晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

恩田陸 『六番目の小夜子』

2011-02-03 | 日本人作家 あ
それまで、本を読むという習慣が無かった僕に、読書の楽しさ
を教えてくれたのが、恩田陸の本屋大賞受賞作「夜のピクニック」
で、それから、俗に言う「本の虫(「読書家」にはまだ程遠い)」
になったのですが、その後、恩田陸のほかの作品はあまり手にとって
いません。

この「六番目の小夜子」は、実質、いや正真正銘のデビュー作。
地方の進学校に伝わる、謎の多い「サヨコ伝説」の話、なのですが、
高校時代のなんともいえない甘酸っぱさというかほろ苦さを描かせ
たら当代一!と言って差し支えないと思いますね(「夜のピクニック」
も高校生の話)。

この高校では、三年に一度、「サヨコ」に選ばれた生徒が、「ある事」
というか、ある任務をするのです。
そして、今年はその三年目、校内には、「サヨコ」が選ばれたことを
あらわす、赤い花が教室に飾られていたのです。

受験を控えた3年生という中途半端な時期に、転校生が。彼女の名前は
津村沙代子。美人で活発、成績優秀。もしや、彼女が「サヨコ」?

しかしどうやら、赤い花を飾ったのは沙代子ではないらしく、別に3年生
の中に「サヨコ」に任命された生徒がいるはず。

この「サヨコ」は、今年で6代目となり、前の代で不幸にも交通事故で
亡くなった「サヨコ」がいて、その呪いなのか、「サヨコ」に選ばれた
生徒が文化祭で“あるイベント”を成功させなければ、その年の3年生
の大学合格実績はひどいことに。しかし成功すれば、実績は良いものに。

話の大事な部分になるので、おおまかにいうと、じつは「サヨコ」は
女性でなければならないというルールはありません。
そして、今年の「サヨコ」を知っているのは、文化祭実行委員長だけ。
なぜなら、文化祭であるイベントを行うために、実行委員も動かなければ
ならないのです。

恋愛、友情、受験、将来の不安、大人になって振り返ってみれば、
ああなんてどうでもいいことにあんなに真剣に悩んだり怒ったり考えたり
したんだろうと笑えることも、高校生の年代にとっては一大事。

文中で特筆すべきは、6代目「サヨコ」の企画した、全校生徒を巻き込んだ
イベントがあるのですが、ここで、このイベントの演出効果として、エリック・
サティの「ジムノペティ」がBGMに使われます。
読み進むにつれて、頭の中でこの曲が流れてきました。
タイトルだけでは分からないという方は、youtubeなどで聴いてみてください。
ああ、この曲ね、と一度は耳にしたことがあると思います。
そして、この「イベント」のシーンで、実際に曲を聴きながら読んでみる、
文中に飛び込んでみて、彼らと同じ体験をしてみる、というのも一興。


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