緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

R.サーインス・デ・ラ・マーサ作曲「ソレア」を聴く

2021-07-22 20:37:11 | ギター
レヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサ(Regino Sáinz De La Maza、1896-1981)と言えば、ギタリスト兼作曲家、ロドリーゴ作曲アランフェス協奏曲の献呈者、初演者であり、優れた教育者であったことは、ギター愛好家の誰もが知っているクラシックギターの大家である。

自作曲はスペインの古くから伝わる音楽を素材としたものが多く、このブログでもこれまでいくつかの曲を記事に取り上げたが、今日紹介するのは「ソレア」(Soleá)という曲も、フラメンコの1つの曲種らしく、スペインの民族色の実に満ち溢れた曲だ。

このサインス・デ・ラ・マーサの「ソレア」に初めて出会ったのが高校3年生のとき、今から40年程前だが、FMラジオからホセ・ルイス・ゴンサレスの録音を聴いたことだった。
この曲に続いて演奏された同じ作曲者の「アンダルーサ」(のちにロンデーニャに改作)とともに、この後、このホセ・ルイス・ゴンサレスの録音を何度聴いたか分からない。
とにかくホセ・ルイス・ゴンサレスの音や、演奏から放射されてくる感情エネルギーにすっかり魅了されてしまったのである。
この「ソレア」は左手の押さえの困難な難曲で、ホセ・ルイスの演奏にはたくさんの音のビリツキがあるにもかかわらず、彼の演奏を聴けば聴くほど惹き込まれてしまった。

そしてこの「ソレア」と「アンダルーサ」をどうしても弾きたくなり、今は無き好楽社のカタログで探したら「アンダルーサ」は無かったが「ソレア」はあったので注文して手に入れた。高校3年生の春の頃だ。





(表紙左上に茶色い染みが付いていた。一体、何を付けたのか?)



「ソレア」という曲は、物悲しく哀愁のある中で随所で激しい感情が表出される。
フラメンコの歌や踊りが想起される。

とくにハイポジションの左手の押さえが非常に難しいこの部分は、テンポを緩めず、激しく打ち付けるような強い音で弾かなければならない。





とても激しい感情が伝わってくるフレーズだ。
頼りない貧弱な音で、恐る恐る「これでいいでしょうか~」というような、石橋を叩いて渡るような弾き方では全く興ざめしてしまうのだ。

そしてこの部分に入る直前の三連符が続くところ。
ここの弾き方は馬鹿正直に譜面通りに弾いたら、次の激しいフレーズに繋がっていかない。
ホセ・ルイスの弾き方が参考になる。

この後に現れる旋律の頭にトリルが入る部分を聴くと、小学生の時に聴いたNHKみんなの歌の何とかという歌(イカロスという言葉が出てきたような?)の旋律が思い浮かんでくるから面白い。

次のコプラの部分はアポヤンドで芯のある強い音で弾かなければ聴く人の心を素通りしていくだけであろう。



最後はハイポジションの単音に続いて強く切るような和音で終わるが、この最後の和音も強く弾かなければならない。
短く切って、残響が残るような感じだ。

Youtubeでホセ・ルイス・ゴンザレスの録音がないかと探したが無かった。
楽譜が入手しづらいためだろうか投稿数も少なく、いい演奏が皆無だった。

本当は良くないが、下にホセ・ルイスの録音を貼り付けた。
また作曲者自身の自演の録音も貼り付けておく。
これらの演奏とYoutubeで投稿されている演奏をぜひ聴き比べて欲しい。
今のギター界で何が足りないのか、何で感動する演奏や演奏家が出て来なくなってしまったのか、という理由がきっと分かると思う。

やはり聴く人の魂にまで届き、震わせる演奏でないと、繰り返し聴きたいという気持ちにさせることは出来ない。

①ソレア:ホセ・ルイス・ゴンサレス演奏(1980年スタジオ録音)

②ソレア:サーインス・デ・ラ・マーサ演奏(1953年ライブ録音)
コメント