角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

あきんどの気概。

2014年05月10日 | 地域の話




今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き[四阡六百円]
金色の和柄にエンジを組み合わせてみました。ゴージャスでありながら、どこか優しい雰囲気も感じます。桜まつりに向けての在庫作りで、金色を含む配色を数多く編みました。すでに完売していますが、みなさん「ゴージャス」の言葉に良い笑顔をされていましたね。室内で使用する草履なんですから、そういう楽しみがあって良いでしょう。

一昨日の地元紙に、ゴールデンウィークの人出発表がされていました。角館は昨年比16万人増の122万6千人だったそうです。桜まつりとGWは期間が合致しませんから、桜まつりの人出はまたあらためて発表されるでしょう。昨年は桜まつりを一週間延長している都合で、今年が昨年を上回るとは思えません。今日の角館と一年前の角館を比較すると、今年の静かさが顕著に分かります。

新聞発表された日、町内に暮らすお顔馴染みのおばさまに『忙しがったべ~?』と訊かれました。おかげさまでとお答えすると、『これも桜と武家屋敷のおかげだな』。
この言葉に異を唱える角館人はいないでしょう。何度もお伝えの通り、武家屋敷通りの枝垂れ桜は国の天然記念物、檜木内川堤のソメイヨシノは国の名勝に指定されています。同じ日に徒歩一分で二つの国指定が観られるのは、おそらく角館だけと思います。

武家屋敷にしても桜にしても、すべては先人が遺してくれたものです。現代を生きる私たちはもれなくその恩恵に預かっている、この事実を否定する人など角館にはいないはずです。私の草履にしても、発表から十年足らずでこれだけのリピーターさんに恵まれたのは、観光客数年間250万人とも300万人とも云われるこの角館で草履を編んでいることがとても大きいわけです。

これだけの事実を理解したうえでの話です。私は先人の遺産に頼り切らない商いを目指したいと、常々思っています。先のおばさまの言葉に、「武家屋敷と桜がなかったら、おめだぢなんかメシ食えねべ」の意図があったかどうかは分かりません。重ねて言いますが、たとえあったにしてもその言葉に真っ向から否定などできません。でもそれで良いとも思えないわけです。

観光地の要素は多様です。角館の場合、武家屋敷と桜が二大看板であるのは間違いありません。その二つを支えるように、「商品」があり「技」があり「味」があり「人」があると思っています。二大看板に「おんぶにだっこ」ではなく、「この商品を買いに来た」「この味を食べたくて来た」、さらには「あなたに会いたくてやって来た」と言わしめる努力。これこそ角館あきんどの気概ではないかと思う次第です。

生意気のそしりを覚悟で書きました。修行は続きます。
コメント
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