晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

宮部みゆき 『英雄の書』

2014-04-13 | 日本人作家 ま
たしか4年か5年前くらいにこの本の単行本を本屋で見かけたのですが
けっこう厚くて上下巻だったので、こりゃ文庫が出るまで待とうと思い、
それからずいぶん経ってしまいました。

小学5年生の森崎友里子は、学校での授業中、先生から家に帰るようにと
言われます。

母から衝撃的な話を聞かされる友里子。なんでも兄の大樹が中学校で、
同級生2人を刺して逃亡、その後行方不明となっている、と。

スポーツ万能で勉強も出来、明るい性格だった兄がなぜそんなことを・・・

兄の部屋に入り、そこで、いつか見た不思議な夢で聞いた歌が思い浮かび、
友里子は口ずさみます。すると、兄の部屋の本棚のほうから

「お嬢ちゃん」

と声が。

それは、表紙が何語で書かれているかわからない、赤い本。その本が友里子
に語りかけているのです。

夢の中で見た、兄が王様みたいな人といっしょにいたことを本に説明すると、
兄は”英雄”にとりつかれてしまった、というのです。

しかし、と友里子は考えます。ふつう”英雄”とは正義の味方、ヒーローの
ことをいうのではないか。なぜ兄は”英雄”に影響されて同級生を刺したり
したのか。

本はその問いには答えず、また”もとの本”に戻ってしまいます。

翌日、友里子は学校に行くと、友達や同級生がよそよそしく接し、中には
あからさまに「同級生を刺して行方不明になったヤツの妹」というふうな
態度を見せてくる子も。

いたたまれなくなった友里子は逃げるようにして家に帰ります。

夜になってふたたび兄の部屋に入った友里子は、赤い本に呼びかけます。
どうしても兄の行方を知りたいと訴えると、本は、友里子のお父さんの
叔父さん、大叔父の別荘に行けば分かると教えてくれます。

しかし、子供である友里子はその別荘の行き方が分からず、両親に、「
前に行った事のある大叔父さんの別荘におにいちゃんがいるかもしれない
から探しに行こう」と提案してみると、大叔父が亡くなってから管理も
してなく誰も住んでないはずで、そこに大樹がいるかも、と乗り気に
なって、車で別荘へ向かうことに成功します。

道中、友里子は車の中で赤い本と会話をします。そこで教えてもらった
のは、”英雄”とは本のことで、その本は大叔父さんが買ったもの。
そして、”英雄”は”無名の地”で封印されている、ということ。

別荘に入り、図書室へ向かいます。すると、書棚の本が光りはじめ、
赤い本に向かって「アジュよ、なぜその娘を連れて戻ってきた」
と語りかけます。

兄の部屋にあった本は”アジュ”という名前で、アジュは友里子の兄の
ヒロキが”エルムの書”を持ち出してしまい、”器”になってしまった、
と説明します。
すると、図書室の本の中の一冊が、ただの”器”ではない、”最後の器”
だと言うと、アジュは驚きます。
そして、”無名の地”では破獄が起こり、封印は破られた、と・・・

なんのことか意味が分からない友里子は、とにかく兄が大変なことに
なっているということで、その”無名の地”に連れてってほしいと
お願いします。

そこで、友里子は額”オルキャスト”、「印を戴く者」となり、”無名の地”
へと旅立つことに・・・

そこで出会う、「無名僧」と呼ばれる、同じ服装、同じ顔、名前も無く個性も
無い集団。彼らは何をしているのか。何のためにここにいるのか。”無名の地”
では、”狼”と呼ばれる者が、きっと友里子を助けてくれるだろう、と。
”狼”というのは何者なのか。
兄が憑かれてしまった”英雄”こと”黄衣の王”はどこにいるのか。そもそも
大樹はなぜ同級生を刺したりしたのか・・・

とまあ、ここまでが序盤。その後、友里子はユーリと名を変え、赤い本のアジュ
はネズミに召喚され、ソラという無名僧と、”狼”のアッシュと、アッシュの故郷
であるヘイトランドへと向かいます。

この話の中では物語の作家は”紡ぐ者”とされています。つまりあるひとつの世界を
生み出した者。正直に書きますと、どうにも終始、説明に普請して肝心の物語部分が
おざなりになってる感がありますが、しかし読み終わってみると、どうやらそこは
重要な部分ではないように思えてきます。

宮部みゆきという”紡ぐ者”の誕生させた、あるひとつの世界に読者を飛び込んで
来させる、受け身で物語を読むのではなく、能動的に”知ろう”とする、ある意味
”読む力”が問われるのではないか、と。





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