緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

左指の安定度を増す運指法

2022-03-19 21:17:38 | ギター
今日たまたま、中学2年生の時に見ていたNHK「ギターを弾こう」という番組のテキストを開いてみたら、当時お気に入りだったカルカッシの練習曲が目に入り、これを久しぶりに弾いてみることにした。

カルカッシ Op.59(いわゆるカルカッシギター教則本)の中の50の練習曲、第16番「カプリッチョ」

この40年以上も前のテキストの著者は鈴木巌さん、1977年の「ギターを弾こう」の講師でもあった。





このカルカッシの練習曲は一見、アルペジオの練習曲で右手のための練習目的で作られているのように思えるのだが、鈴木氏が楽譜に書き込んだ「点線」を見ると、左指を安定させるための指使いを習得させる目的も同時に含んでいることがわかる。
オリジナルのカルカッシの楽譜にこの点線の記載があったとは思えないが、鈴木氏がこの練習曲を題材に、安定度を図るために必要な運指法を示したものだと思われる。







点線の始点から終点までは指は離さないで保持する。
実際に弾いてみると最初は違和感があったものの、慣れてくるとなるほど左手が安定しているのが感じられた。
保持した指が「支柱」の役割を果たし、指を全て弦から離すことによる音の途切れや押さえ間違いを防いでくれるというわけだ。
これは確かに有効な運指法だ。

以前から、後で弾く音と同じ指を使うから、離さないでおく、といういわゆる「影の運指」による運指法は基礎技巧を習得する段階で重要視されていたが、それだけでなく、「支柱」のような役割も与えるためにあえてその指は離さないで保持しておく、という考え方は新たな発見であった。
今後この運指法をこの曲以外に応用して、意識しなくても自然に出来るようにしていきたい。

カルカッシの練習曲は以前、音楽的に劣るから教材として採用しなくてもいい、なんていう意見を少なからず聞いたことがあるが、それはカルカッシの曲から得られるものを十分に理解しないまま発言されたものと思われる。
カルカッシの練習曲は初級~中級レベルが豊富であるが、このクラスの練習曲には学ぶものが豊富に含んだものが多い。
ソルの練習曲の中でも、初級レベルでいいものがなかなか無いのと対照的だ。

なんだかんだいってカルカッシの練習曲は永久に受け継がれていくものだと思っている。

【追記】
鈴木巌さんの名著「演奏家を志す人のためのクラシック・ギター教本」の第1巻に、この曲が掲載されていたが、点線の表示はNHKギターを弾こうのテキストの譜面よりも更に細かく記載されている。




コメント