晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

池波正太郎 『黒幕』

2017-07-08 | 日本人作家 あ
この作品は、だいぶ初期に書かれた短編集となって
おります。(だいぶ初期)とは、昭和36年から
41年。直木賞を受賞したのが昭和35年で「鬼平
犯科帳」の連載が始まったのが42年。

別の文庫のあとがきで見た記憶があるのですが、
この時期は、小説雑誌や文芸誌などでの発表は
けっこう多かったそうですが、身も蓋もない
言い方をすれば「あまりパッとしなかった」
そうで、じっさい読んでみて、面白いは面白い
のですが、なんといいますか(遊び)が少ない
といいますか。

「雲州英雄記」は、戦国時代の山陰地方、出雲
の国の尼子家という戦国大名の家臣、山中鹿之介
の話。

「猛婦」は、武田の家来、秋山兵蔵の妻、お津那
の話。

「勘兵衛奉公記」は、(わたり奉公人)渡辺勘兵衛
の話。

「霧の女」は、豊臣秀吉の家臣、福島正則に近づい
た謎の女性(小たま)の話。

「夫婦の城」は、関東管領、上杉憲政の家臣、
小幡信定と妻、正子の話。

「紅炎」は、毛利吉成と息子の勝永の親子と、
勝永の妻、喜佐の話。

表題作「黒幕」は、徳川家康に仕えた山口
新五郎の話。

「槍の大蔵」は、真田信幸に仕えた雨宮大蔵
の話。

「命の城」は、真田家と秀吉配下の忍びの者
の話。

「獅子の眠り」は、江戸の初期、信州松代の
真田家の弱体化を計画する老中、酒井忠清と、
隠居していた真田信之(信幸)の話。

「開化散髪どころ」は、幕末、薩摩の中村半
次郎と、幕臣、小野助三郎の話。

真田家に関する作品は、のちの「真田太平記」
につながりますし、最後の「開化散髪どころ」
は、「その男」という作品の原点になってい
ますね。

以前、テレビで見たか本で読んだか忘れました
が、ある作家が生前に池波さんに「自分は歴史
小説を書きたいけれど、自信がない」とかいう
相談をして、池波さんが「歴史に近づこうとす
るとダメだ。歴史をこっちに引き寄せないと」
と教えていただいた、というのがあって、この
短編集を読んで「ああ、なるほど」と思いまし
た。

そのフォロワーとして真っ先に浮かんだのは、
和田竜さんで、非常に上手く「歴史をこっち
に引き寄せてる」感じはしますね。


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