緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

北原白秋作詞、山田耕筰作曲「砂山」を聴く

2018-03-17 23:14:30 | 邦人作曲家
この「砂山」という曲を聴いたのは30代の半ば頃だったと思う。
当時、日本の子守唄とか日本的情緒の強く感じさせる曲をさかんに探していた。
「五木の子守唄」、「島原地方の子守唄」、「中国地方の子守唄」などを収めたCDを何度も聴いていたのを思い出す。
山田耕筰の歌曲の古い録音を集めたCDを買ったのもこの頃だった。
このCDに北原白秋作詞、山田耕筰作曲「砂山」があった。

日本海の荒涼とした景色。
学生時代に住んでいた町の近くにも日本海が見えた。
札幌から函館本線に乗り、銭函という駅を過ぎるとすぐに右手に海が見えてくる。
晩秋から冬にかけては灰色の空の中、荒波が繰り返し打ち寄せる。
海岸には誰もいない。船も無い。
この路線に乗ると、独り黙ってこの荒涼とした景色を見ていた。
寂寥感。
就職で関東に出てきて30年以上経った。
しかし関東で強く思い出に残る景色は無い。
東京勤務だった20代の頃の、高層ビル街の砂漠のような無機的な景観の中に見えた異様な夕暮れくらいか。
思い出すのも辛い。

強く想い出に残るのはこの日本海と、今は無き胆振線の倶知安~伊達紋別間の景色だ。
近くここに新幹線が建設される。信じられない。

しかしこういう曲は外国には無い。日本独特のものだ。
こういう曲想は今の若い世代には抵抗があるのだろうか。
しみじみとした暗い曲を避ける人はたくさんいるだろう。

この「砂山」をテーマにギター用に変奏曲にした作曲がいる。カルロ・ドメニコーニだ。
「砂山変化(Sunayama Henge Op.71a)」という曲。



Youtubeで探したが無かった。
CDが出ている。加藤政幸とトーマス・ツァヴィエルハ。





加藤政幸がドメニコーニに「砂山」を渡したことが作曲のきっかけとなったようだ。
この曲は加藤政幸のために作られた。
しかし加藤政幸の演奏はかなりオリジナルを変更している。
聴くのだったらトーマス・ツァヴィエルハの方がいい。
彼は東京国際ギターコンクールの優勝者で、私も彼の生演奏は2回聴いた。
10年くらい前に、東京国際ギターコンクールの第2次予選課題曲にこの曲が選ばれた。
その時の審査員が来日していたドメニコーニだった。
ドメニコーニが来日したときコンサートを聴きに行ったが、この「砂山変化」の演奏はあまり良くなかった。
速すぎて雑で、日本的情緒の細やかな表現が相殺されていた。

この「砂山変化」の変奏曲はかなり西欧風な面もあるが私は好きだ。
40歳前後に楽譜を入手し、弾いていた。
団地に住んでいた頃で、上と下で音が筒抜けだったが、下の住人のお父さんとその娘がこの曲を気に入ってくれていた。
今どうしているのだろう。
最後の下記の部分は感動的だ。(とくにハーモニックスの箏の奏法)。





今年はマンドリン合奏曲中心でギター独奏曲が手薄になってしまったが、この曲を再開したい。

砂 山 北原白秋作詞 山田耕筰作曲


砂山 井原義則 2012


砂山 /尺八:宮田耕八朗・箏:野坂恵子




(一)
 海は荒海 向こうは佐渡よ
 すずめ啼け啼け もう日が暮れた
 みんな呼べ呼べ お星様出たぞ

(二)
 暮れりゃ砂山 汐鳴りばかり
 すずめ散り散り また風荒れる
 みんな散り散り もうだれも見えぬ

(三)
 帰ろ帰ろよ 茱萸原(ぐみわら)分けて
 すずめさよなら さよなら明日
 海よさよなら さよなら明日

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