晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

宇江佐真理 『斬られ権佐』

2015-10-17 | 日本人作家 あ
この話は、仕立て屋の息子で与力の小者の権佐という男の話です。

権佐は仕立て屋の仕事のかたわら、八丁堀の与力、菊井数馬の小者を務めています。妻は医者のあさみ、ふたりの間にはお蘭という五歳の娘がいます。
あさみの父は八丁堀の医師で、長崎で修行してきたあさみは美人で有名で、言い寄る男は数知れず。その中に数馬もいました。

数馬と権佐は知り合いで、ふつう与力は小者を使ったりしないのですが、権佐は数馬の捕物の手伝いをするようになり、あさみのことを聞いた権佐は一目見て「美人だなあ」と思ったぐらいで別にどうしようとしたわけではなかったのですが、ある日、あさみに振られた男があさみを襲おうとして、それを助けに入った権佐は体じゅうを刀で斬られて、そしてあさみは権佐を手術でなんとか治療します。意識を失いかけた権佐にあさみは「あんたのお嫁さんになってもいいから」と励まします。
命をつなぎとめた権佐でしたが、体は不自由になり、仕立て屋の仕事は簡単な手直しぐらい、捕物の手伝いは歩くのがやっとの状態ですが、弟の弥須に手伝ってもらっています。

あさみは同情から権佐の嫁になったのか・・・

一方、権佐にしても、数馬があさみのことを好きだったことは知ってるので、なんとも微妙な立場。

表題作「斬られ権佐」は、上記の登場人物のざっと紹介があり、本筋の事件へ。向島の松金という料理屋で亭主が殺されて番頭が重傷。後添えに入った女将がどうもあやしいのですが、番頭の治療をしているあさみの診療所に若い男が・・・

「流れ灌頂」は、そば屋と幽霊の話。権佐が子供のころからの馴染みのそば屋「はし善」は最近、蕎麦の味が落ちたと噂で客が減っているよう。というのもそれまで蕎麦を打ってた息子が独立してそば屋を出したことで、父親の蕎麦では味がいまいち、ということ。
そんな中、あさみのところに女性の急患が。その女性は「はし善」の息子の嫁だったのです。聞けば、息子のそば屋はツユの味がいまいちで客足が悪いとのことで、嫁は妊娠していたのですが堕胎し、すぐ働きに出て体を悪くしたのです。そのころ、堕胎専門の医者の近辺で幽霊騒ぎが・・・

「赤縄」では、陰間茶屋で相対死(心中)事件がおこります。ふたりの男がお互いを刺したよう。陰間とは、男娼のことで、女形の役者が副業あるいは専門でやっていて、この事件では陰間と相手は武士。その武士は大名家の家臣で祝言が決まっていたというのですが・・・

「下弦の月」では、あさみが数馬の家を訪れて、まだ数馬はあさみに未練が残っていると知り、権佐に言うと「考えすぎだ」と一笑。そんな中、権佐が腹痛を訴え、診てみると、腹に水がたまっていてしばらくは安静にしていなければならず、あさみはこれを機に小者を辞めるように数馬のところに。ところが数馬は「権佐は捕物が好きで生き甲斐だ」と。そして町では不審火が相次いで・・・

「温」では、おしげという女性が殺されます。おしげはお菓子屋の隣に住んでいて、近所の子供たちが集まっては般若心経を聞かせて飴玉を配っていたのですが、そんなおしげの下手人は鋏研ぎの青年というのです。しかしその青年にはアリバイがあり、調べを進めていくうちに、おしげに子がいたことが分かり・・・

「六根清浄」では、いよいよ権佐の具合が悪くなり、あさみは医者の仕事がいそがしく、娘のお蘭が花見に行きたいとせがんでも連れて行ってあげられません。そんな中、ある盗賊が人足寄場から戻ってくるとのことで、奉行所はざわつきます。その盗賊には娘がいるのですが、一膳飯屋にあずけられて、もう父には会いたくない、と。すると、お蘭の行方が分からなくなり、捜索していると、件の盗賊の娘がかどわかしに遭い、そのときにいっしょに女の子がいたと・・・

これはキャラクター設定が面白くて続編を期待していたのですが、豪快にネタバレを書いてしまうと最終話で権佐は死んでしまい、続編は期待できませんでした。まあつまりそのくらい面白かったということです。

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