晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

浅田次郎 『ブラックオアホワイト』

2020-04-04 | 日本人作家 あ
もう4月ですね。とはいっても春のウキウキ感はウィルス騒動でそれどころではありません。桜もお彼岸のお墓参りに行くときににまだ2分咲き程度でしたがチラ見したぐらいで。
外出も控えめにしてこういうときは本を読みましょう。

さて、浅田次郎さん。浅田次郎さんの作品はハチャメチャな内容と真面目な内容とがありますが、今回読んだこの作品は、うーん、真面目といえば真面目なんですが、まあおおまかに説明するなら「夢の話」となっております。

学生時代の友人の通夜の帰り、出席していた「都築君」に声をかけられ、家にお邪魔します。「都築君」は高級マンションに一人暮らし。都築君の祖父は元南満州鉄道の理事。コネで商社に入って、バブル時代に海外を飛び回っていました。

ヨーロッパ駐在員でスイスに行ったとき、ホテルで寝ようとしたら枕がどうも合わず、違う枕を持ってきてほしいとルームサービスに頼みます。すると従業員が持ってきたのは、黒い枕と白い枕。そして「ブラック・オア・ホワイト?」と聞くのです。

そんなの別にどっちでもいいから白と適当に選ぶと従業員は「グッド・ナイト・サー」と言って去ります。そこで見た夢とは、「都築君」の祖父が出て来て、謎の女性が出て来て、なぜか誰かに追われてるという、本人にとっては面白くても他人に話したら特に興味を持って聞いてくれなそうな内容。

翌日、仕事を済ませると、なんとなく昨夜の夢の続きが気になってルームサービスを頼むと、また同じ従業員が。手には黒と白の枕が。「都築君」は白い枕をお願いすると、なんと従業員は黒い枕を勧めてくるではありませんか。普通、ある程度の伝統と格式があって標準以上のグレードのホテルであれば、客の要望とは違うほうを勧めるということは有り得ず、逆に興味を持った「都築君」は「じゃあ黒で」とお願いして、眠りはじめると、確かに登場人物は昨日の夢と同じなのですが、シチュエーションが違います。はっきりいうと、悪夢。

「都築君」はスイスでの仕事をしくじって、エリート街道から外れる格好に。それから、パラオ、インド、北京、そして京都と、どこへ行っても白い枕と黒い枕が出てきます。しかも決まって、人生の(さらに会社内における)大きな転機のときに。これは夢なのかそれとも現実なのか・・・

落語が好きな方なら「夢」ときたら「芝浜」と出てくるでしょう。あの話も、最終的には「分」とか「了見」、簡単にいうと「立ち位置」が大事だよ、という裏テーマがあるような気がするのですが、バブル時代も海岸で大金を拾うのも同じ「あぶく銭」。
「分」や「了見」を間違えてはいけませんね。

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