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世界の中心で吉熊が叫ぶ

体長15センチの「吉熊くん」と同居する独身OLの日常生活

去る者の背中を見つめて

2012年06月29日 | Weblog
人事部長・T部長が当社を去った。
勤続27年。当社の生き字引みたいだった彼女。
女性唯一の部長職に君臨。

彼女は風紀チェッカーの役目も担っていた。
我々女子の間では、
「その服、T部長的に駄目なんじゃね?」
という会話に用いられるという、彼女の好みは皆の基準そのものだった。
永山基準、みたいな。


13年前。
社長面接が終わり、社長室の隣のソファで、リクルートスーツに身を包んだ私に「あなたを当社に迎い入れたいと思います」と両手を伸ばしながら内々定をくれた。

会社でキレてしまったとき、私を落ち着かせるために「大丈夫よ」と抱き締めてくれたことや、トイレで美術館談義に花を咲かせたことなど、走馬灯のように思い出す。

私は割と彼女には好かれていた。
トイレに貼るポスターを作るように頼まれたことがあり、勝手にクマのイラストを入れたときも「まあ!」と驚かれたが、怒られなかった。

出勤最終日の今日は、取引先から彼女宛にたくさんの花が届き、部長の周囲がなんだか花屋みたいな様相を呈していた。

定時後、フロアの全女子が集まり、彼女を取り囲んだ。
「T部長、お世話になりました」
と皆で一斉に言って別れを惜しんだ。
そして火曜日に私とCちゃんが買ったプレゼント(ウエッジウッドのティーカップ&ソーサー)を贈呈。


「ありがとうね。あなたたちも頑張ってね」
と、部長は目にうっすらと涙を溜めていた。

私が会社を辞めるときは多分大泣きするに違いない。
勤続12年。やはり様々な思い出がある。
部長には私の倍、27年間の思い出があるのだから尚更だと思う。
しかし、自らの感情に蓋をし、彼女は最後まで凛とした姿を我々に見せつけた。
27年、あの会社でやっていくには、あれだけの強さが必要なんだというのが、残された皆の一致した意見だ。

今夜、人事部は高級ホテルの中華で送別会らしく、人事部一同はバタバタと去っていった。



明かりが消された人事部エリア。
その奥にある、さっきまで部長がいた机が、少しだけ寂しそうに見えた。

部長、今までありがとうございました。

私、頑張ります。

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