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世界の中心で吉熊が叫ぶ

体長15センチの「吉熊くん」と同居する独身OLの日常生活

片想いの香り

2006年08月19日 | Weblog
「あっ…。」

尾道の商店街で、驚きの声を隠すことができなかった。
仏具屋さんの店先で、販売していていたお香。
何気無く手に取り嗅いだ瞬間…ふと、感嘆の溜め息が私の唇から漏れた。

私の鼻孔から脳に侵入したその香りは、凛とした音を発しながら拡散した。
そして、眠っていたはずの記憶がプチプチと弾けた。

あの人の香りだ。

そう思った。
私の横を通りすぎるとき、彼の躰から薫る、切ないような甘いようなあの香り。
13年が経過した今も、香りの記憶は風化せずに私の中にずっといる。

あれから何人かの殿方と付き合ったが、彼等の香りが私の記憶に残ることはなかった。

「好きです」…たった一言、心に秘めた想いを告げることができなかった片想いの香り。鮮明に私の記憶に残っている。
ふとした瞬間、彼に似た香りを嗅ぐ度に、記憶のシャボンは私の中で弾けた。

随分、彼の香りを探した。
香水の専門店、男物の整髪料…。結局、同じ香りは見付けられなくて、CHANELの「CHRISTAL」が一番彼の香りに近いということが判明した。
そのことが分かったときよりも、尾道の商店街で嗅いだ香りと彼とがリンクした瞬間の衝撃の方が、比にならないぐらい大きかった。

「尾道のにおい 海」

罪な香りだと思う。
皿の上で、真っ赤な点がやがて白い灰になっていく様子を見ながら、静かに溜息を吐いた。
その刹那、煙が揺らめいた。
まるで私の心のようだ。

彼自身の面影よりも、彼から放たれた香りの印象は、何故こんなにも強烈なのだろうか。
嗚呼、眠っていた想いが、目覚めてしまったではないか。
どうすればいいのだろう。

…どうにもできない。
…どうにかしたい?
…でも、どうにもならない…。

想いを告げることすら許されない、そんな遥か彼方に彼は行ってしまった。

遠いところに想いを馳せる。
尾道も彼も、容易に手が届かないところに存在しているから、
私の中で好きな気持を存続することが可能なのだろうか。

残した香りの罪の大きさのことなんて、彼は微塵も思ってないに違いない。
そうやって、この世界のどこかで今もきっと息をしているのだろう。

私も息をしている。たぶん、明日も明後日も明々後日も。
片想いの香りと、共に。
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土曜出勤

2006年08月19日 | Weblog
こんなに気持良い土曜日なのに、出勤。

いつもより空いている電車に揺られ、あくびが一つ…。

さて、働くか。

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ストッキングとOL

2006年08月18日 | Weblog
今日から出勤。
夏休みは毎日、生足にサンダルで緊張感ゼロライフを満喫していたんだが、今日からそうはいかない。
ストッキングにハイヒールという標準化されたOLの足元で過ごさなければならない。
これが非常に苦痛を伴う。
汗に濡れた足に密着するあの化繊の感触といったら…。
あれってそもそもなんなんだろう。
存在意義自体が謎である。

足を美しく見せるために履くものなんだろうか。
…でも、ほぼ透明だし。青あざをカバーできないどころか、脛毛もカバーできないではないか。

それとも、外傷から足を守るためのものなんだろうか。
…でも、ストッキングの上からでも蚊に刺されるし…。
しかも、ストッキングを履いたまま蚊に刺されると悲惨なんだな、これが。
伝線が怖くて、おもいっきり掻けないんだもの。
だからトイレの個室でストッキングを下ろして、存分に掻くのだ!
ぼりぼり!
あの気持良さったらない!
血がにじむまでボリボリ掻きまくる!
で、ウナコーアをつけて「ひや~ん」と声にならない声を出して悶絶する。

これは私の夢。
今日みたいにバタバタする日は、トイレにも行けない。
春に、これが原因で膀胱炎になった。

ストッキングとOLは切っても切れない関係だ。
しかし、蚊とOLの方が親密ではなさそうだ。

べつに大自然の中で業務をしているっていうわけではない。
それなのに蚊に刺される私。

ストッキングの謎云々より、こっちの方が深い謎である。


編物

2006年08月17日 | Weblog
母が、吉熊にオーバーオールを編んでくれた。
「Y」の文字が何とも可愛らしい。

吉熊の周囲にいるのは、母の手作りの人形たち。
デレデレの吉熊。

…ハーレム状態?

