晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

首藤瓜於 『脳男』

2009-06-02 | 日本人作家 さ
江戸川乱歩賞受賞作品を全部読もうと思い、この作品を読んだ
わけですが、今までに読んだ他の受賞作品とはちょっと毛色が
違うというか、なんとなく全体的に曖昧な感じが漂い、そしてエン
ディングも完結ではありません。

もちろん、物語や展開はスリリングで飽きさせず、扱うテーマも
興味深いものなのですが、なにかこう、もう一歩のインパクトが
敢えてなのか足りず、しかしそれが登場人物の数奇な運命の
印象をより深く与えるという効果があったりするんですよね。

物語は、中部地方の愛宕市という架空の都市。そこで連続爆
弾事件が発生し、ついにその犯人のアジトと思われる倉庫に
潜入した警察は、犯人とおぼしき男を発見するも、仕掛けられ
ていた爆弾にやられそうになり、しかしそこにいた共犯と思われ
る男に間一髪助けられます。

共犯と思われる男は経歴は一切不明、取調べでは会話が成立
せず、精神鑑定を頼むことに。愛宕市内の病院に勤務するアメ
リカ帰りの精神科医の女性医師のもとに依頼が来ます。

鈴木一郎と名乗るこの男はいったい何者なのか。一連の犯行に
関係はあるのか無いのか。
まったく違う方向から、鈴木一郎の身元が判明し・・・

文中で鈴木一郎は「サヴァン症候群」ではないか、というのがあ
るのですが、サヴァン症候群とは、自閉症や知的障害のある人
の中で、ある特定の分野に限って高い能力を持つ人。
映画「レインマン」で、驚異的な記憶能力をもつ兄がそうです。
ここが難しいのですが、今のところ、この症例において、肉体的
に高い能力を持つという人は現れていないのですが、鈴木一郎
はとにかくスーパーマン的身体能力なのです。

小説なのでその辺りは別にいいのですが、物語の途中から終わ
りにかけて、このスーパーマン的活躍が光ります。
いや、スーパーマンというよりは、オズのブリキのきこりに近いの
でしょうか。

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