晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

新野剛志 『八月のマルクス』

2010-10-10 | 日本人作家 さ
この作品は第45回江戸川乱歩賞受賞作品で、いつも
書くことなのですが、乱歩賞といえば、プロ野球でいう
ところのドラフト1位的な存在、注目度で、デビュー作
だからって評論家や一般の読書家たちから容赦せずに
批評されます。

が、冷静になって考えてみると、デビュー作でこのクオリティ!
と唸ってしまうほど感心してしまうのです。

『八月のマルクス』は、推理小説にはめずらしい、というか、
はじめてお目にかかったのですが、「お笑い」がテーマ。
前に、プロレスがテーマの乱歩賞受賞作品というのを読んだ
ことがあり、とても興味深く、楽しんだのですが、「お笑い」
とミステリー、結べるの?と疑問に思うも、すぐに杞憂と
わかり、読み始めたらとまらなくなってしまいました。

下北沢でマンションの管理人をしている笠原は、かつては漫才
コンビでお茶の間の人気者でした。しかし、あるスキャンダルが
きっかけでテレビ界から去ってしまいます。

ある日突然、元相方の立川が笠原のもとを訪ねてきます。
ふたりが顔を合わせるのは5年ぶり。再会を喜んだか、立川は酔い
つぶれてしまい、笠原は家に連れていきます。
家でまた飲みなおした立川は、自分はガンでもう長くは生きられない
と告げます。
気がつくと眠ってしまっていた笠原、目をさますと立川は「すまない」
と一言、発するのです。

二日後、笠原のマンションに警察が。かつて、笠原を芸能界引退に
追い込んだスキャンダルを世に出した記者が一昨日、殺されたという
のです。
そんな因果関係から笠原のもとに一昨日のアリバイを訊きに来たので
す。その日は立川が訪ねてきて、しこたま飲んで酔いつぶれた日で、
アリバイはあると立川に聞けばわかると言うと、警察は、その立川と
連絡が取れなくなっているというのです。

何かがおかしいと笠原はいてもたってもいられず、かつての事務所の
社員を探しにテレビ局へ入ります。そしてそこで、立川から聞かされて
いた、立川の恋人だという同じ事務所の女性タレントと会うのです。

立川の行方はだれにもわからず、帰ろうとすると、何者かが尾行して
きます。その相手は、なんと、立川から自伝を書くことを依頼されて
いた女性のフリーライターだったのです。

立川はどこへ行ったのか、記者が殺されたのは立川の犯行なのか、
笠原は、仲の良かったテレビ制作会社の人間やさまざまな方面から
情報を聞き出し、どうやら立川は、外国でたまたま見たテレビ番組
に興味を持っていたことがわかるのですが・・・

笠原は、人気絶頂のある時、未成年の女性を部屋に連れ込んで暴行
したという記事がある雑誌に掲載されます。笠原には身におぼえの
ない出来事。その女性というのは、たしかに、しばらく笠原のマンション
前で待ち伏せをしていたことがあり、追い帰していただけだったの
ですが、彼女の証言で、笠原の住んでいた部屋の間取り、家具の配置
などが「正確すぎる」ほど正確に述べられていたのです。
世間はこの話題で大騒ぎとなり、事務所は沈黙をつらぬきます。
しかし、笠原の母が「責任を取ります」と遺書を残して自殺をして
しまうのです。
その後、これはどうやら狂言だという新しい証言も出て沈静化、しかし
笠原は芸能界を去っていったのです。

この過去のスキャンダルが、立川の失踪、記者の殺害と結びつくの
ですが、「おお、すごい」といった意外な展開となっていきます。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« パトリシア・コーンウェル ... | トップ | ウォルター・ワンゲリン 『... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日本人作家 さ」カテゴリの最新記事