角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

ワラ草履とノスタルジー。

2014年05月23日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き[四阡六百円]
明るいピンク&黄色の相性バッチリの配色です。お電話のご注文でよく言われるのが、『任せますけど明るい色がいいわね』。そんなときこんな配色をお送りすると、見た瞬間きっと笑顔になると思うんです。『あたしには派手じゃない!?』と言いながらも、満面の笑みが見えるような気がしますよ。

実演席でよく言われるのが、『今はそういう台があるのね。あたしのおばあさんが編んでいたときは、足の指に引っ掛けてたわよ』。今日も言われました。
朝ドラ「花子とアン」には、ワラ草履を編むシーンがたびたび出てきます。よく見ると分かるのですが、草履を編む台というのが昔もちゃんとありました。当時の時代考証をなにほど研究しているわけではありませんが、おそらく数をたくさん編む家には台があったのだと思います。それはつまり、内職として金銭を得るために作っていた家ですね。

かつての日本が「万民総ワラ草履」だったことは言うまでもありません。ただ家族が履くためだけに作る家では、さほどの数が必要なかったでしょう。であれば足の指に引っ掛けて…も理解できます。他方ワラ草履を売って金銭を得ていた家は、とにかく暇さえあればワラ草履作りに励んでいたと思われます。だとしたら足の指なんかで務まるわけがありません。

2月16日のブログでわらび劇場の「リキノスケ、走る!」のあらすじに触れていますが、貧農の内職にワラ草履あるいはワラジ作りが当たり前にありました。たくさんの数を編まなければならない貧しい農家ほど草履を編む台があったと考えると、草履を足の指に引っ掛けて編んでいた家は比較的食べることに困らなかった家かも知れませんね。

ときにご自身がかつてワラ草履作りに励んでいたというご高齢者とお会いします。やはり多くは「足指に引っ掛けて」とおっしゃいますね。金銭を得るための内職とは違いますから、ツラい思い出というより「懐かしさ」を話してくれますよ。ちょうど七年前の2007年5月17日のブログでは、ワラ草履に寄せる悲喜こもごもを綴っています。内職であろうが自分で履くためであろうが、ワラ草履にはどこか悲しげで暖かくて懐かしい日本がありますね。まさに「ノルタルジー」でしょう。

昨夜わが家に一通のFAXが届きました。手書きのご注文用紙です。



推察するにご高齢のおばさまではないでしょうか。「角舘市」も「西の宮家」も違っていれば、「わらぞうり1足24cm」には軽く吹き出してしまいました。けれども一生懸命に書いてくださった心が見えるような気がします。かつてワラ草履を編んだ経験のあるおばあちゃんじゃないかなと、勝手に想像してしまいましたよ。明日の便で、人気ナンバーワンの定番配色①を送って差し上げることにします。
コメント
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