晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

山本一力 『峠越え』

2014-01-14 | 日本人作家 や
山本一力の時代小説には、たびたびアウトローの大物が登場します。
まあアウトローといってもロー(法)じたいがコロコロ変わって曖昧
な時代だったので、より現代風にいえば「反社会勢力」ですか。

『峠越え』では、今戸の芳三郎、達磨の猪之吉など、賭場を仕切る類
ではなく、女衒(女性を買い付け遊郭などに売るスカウト業)と、テキヤ
が出てきます。

深川に住む女衒の新三郎は、いきなり兄貴分に呼び出され、なにごとかと
元締めの土岐蔵のもとへ。
つい最近連れてきた4人が全員病気持ちだったというのです。

また新しく4人を用意できなければ、弁償として大金を払うか、それもでき
なければ、江戸湾に沈められることに・・・

新三郎は二月の期間で4人を探してくると土岐蔵と約束し、東海道へ。

江ノ島の手前で、新三郎は男たちに襲われそうになっている女性を助けます。
その女性とは挨拶もそこそこに別れるのですが、その夜、新三郎が出かけた
江ノ島の賭場で、なんと女壷振りとして現れたのです。

名前をおりゅう。はじめは負けていた新三郎でしたが、おりゅうの壷振りと
相性が良かったというか勝ち続けます。

賭場もお開きになって、新三郎とおりゅうは会うことに。たちまち惹かれあう
ふたり。そこで新三郎は江ノ島に来た理由を明かします。
するとおりゅうが、江ノ島弁天の御開帳を江戸で開催するプロデュースをして
みないかと誘います。その売り上げの一部を返済して女衒業から足を洗えばいい
ではないか、と。

さっそく江戸に戻った新三郎は土岐蔵のもとに行って、江ノ島弁天の御開帳を
回向院でやるプロデュースを説明。成功したら女衒から足を洗う。失敗すれば
おりゅうは遊郭に、新三郎は縄でぐるぐる巻きにされて江戸湾に・・・

そんな命がけではじめた御開帳ですが、なんといよいよ明日という日に大嵐に
なってしまい・・・

さて、タイトルの『峠越え』なのですが、御開帳をやることになったはいいけど
さまざまなトラブルに見舞われ、それでも乗り越えてゆくという意味での「峠」
もあるのですが、もうひとつの意味も。

なんやかやで御開帳が終わって、新三郎とおりゅうは土岐蔵に呼び出されます。
すると、江戸のてきや業を仕切る”四天王”と呼ばれる4人との集まりに顔を
出してくれと言われ、その席で、てきや四天王と土岐蔵の5人が久能山参り
に行くので、そのツアーコンダクターをやってほしい、と頼まれるのです。
久能山とは駿府、つまり静岡にあり、江戸からは箱根の関所を越えなければなり
ません。もうひとつの「峠」とは、このこと。

ジジイ5人の旅なのでワガママは言うわ体の不調を訴えるわ、新三郎とおりゅうに
無理難題が・・・

この話のキーワードは、人との縁。凡人は縁を生かせず気づかず、大人は袖触れ合う
縁も大事にします。駅のホームや電車内で袖触れ合うだけで殺傷事件になってしまう
現代社会に訴えかけます。







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