晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

浅田次郎 『あやしうらめしあなかなし』

2015-10-05 | 日本人作家 あ
この小説は「こわい話」の短編となっていて、こわいだけではなく、それこそタイトル通りの「かなし」い話だったり不思議な現象だったり。

設定としては、奥多摩の山奥にある母の実家の神社に「私」が子供のころに泊りに行って伯母から聞かされた話ということになっています。

「赤い絆」では、ある男女が神社に泊りにやってきます。この神社は講中の宿坊をやっているので泊めることに。しかしその男女、お互いの手首を赤い紐で結んで、男は学生風、女は堅気に見えないといったワケアリ。
その夜、男女は毒を飲んで、急いで医者を呼んできたのですが、男はすでに手遅れ、女はもがき苦しんでいます。神主は女を死なせてやろうとしますが、医者は「それは殺人だ」と止めます。そして翌日、男の家族が神社に来るのですが、まだ女は生きていて・・・

「虫篝」は、関西で会社を倒産させて東京に逃げてきた男の話。津山は関西でゼネコンの下請けの会社の社長でした。しかし会社は倒産、妻と子供を連れて夜逃げ。東京で貸し家に住み、仕事も見つけ、ひっそりと暮らしていたのですが、津山の近辺で自分そっくりな「あいつ」がウロウロしているのです。その「あいつ」は身なりも整っていてベンツに乗って、まるで社長だった時の津山なのです。そんな話を大家にすると、大家が自分にも似た話があると・・・

「骨の来歴」は、私の友人、吉永の話。吉永は高校時代の同級生で、今は軽井沢の山荘で株のトレーダーをして暮らしています。私は久しぶりに吉永に会い、昔話を聞くことに。吉永は高校を卒業して浪人時代に高校の同級生だった佐知子と交際していたのですが、佐知子の親から交際を反対され、佐知子は自殺。佐知子の親を呪った吉永でしたが・・・

「昔の男」は、銀座にほど近いところにある小さな病院の浜中ナースの話。婦長の逸見から「昔の男と会うの」と言われて、浜中は驚きつつも、病院から緊急連絡があっても自分が出ますから、と逸見さんのデートをバックアップします。一方、浜中は恋人とデート。そのとき、逸見さんと例の男を目撃します。その夜に病院から電話が。急いで病院に行く浜中。しかしそこには逸見が。浜中を信頼できずに携帯の電源を切っていなかったのか。落ち込む浜中。そこに優しくなぐさめてくれる総婦長が。しかし彼女の傍には逸見さんといた例の男が・・・

「客人」は、四十歳で独身、親の遺産で悠々自適に暮らす河野の話。新盆で、銀座のデパートに盆提灯を買いに行き、その帰りにふとバーに寄ります。バーのママと河野は話がはずみ、なんとママは河野の家に来ることに。そこで迎え火を焚いているうちに、河野にいやな記憶がよみがえり・・・

「遠別離」は、第二次大戦の衛兵、矢野の話。矢野は赤坂の歩兵一聯隊の留守部隊。視力が弱く丙種合格、いつ戦地に出されるかわかりません。その夜は風邪で具合が悪く、歩哨の交替のときに黒いコートを着て百合の花束を抱いた老婆が見えて・・・

「お狐様の話」は、「私」の伯母の小さかったころの話。神社に十歳くらいの女の子がやってきます。執事と女中のお付きを連れてきたその女の子は、狐に憑かれたとのことで、はじめのうちは伯母と普通に話をしていたのですが、そのうちに言動がおかしくなり・・・

できれば夏の寝苦しい夜に読みたかったのですが、いまはもうすっかり夜は涼しくなりました。読む時期を間違えた。
コメント
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