緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

上越・信州小旅行記(11)

2020-11-14 00:44:30 | 旅行
(前回からの続き)

中土を過ぎた後からいねむりをしてしまった。
寝不足と疲れのせいだ。そして平岩、小滝、根知といった駅のエリアがこの路線の最大の見どころだ。
川伝いにトンネルをいくつか抜け、錆だらけのこげ茶色の鉄橋を渡り、渓流をジグザグに進んでいく。
このあたりから列車はスピードを緩め、所によっては思いっきり速度を落として石橋をたたいて渡るように慎重に通過する箇所もある。

ここでこの旅最大の失敗に気付く。
列車の一番前の席に座らなかったのである。
南小谷駅で後から乗車してきたじいさんが、先頭座席に座ったので、列車前面の窓から見える景色が遮られてしまったのだ。
これは大きな誤算だった。何故先頭座席に座らなかったのか。
幼い頃から強固に形成されてきた性格特性である、遠慮する、人目を気にする、恥ずかしいという傾向のためである。
まさか前方の窓に向かって身を乗り出しているこのじいさんが鉄道ファンだとは思いもしなかった。
じいさんの視界を遮って、前方の窓にしがみついて景色を見ることも出来たかもしれない。
しかし私にはそれが出来なかった。
私が克服すべき課題はそこなのである。しかし課題を認識しながらも、同じことを繰り返す。

いささか煮え切れない気持ちをかかえながら、とぎれとぎれ見えてくる景色を眺めていた。
終着駅である糸魚川駅に近づいた時、予定を変更してこの大糸線の南小谷~糸魚川間を逆方向に乗車してみようと思い立ち、時刻表を素早く開いて時刻を確認する。
糸魚川から引き返すルートに変更した場合、自宅に着くのは夜遅くになる。
出来ないことはない。
しかししばし考え、後日、もっと天気のいい日に改めて訪れることに決めた。
この選択は後で考えると正解だったと思う。
この大糸線の見どころは南小谷⇔糸魚川間だ。天候がいい日に乗車した方がもっと楽しめるはずだ。



糸魚川駅に降りてすぐ、ヒスイ物産館が駅校内にあったので行ってみた。
糸魚川はヒスイの産地らしい。カケラのような原石でも数千円の値段が付いていた。
高いものだと数万円~20万円くらいのものでさまざまだ。
糸魚川産に混じってごく僅かであったが、ミャンマー産の原石も売られていたが、これはずっと安い。

ヒスイの加工品や原石に混じって、ヤキ石(ヤクイシ)のぐいのみが、4,000円で売られていたので欲しくなって衝動買いしてしまった。



糸魚川で取れた石を加工したものだという。
これを衝動買いしてしまったので元々買うつもりだった日本酒は止めた。
この4,000円という値段は適正なのか。
ヤキ石を探す工数を1H。加工は機械による切削加工+手仕上げであろう。
材料費はゼロ円。
機械加工チャージ率を2,500円/H、機械加工時間を0.25Hとし、仕上げの二次加工工数を0.5H、機械の段取り工数を0.2H、賃率を3,500円/Hとすると、このぐいのみの原価は下記の試算となる。
(ヤキ石が探す時間は計算に入れなかった)

0.25H×2,500円/H+(0.5H+0.2H)×3,500円/H=3,075円
販売費等の経費と利益合わせて25%だとすると、
3,075円÷0.75=4,100円
まあ、4,000円という値段はそんなにふっかけた金額でもないか。
大量生産でなく、1品ものだから値段は現実的なのかもしれない。

昼飯は昨日松本駅で買ったパンの残りとコンビニで買ったおにぎりで済ませた。
4,000円のぐいのみを衝動買いしたからにはぜいたくは出来ない。

糸魚川駅周辺は何もない。日本海が近くに見えた。







雨も降っていたので外には出ず、駅構内の待合室で時間を潰す。
14時46分発のはくたか56号に乗り、この2泊3日の小旅行は終止符を打たれた。

<旅を終えて>

今回はローカル線の旅を目的とした。
観光地など、人出の多いにぎやかな所は避け、静かで素朴な所に行きたかった。
鉄道に揺られながら、また静かな質素な旅館でテレビもつけずに佇みながら、自分のことを振りかえってみる時間はありあまるほど持つことができた。
この記事を読んで孤独感や寂寥感を感じる人がいるかもしれないが、自分ではそのような感情は殆ど感じなかった。慣れたせいもあるのかもしれないし、自分に受け入れられているのかもしれない。
もし普段の日常で、自分のことを振り返ってみる時間を持てないとか、家族などの人間関係に疲れたとか、そのようなことになっている方がいるのであれば、このような旅をしてみるのもいいのではないか。
ローカル線の旅で得られるものは必ずしも鉄道目的だけではないはずだ。

【追記202011141307】
計算式訂正。
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