んだんですね。私が彼に、『なんぼなんでも呼び捨てはねぇべ』と言うと、先生も太っ腹なもんです、『あれがら30年も経ったんだから、まぁ仕方ねぇべっ』。
いろいろ話をしましたが、ひとりだけ病気で他界された以外はみなさんお元気とのことでした。

今日実演席をお訪ねは、三人の女性を引き連れたさんさんサン。どなたをご案内して見えたかは、前から聞いていたのですぐに分かりました。詳しくはさんさんサンのブログに綴られています。

さんさんサンが千葉市に住んでいた時代、とてもお世話になった保育園の園長先生のことはかねてから聞いていました。私は今日はじめてお目にかかり、ついつい『お噂はかねがね聞いておりますっ』と言っちゃいました。そうしたことがつい言葉に出てしまうほど、園長先生にはその優しいお人柄が滲み出ていたんですね。

西宮家ご訪問の目的は、ブログにもある通り自身の「書」を先生に観てもらうことでしょう。さらにもうひとつの目的が、大事なお客様である三人の女性に草履をブレゼントして差し上げることでした。そうした心の贈り物に私の草履を選んでくれたさんさんサン、そして草履をとっても嬉しそうにお持ちになった「恩人」に、私も心からお礼を言いたいと思います。

私も人様に草履作りを教えるようになって、「師匠」とか「先生」などと呼んでくださる方がいます。そんな私が先の園長先生のように「忘れえぬ師」になれるかどうか、まずは日々の精進以外にありませんね。

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ある宣伝広告。

2008年10月02日 | 実演日記


今日の草履は、大仙市仙北町にお住まいの女性のオーダー草履です。青系がお好きとのことで、桜うさぎプルーをベースに合わせも青にしました。同系色で違和感がありませんから、定番にしてもおかしくないですね。
本日お引取りに見え、今日はご一緒のご主人がご自分用をオーダーくださいました。ありがとうございますっ。

奥様用をオーダーいただいた折、私の背中に飾ってある似顔絵に目が止まり、『これ、お祭りに飾ってましたよねっ!』。
その似顔絵というのが8月27日のブログでご紹介した、MARIKO画伯の力作です。さんさんサン店頭でのお祭り公開似顔絵描きの際に、サンプルとして飾っていたわけなんです。こちらのご夫婦はお祭りに遊びに見えて私の似顔絵を見たんですね。もしかしたらこの似顔絵が、草履に対しても宣伝効果があったんでしょうかね。

お祭りが終わって三週間以上が経ち、すでに今年のお祭りを収録した「お祭りビデオ(DVD)」が発売されています。そのひとつを観たのですが、八日の西宮家前、岩瀬VS菅沢は結構な時間を割いていました。その場面にちょくちょく登場する「白いテント」、これは西宮家米蔵駐車スペースを利用した露店で、この中でお祭りコロッケや生ビールなどを販売していたわけですね。

このテント、実は私の所有物なんです。かつてイベント出店に利用するため購入したもので、現在はほとんどなんにも使っていません。お祭りだけ西宮家露店にお貸ししているのですが、こんなにビデオに映るなら「角館草履」の名前を入れましょうか。

もっとも来年この場所で激突があるかは分りませんし、仮にあったとしても「お祭りビデオ」を購入するのは地元民だけなんですがね。

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人生の「常夜灯」。

2008年10月01日 | 実演日記


今日の草履は、彩シリーズMグループ22cm土踏まず付き〔4000円〕
紫基調の星柄プリントをベースに、合わせはエンジです。まずオーソドックスと言えるでしょうか、シンプルな綺麗さがあると思います。平生地はこちらです。



わが家のパソコンが置かれている部屋、二階の八畳間なんですが、蛍光灯の常夜灯がずーっと切れたままでした。廊下の灯りを点ければ部屋の中も真っ暗ではありませんから、ついつい電球を替えるのをサボっていたんですね。
昨日実演中にふと思いつき、西宮家お向かいの電気屋さんから電球を買いました。たった5ワットと言え、やはりないよりはずっと明るいです。

秋田市に生まれ現在横手市に暮らすという二十歳くらいの女性が、埼玉県のご友人とふたりでお越しです。おふたりとも「手作り品」に関心が高く、実演ベンチに座ると食い入るように私の手元を見ていました。ふと私が使っている草履台に目が止まり、『うわっ、樺細工だっ!』。おふたりとも樺細工のファンだったんですね。

横手市に暮らす女性が「職人道」に関心が高く、中学生時代から機会を見つけては「職人」と話をしていたと言います。私も良く知る樺細工職人と面識があり、『優しい人だったんですけど、やっぱり仕事には厳しかったですぅ』。
私も草履職人を名乗ってはいますが、樺細工の世界は私の草履なんか比較にならない技術が必要です。厳しいのは当たり前ですね。

こちらの女性がこうも「職人」に憧れるのは、彼女が想う理想の「職業人」とピッタリ来るからなんだそうです。それは、『ひとつの信念を貫き作品を完成させる姿』、確かにそれがなければ職人は務まらないでしょう。
彼女は言いました。『あたしもそんな道に入りたいのに、周りは賛成してくれないんです。職人ってやっぱり厳しいですか?』。

それまでの話の脈略から、どうやら彼女は自身の進路を悩んでるんですね。家庭環境も一因して、行きたい道に進むのが困難というのが分りました。その進みたい道と言いますか、理想とする姿が「職人道」とかぶさるようです。
もちろん職人生活が楽しいばかりとは思っていなくて、それで機会あるたびに職人へ問いかけていたんです。

真面目な質問にはもちろん真面目に答えなければいけません。『職人として生計を立てるには、どんな種類だって何年もかかる。その間ほとんど無給で暮らせるかがひとつ重要だよ。しかも何年か修行を積んだとして、飯が食えるかどうかは別問題だなぁ。あなたにその才能があるかどうかは別にして、ほかにいろんな道があることを周囲は言いたいんだよ』。

私の話に真剣に耳を傾ける彼女、きっと「反対」されるのは承知の上なんでしょうが、いろんな人からいろんな話を聞くことが大事というのも分っているようです。
私がもうひとつ気掛かりだったのは、彼女が理想とする姿が『ひとつの信念を貫き作品を完成させる』という点だったんです。

私が言ったのは、『それは職人だけの世界じゃない、サラリーマンにだってそういう気持ちはとっても大切だよ。これから向かう仕事が自分の本意じゃないにしても、まず頑張ってみることだな。今すぐに自分の将来を決めてしまう必要はないよ』。

もっと上手く話してあげられればイイのですが、今の私にはこれくらいが精一杯でした。進む道に悩むのは若者の証し、いや人間の証しじゃないですかね。
暗闇の中で悩める若者の問いかけに、パッと明るい道筋を見つけてあげられればイイのかも知れませんが、今日の私の話はせいぜい“5ワット”くらいでしたかねぇ。それでも、「ないよりはマシな灯り」であってくれればイイのですが…。

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