晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

スコット・トゥロー 『推定無罪』

2010-08-18 | 海外作家 タ
スコット・トゥローといえば、ジョン・グリシャムやリチャード・ノース・
パタースンなどと並んで、1980年代後半のリーガル・サスペンス小説
ブームの旗手、として有名ですが、特にこの『推定無罪』は、小説は本国
アメリカでベストセラー、イギリスのミステリー文学賞受賞、さらに、
ハリソン・フォード出演の映画は大ヒットと、まさに金字塔といった作品
なのですが、『推定無罪』以降に出版された小説を先に読んでしまった感想
としては、これが最初にして最高だったのではないか、と。

もちろん好き嫌いはあるでしょうが、『推定無罪』は大衆文学的に描き、
それ以降の作品は、純文学的に描いたり、また、純文学と大衆文学の橋の
中間のようにした、とする作品もあったりして、なんというか、いい意味
でいえば「新鮮」なんでしょうけど、この「ぶれ」が賛否の分かれるところ
でもありますね。

でも、今まで読んだ作品すべて、緻密な構成、人物の背景や心理、情景といった
描写は見事で、法廷における、原告対被告といったシンプルな対決構図だけでは
なく、そこに、裁判のあり方、さらに法制度そのものを問う、といった主テーマ
は、たんにハラハラドキドキするだけでなく、いち裁判の深み、重みを感じさせ
てくれます。

4月、女性検事のキャロリンが、自宅で殺害されているのを発見されます。
検死結果によると、性的暴行を受けた後に後頭部に打撃を受けて死亡したと思われ、
キンドル郡の地方検事、レイモンドは、検事補のロバート・サビッチに、検察側
からこの事件の捜査を依頼します。
しかし、じつはかつてロバートは一時期、キャロリンと関係を持った時期があり、
複雑な思い。さらに、地方検事の選挙が間近に迫って、出馬するレイモンドは
頼んだまま多忙で、ロバートの相談に耳をかしてくれず、同じく次期検事選挙に
立候補している、ロバートと同期のニコ・デラ・ガーディア(通称ディレー)から
は、レイモンドの負けは濃厚で、じぶんの当選したあかつきにはロバートを次の
主席検事補にしたいとのたまいます。

ロバートは仲の良い刑事のリップの協力のもと、独自で捜査をはじめます。
そこに、かつてキャロリンが担当していた保護観察時代のファイルが抜けている
ことに気づいたロバートは、なんとか時間の空いたレイモンドにその件を訪ねると、
あるコピー用紙をロバートに渡します。
そこには、ある男が、賄賂を送って無罪となり、それに検察や判事が絡んでいる、
という匿名の手紙で、なんとそこには、ディレーの片腕の検事補モルトの名前が・・・

捜査も行き詰まっていた中、晴天の霹靂が。キャロリンの部屋にあったグラスに
ついていた指紋が検出されます。なんとそれはロバートの指紋。
ロバートは、キャロリン殺害と、独自捜査でつかんだ情報を検察に教えなかった
情報隠避の疑いがかけられ・・・

本筋に並行して、ロバートが精神科医にカウンセリングを受けているシーンが
あり、心の悩みを吐露します。
キャロリンとの出会い、家庭がありながら彼女に惹かれてしまった自分の脆さ、
妻バーバラと自分との問題、そして、突然キャロリンから別れを切り出された
ときのショック、さらに、その後釜の愛人は、ロバートのよく知る人物。
夜、ロバートはショックからか、酒で開放的になったからか、バーバラに不倫の
事実を告白。しかしバーバラは夫を愛していて、別れない、と。
そしてロバートには、ある恐ろしい感情が芽生えます。キャロリンが死ねばいい・・・

ロバートの弁護士には、キンドル郡内きってのやり手弁護士、アレハンドロ(サンディ)・
スターンが担当することに。原告である検察側には、新任の検事であるディレーと、
検事補モルト。

ここから、裁判となっていくのですが、この裁判の判事には、ラレン・リトルという
検察の敵、被告の味方として有名な黒人判事が担当に。しかし、検察側証人に、なんと
レイモンドの名前が。
はたして、ロバートは無罪を勝ち取れるのか。キャロリンを殺したのはいったい誰か。
警察、検察に漂うきなくさい雰囲気。ロバートは嵌められたのか・・・

裁判の行方、真犯人と知るごとに「ええっ」「ああっ」「マジっ?」と思わず声が
出てしまうほど。家で読んでいてよかったです。


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