角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

遠くで想う角館。

2014年05月18日 | 実演日記




今日の草履は、茨城県笠間市にお住いの男性からの、お電話によるオーダー草履です。ご家族分5足のご注文で、うちの24cmは「茶系」がご希望でした。どんな配色が届くかのご期待に、見事お応えできるでしょうか。明日の便で出発いたします。

一昨日のこと、自宅でパソコン作業をしていると固定電話が鳴りました。表示された電話番号は「098」から始まっています。ずいぶん遠くからのお電話と思い出てみると、『あのぅ、角館の草履屋さんでよかったですか?』。電話のお声から察するに、中高年のおばさまと思いました。『はい、そうです~』とお応えすると、『石垣島から電話しています~』。なるほど遠い電話番号を理解したと同時に、「石垣島」ですぐに思い出しました。

お休みに入る前日、12日の午後のことです。そろそろ片づけに入ろうかという頃、お隣り大仙市のおばさまがお立ち寄りでした。展示してある草履を見つけるとふと思い出したように、『あっ、この草履送ってあげたら喜ぶんでねぇべが!?』。
続けておばさまがおっしゃるのは、『あたしの娘が石垣島に嫁いでいて、そこのお義母さんがいっつも家の中で草履履いでるもの』。
少ない在庫から定番配色⑧をお買い上げでした。

やはりお電話の主は石垣島のお義母さん。ご実家のお母さんがおっしゃる通り、かなりの草履好きなんだそうです。草履が届いた日からご家族で角館草履談義が花を咲かせ、どうしても作り手から草履の“素性”を聞きたいと思ったんですね。実演席でお客様に話すのと同じ濃度でご説明をしました。
素性をご理解くださったお義母さんは、『何年か前に旅行した角館を思い出して、大切に履かせていただきますねっ』。なんとも嬉しいお言葉でありました。

お休み中に仙台市を訪れたひとつの理由は、ある人のお見舞いです。このブログにも何度か登場している、南相馬市から一時避難で角館に暮らしたKさん夫妻のご主人なんですね。角館滞在中にある病が見つかり、昨年六月角館を引き上げ仙台市で本格的な治療が始まっていました。
角館滞在中は頻繁に実演席を訪れ、角館草履のご愛用者でもあります。さらに仙台での入院中、わが家の次女が看護実習でKさんの担当になったりと、その縁はなかなか浅くないものがありました。

そのKさんからまだ寒かったころに電話があり、『退院はしたんだけど、副作用の影響で遠出は無理なんだよねぇ。角館の人たちに会いたいけど、しばらくはダメだなぁ』。そこで私が答えたのは、『無理しないほうがいい。GWが過ぎたら俺がそっちへ行くから』。
同じことを考えた人がほかにもいたようで、角館のホテル支配人と飲食店のオーナーが私より先に訪れていました。みなさんKさんとのご縁が大きいと感じていたのでしょう。

角館が故郷の人は言うに及ばず、そうでない人でもこうして角館を想ってくれる人たちがいます。特に私たち観光業に生きる者は、決して忘れてはならないと思うわけです。
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