母の編物の技能を、私は享受できなかった。
カギ編みを教えてもらったこともあったが、中学生のとき、3平方センチメートルの面積を編むのに、私は3時間もかかった。
母も教えることを諦め、そして私は興味を失った。

当然、「彼氏に手編みのマフラーを…うふ」という発想が、私になされたことがなかった。

今でも、母の編物をする過程を不思議な気分で眺めてしまう。

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宇都宮美術館

2006年08月17日 | Weblog
今日で休みも終り。
明日からまた殺伐とした毎日が手招きをしている。

母と宇都宮美術館へ行った。
ここは、宇都宮で私が一番好きな場所だ。
市街地からやや離れた高台にあり、緑も多い。

美術館のレストランでランチをしたあと、宇都宮美術館コレクション展を観た。
シャガールの絵が2枚あった。
「青い恋人たち」
「緑、赤、青の恋人たち(村の上で)」

「青い恋人たち」…シャガールの妻を亡くした悲しみを表現した作品らしい。
抱擁する男女を取り囲むように、キャンバス全体から滲出る青色が、なんとも悲しげで神秘的であった。

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夏のノスタルジー

2006年08月17日 | Weblog
8/16
実家に帰っていた。

夕方暇だったので、吉熊と散歩に出かけた。
三舛屋(大型スーパー)で買い物を済ませたあと、13年前に卒業した雀宮中学校に寄ってみた。

西日に光る校舎は、私を追憶の彼方へ誘った。

私の思春期を費やした場所。
たくさん笑い、たくさん泣いた。
幼い情熱を胸に秘め、夢らしきものも持っていた。

校舎のにおいが、ふと鼻をかすめた。
揺れ動く心。
蘇る思い出たち。

一日一日の思い出の多くは時間によって風化してしまったが、
においだけは忘れられない。

ここに来ると、夢見るパワーを貰える。




あの曲がり角をいつも奇跡を信じて歩いていく

2006年08月17日 | Weblog
8/15

さて、トリロジーの風に吹かれる旅も終わったわけだが。
旅のあいだは、現在・過去・未来について、深く考えている時間などなかった。

仕事の件で吉熊上司から問い合わせの電話を受けたり、株式指標を携帯からチェックしなければならなかった。

結局、それが現在・過去・未来を含め、「自分自身」なんだ。

瀬戸内海の風に吹かれながら、そう思った。

現在置かれた状況の後ろには過去がある。
生まれてから今に至る私の過程だ。

未来というものは現在の果てにある。
まだない。
これから作るものだということを実感として得られた旅だった。

今、この現在という時間を大切に生きないと、過去を慈しむことができないばかりか、未来も自分が望んでいないものになりかねないということだけ、おぼろ気に感じた。

そう考えると、今を生きるって、けっこうプレッシャーだ。

尾道の小道は入り組んでいる。
目指すべき寺に行き着く前に怪しげな小道があると、「何か綺麗な景色がありそう」と私は地図にはないそっちの道に進んでしまう。

行き止まりにあったり、今まで知らなかった景色にあたったり…そんなことを繰り返している尾道の旅だ。

生きることは大変なこと。
でも、あの曲がり角に奇跡があると、私は信じている。
期待ではない。
信じているんである。
それだけで、生きることに望みを持っていても良いような気がする。
プレッシャーなんて、クソくらえだ。

