晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

大崎善生 『パイロットフィッシュ』

2011-08-24 | 日本人作家 あ
この作品は、第23回吉川英治文学新人賞を受賞したそうで、
帯には「青春文学の傑作」とあり、かなり期待を込めて読み
始めました。

主人公の「僕」こと山崎は、ある経緯でエロ雑誌の編集という
仕事に。そんなある日、19年ぶりに由紀子から電話が・・・
「僕」は、何をするにも曖昧、優柔不断、くわえて方向音痴で、
上京して大学に入るもうまくまわりと馴染めず、アルバイト
をしようと都内の某駅を下りて、電話の説明では「駅から歩い
てすぐ」のところにあるビルに辿り着けずにさまよっていた
ところ、由紀子と出会います。

ここから、「僕」は由紀子と恋人のような、そうでないような
関係が続きますが、ふたりの共通のお世話になっていた人が
事故死してしまい、呆然となり、「僕」は、そんな中、由紀子
の親友と関係を持ってしまうのです。

それから由紀子とは音信普通になってしまい、自然消滅。

エロ雑誌の編集というのも、煮え切らない「僕」の背中を押し
てくれたのが由紀子で、それから長い月日が経ち、「僕」は
はじめこそ自分の仕事を軽く卑下していたのですが、いまでは
編集長。

さて、19年ぶりに会うことになったのですが・・・

エロ雑誌の編集部の人たち、「僕」が雑誌の仕事で知り合った
風俗嬢、「僕」の現在の彼女、「僕」といっしょに状況してきて
現在入院している友人、お世話になっていた喫茶店のマスター一家、
などなど、サブキャラクターの設定がおもしろく、また描写も上手。

どストレートな青春物語とは、ちょっと違います。まあ青春
とは屈折しまくりですから別にいいんですけどね。

ひらたくいってしまうと「ノルウェイの森」の廉価版のような感じ。

題名の「パイロットフィッシュ」とは、水槽で魚を飼おうと
するときに、魚がその水でも生きていけるように、まずは
小魚を入れて、いわば「水を慣らす」とでもいいましょうか、
でもその小魚は実際に飼いたい魚ではないので、水が慣れて
きたらあとはお役ご免となってしまうそうで、なんとも残酷
な話。

そうですね、青春とはいかに残酷か。しかし、青春時代が終わった
と感じる歳になっても依然として残酷、というまとめ。

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