晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

佐伯泰英 『吉原裏同心(十)沽券』

2017-12-27 | 日本人作家 さ
このシリーズの一作目を読んだのが、今年の五月。それから
半年ちょいで十作目で、このシリーズが全二十五巻でして、
まだ半分にすら至ってないのですが、まあそれなりのペース
で読んでおります。

さて、今作のテーマは「沽券」。現代ですと「プライド」の
ような意味で「沽券にかかわる」などといった使われ方をし
ていますが、もともとの意味は、土地や家屋、商売の権利と
いった書類、証文を「沽券状」といったそうです。

吉原が全焼し、再建まで仮宅営業を余儀なくされ、なんや
かやあって新年を迎えますが、吉原会所のボディーガード、
「裏同心」の神守幹次郎とその妻で遊女たちに書や俳句の
先生をやってる汀女があいさつに出向くと、新年早々よく
ないニュースが。

引手茶屋の相模屋が商売の権利書である(沽券状)を譲り
渡したというのです。通常吉原では、客は引手茶屋を通さ
ないと妓楼に上がれません(格安の場所は除く)。
今の仮宅営業ですと、この面倒なシステムは省かれて、直
で遊べるというので、妓楼は案外大儲けになりますが、引
手茶屋は商売になりません。しかも相模屋の主人は番頭や
奉公人たちに何の相談も報告もなく勝手に売ったというの
です。

それから数日後、今度は別の引手茶屋が売られます。会所
や幹次郎が調べますと、この件は(身なりのいい老人)が
関わっているようです。さらに、江戸にある小規模の貧乏
道場が次々に買収されています。

そして、品川沖で男女の水死体が発見されます。男のほう
は、行方をくらましてる相模屋の主人、周左衛門だったの
です・・・

(身なりのいい老人)は沽券状を買い集めて、何を目論ん
でいるというのか、そして貧乏道場の買収もこの件と同じ
やつらの仕業らしいのです。これもまた、田沼派の残党が
仕掛けてきているのか。

このシリーズに登場する(身代わりの佐吉)という、江戸
の表にも裏にも精通している男がいて、幹次郎も彼の情報
を頼りにしているのですが、佐吉に会える場所は馬喰町に
ある飲み屋。今作でも佐吉は幹次郎の(知恵袋)として活
躍してくれるのですが、この飲み屋の竹松という小僧が、
前に幹次郎の手伝いをしたことで、竹松を吉原に連れて行
く約束をしていて、今は仮宅だけど遊女に会わせてやると
いって幹次郎が連れてったのは大籬の三浦屋、薄墨の所。
それから竹松はずっとホケーっとしっぱなしで飲み屋の仕
事も手につかず、これには飲み屋の主も「吉原が初めての
竹松に会わせたのがよりによって薄墨花魁とは神守様も人
が悪い」とチクリ。


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