坂道でウロウロしていると「どこ探しとるんか?」と声をかけてくださったおばあちゃん。ありがとう。
私の人生も然りで、そんな皆さんのお言葉がどんなにか、ありがたいことか。

まだ私の「人生の旅」は終着駅を迎えてないっぽいので、今後とも宜しくお願い致します。



ただいま。

2006年08月14日 | Weblog
帰宅し、ただいま風呂上り。
無事、帰ってこれた。何よりだ。
あとは山のように溜まった洗濯物と、厳しい現実…。

また楽しみを見つけなくっちゃ★
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4日目 (6)旅の終わり

2006年08月14日 | Weblog
夕方。
17時53分の電車で尾道とサヨナラをする。

仕方がない。
時間は止められないのだから。

福山から新幹線に揺られる。
進行方向、向かって左側。
夕暮れに染まる山々を見ながら、旅行の思い出に浸った。

東京駅に近付く途中、窓の外に東京タワーを見た。

トラベルブルーが不思議と消えていった。
また約360日ぐらい頑張って、来年もあの町へ行こう。
そうしよう…ね?吉熊。

4日目 (5)Save your dream

2006年08月14日 | Weblog
ロープウェイで千光寺を下る。
見晴らしが良く、鳥になった気分だ。
華原朋美の「Save your dream」の高音が、何故か頭の中で鳴り響いた。

4日目 (4)千光寺

2006年08月14日 | Weblog
大林監督の生家らしき家を見たり、中村憲吉の家を見ながら坂道を登る。
いつもは千光寺までロープウェイにて登るのだが、「今年は千光寺まで歩いてみる」と密かに決めていた。
石段を一歩一歩踏みしめる。
全身を太陽が焦がす。
滴る汗を拭い、振り返ると…やっぱり海。
海は「頑張れ」と背後から応援してくれているかのようだ。
千光寺まで登り、お参り。
お守りや絵馬を販売しているおばちゃんに
「昨日、会わはった人や~。そうやろ?」と言われた。
そう言えば、なんとなく坂道で挨拶を交したような。

尾道というところは、そこらかしこで挨拶が繰り広げられるんである。
知らない人にさえも声を掛けてくださる。
狭い路地裏で道を譲り合う時とかに「暑いですね~」といった具合いに。

4日目 (3)ドビン

2006年08月14日 | Weblog
尾道のガイド犬、ドビン発見!
「めざましテレビ」の「きょうのわんこ」にも出ていたドビン。
4年目にして、初めて遭遇した。

見た瞬間「ドビン!」と叫んで追い掛ける自分がいた。
ドビンは、逃げていった…しかも駿足。


4日目 (2)Qちゃん

2006年08月14日 | Weblog
商店街をブラブラ。
Q太郎発見!
20円と投入口に記載されていたが、…入れる勇気がなかった。

4日目 (1)文豪誕生

2006年08月14日 | Weblog
ホテルのチェックアウトを済ませ、喫茶「芙美子」にてモーニング(たまご粥)。
庭を挟んだところに林芙美子が住んでいた家がある。
自由に入れるというので、食後、入ってみた。

質素な6畳間。

文机で文豪気取りの吉熊。
代表作は「世界の中心で吉熊が叫ぶ」。

3日目 (9)尾道の夜

2006年08月13日 | Weblog
一旦ホテルに戻るも、「このままではいけない!もっと尾道を堪能しなければ!」
と思い立ち、再び外へ。
辺りは薄暗い。
渡船に乗り込んだ。
向かい側の向島へ船は動きだした。
夜の海は黒い。
のっぺりとした水面がネオンに反射し、時々うねるのが見えた。

向島にタッチし、船はやがて再び尾道側に戻りだした。

ふらりと立ち寄ったレストラン「やまねこ」
ジントニックとつまみを取る。
グラスから流れてくる液体は上唇を刺激し、私の思考能力を麻痺させた。

海岸通りを行き交う車を眺めつつ、尾道での最後の夜を過ごした。